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「salesforce connections 2015」レポート1

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米・ニューヨークにて6月16日~18日の3日間(現地時間)にわたり、Salesforce.com主催のマーケティングイベント「salesforce connections 2015」が開催された。3日間の会期中には、世界から約1万5000名のマーケターらが参加。同社が提供するマーケティングプラットフォームである「Marketing Cloud」の最新情報、さらにユーザー企業のマーケターによるケース発表が行われた。

Salesforce Marketing Cloud CEOのスコット・マッコークル氏。

3日の会期中、世界から約1万5000名が参加をした。

オープニングキーノートには、Salesforce Marketing Cloud CEOのスコット・マッコークル氏が登壇。同氏は「マーケターが実現したいと考えているのはリアルとデジタルを横断し、多様化したカスタマーとの接点すべてを網羅したコミュニケーションを実現すること。加えてカスタマーのすべてのライフサイクルにおいて、適切なコミュニケーションを行い、カスタマーとつながり、エンゲージメントを深めていくことだ。セールスフォースの『Marketing Cloud』は、企業がカスタマーと“コネクト”する支援をし、それによってビジネスの成功につなげるソリューションである。ガートナー社の調査でも競合する他社を大幅にしのぐ成長を遂げているという結果がでている。お客さまのビジネスの成功に貢献し、事業を拡大できてきたことを誇りに思っている」と話した。

4つのテクノロジーシフト

なぜ、今カスタマーとつながることが重要視されるのか。その背景にあるのは顧客接点の多様化で、カスタマージャーニーが読み解きづらくなっていることがあげられる。しかしながら、ここ数年でカスタマーと企業との関係性を複雑化させたデジタル、テクノロジーは、またマーケターにとって新しい可能性を切り拓いている。

スコット・マッコークル氏は「テクノロジーが進化した今の時代だからこそ、購入前から購入後まで、あらゆるライフサイクルにおいて、カスタマーとつながり続けることも可能。デジタルマーケティングは夜明け前の状況。新しいカスタマーとの関係づくりが実現できる環境が整ってきた」と話した。

具体的には「クラウド」「ソーシャル」「モバイル」「データサイエンス」の4つのテクノロジーシフトがマーケティングを次世代型に進化させるカギを握っていると言い、これらをいかに統合した戦略を企画・実行できるかが大切だと説明した。

「クラウドにより、大量のデータにリアルタイムにアクセスすることが可能になった。ソーシャルの登場でカスタマーを知り、そしてカスタマーと接点を持てる新しい場所が登場し、モバイルはカスタマーと常につながり続けることを可能にしている。さらにデータサイエンスがカスタマーの体験価値を高めるパーソナライゼーションを実現してくれる。データサイエンスは、カスタマーとの新しい関係づくりにおいて大きな原動力となるものだ」(スコット・マッコークル氏)。

CRMデータと広告配信の連携

スコット・マッコークル氏からは「Marketing Cloud」の機能の強化についても発表された。機能が強化されたのは「Eメール」「ジャーニービルダー」「広告配信」の3点。Eメールは、よりマーケターにとっての使いやすさを強化し、パフォーマンスを向上させた。ジャーニービルダーではマーケティング、販売、サービス、コールセンターなどの直接接点と、これまで複数の部門に及んでいた、カスタマーとの接点を統合的に管理できるよう、バージョンアップが図られた。また広告配信ではCRMデータとも連携。より、広告の効果を高めるターゲティング、さらにターゲットに適したメッセージの配信が可能になったという。

「カスタマーにとってはマーケティング、サービス、セールスなど企業の部門の違いなど関係なく、一体化した体験を求めている。カスタマーとつながり続けるためには社内の部門、そしてデジタルとフィジカルな世界を一体化したジャーニーを実現することが必要。『Marketing Cloud』は、その実現を支援するソリューション」とスコット・マッコークル氏は話した。

データ、テクノロジーを活用し、カスタマー一人ひとりを理解し、そのライフサイクルのステージに応じて、あらゆる接点を通じ、適切なメッセージを配信し、関係を深めていく……。キーノートの後半では、次世代型のマーケティング実現に際し、カスタマーの5つのライフサイクルのステージにスポットを当て、各ステージ別のセールスフォースのユーザー企業のケースが紹介された。

ライフサイクルのステージとは「Acquisition(アクイジジョン)」(新規顧客の獲得)、「Selling(セリング)」、「Onboarding(オンボーディング)」(新規客を購入した商品・サービスに適応させる)、「Engagement(エンゲージメント)」、「Advocacy(アドボカシー)」の5つ。

事例は「アクイジジョン」ではカスタマー別にパーソナライズドした広告を配信している、マクドナルドのケース。「セリング」ではマーケティングとセールス部門をつないで売上拡大を実現した、フィットネス機器のPRECOR社のB2Bマーケティングのケース。「オンボーディング」では、商品の購入後もモバイルを介してカスタマーとつながる接点を構築し、リアルとデジタルを組み合わせた新たなジャーニー構築を実現した玩具メーカーのMATTEL社のケース。「エンゲージメント」では、「Marketing Cloud」のPredictive Intelligence(カスタマーのプロファイル情報にアルゴリズムを結び付け、どのコンテンツがそれぞれの顧客にとって最も魅力的であるのかを予測する技術)を活用。パーソナライズドしたリコメンドを実現する、家具販売のRoom&Board社のケース。「アドボカシー」では「Marketing Cloud」の「Social Studio」を使って、カスタマーの投稿をCRMデータやカスタマーサポートとも連携させたジュエリー販売のALEX AND ANIのケースの5つが紹介された。

マクドナルドが取り組むパーソナライゼーション

「アクイジジョン」のケースで紹介されたマクドナルドは世界で日々8600万人以上に利用されているグローバルブランドだ。このブランドが売り上げを拡大するためには、認知獲得を重視した従来型のマス広告ではなく、すでに手元にあるカスタマーのデータを活用し、パーソナライズドした広告の配信が必要とされていた。

特にオンラインで注文できるデリバリーのサービスを開始し、利用可能性の高い見込み客を発見し、そのターゲットに個別最適化した広告配信をしたいというニーズがあり、CRMデータと紐づけたパーソナライズドした広告をツイッターやフェイスブック、リンクトインなどに配信している。

見込み顧客の情報をトラッキングし、リアルタイムに営業に生かす

「セリング」のケースではマーケティングと営業部門を連携させた、フィットネス機器メーカーPRECOR社のB2Bマーケティングの取り組みが紹介された。B2B企業では営業部門が独自にコンテンツやキャンペーンを企画してしまうという課題があるが、この課題をマーケティング部門のコンテンツやデータに営業がアクセスしやすい社内環境をつくることで解決。さらにマーケティング部門が見込み顧客の行動を常にトラッキングし、さらにサイトにアクセスしてくるなど、営業につながる行動が起きた際には、アラートが鳴り、即座に営業部門が電話をかけるなどのアクションを起こせる仕組みを構築している。

老舗玩具メーカーが挑戦するデジタルでの新しい商品体験

MATTEL社では、玩具ブランドごとにゲームアプリを提供している。
http://www.mattel.com/mobile-apps

「オンボーディング」のケースとして紹介された玩具メーカーのMATTEL社は、玩具にデジタルの体験を組み合わせ、商品を購入した後もカスタマーとつながり続け、そのジャーニーをマネジメントする取り組みを行っている。

同社では購入した玩具をより楽しむことができる、モバイルアプリを提供。プレゼンテーションでは、ミニカーのケースが紹介されたが、商品パッケージにあるQRコードを読み取ると、購入したミニカーと同じ車種が登場するカーレースのモバイルアプリのゲームをダウンロードすることができるというもの。

最近の子供たちが玩具ではなく、モバイルゲームなどで遊ぶ時間が増えていることに危機感を抱いた同社では、現代の子供たちに合った新しい商品の楽しみ方を提供。かつ、デジタル空間での体験提供を通じ、低価格帯の商品のメーカーでありながら、購入後までつながり続ける関係を構築し、次なる商品購入のプロモーションにも活用している。

リアル店舗の接客をデジタルでも実現した家具会社

Room&Board社のプレゼンテーションでは、登壇者2名が同時に自分のモバイルから同社のサイトにアクセスした際の結果が紹介された。それぞれのカスタマーに合わせて、サイトに異なるお勧め商品が表示されていることが分かる。

「エンゲージメント」のケースでは、家具を販売するRoom&Board社のケースが紹介された。同社では「Marketing Cloud」のPredictive Intelligenceを利用して、これまでリアルの店舗にてフェイストゥフェイスで実施されてきたような、カスタマー別の適切なリコメンデーションをオンラインでも実現。ソリューションの導入以後、売上29%アップという大きな成果を収めている。

さらにリアル、デジタル双方から得られるデータを統合管理し、カスタマーがどこから接触しても、常に最新のプロファイル情報に基づくサービスを提供できる体制を構築している。すべては企業都合ではなく、「カスタマー・セントリック」の発想に基づく施策だという。

ソーシャル上での行動とCRMを連携

「アドボカシー」のケースでは、ジュエリーを販売するALEX AND ANIの取り組みが紹介された。同社は以前からソーシャルメディアを積極的に活用し、ソーシャルリスニングの結果を商品開発に生かすなどの取り組みをしていたが、ソーシャルメディアの種類も増え、その統合的な管理の必要に迫られていた。

そこで「Marketing Cloud」の「Social Studio」を使い、サイロ化しつつあったソーシャル上での活動を統合化。加えて、たとえば製品の不良などの投稿を発見した際には、カスタマーサービスに接続し、そのアカウントの顧客情報を分析。さらに、ジャーニービルダーに接続し、その顧客に対するEメール配信などのキャンペーン発動を止められる仕組みをつくっている。

商品に対する不満を抱いている時に、万一キャンペーンメールが届いてしまえば、信頼を大きく損ないかねない。同社の扱うジュエリーのような商材は、そのファンが積極的にソーシャルで発信をし、その発信が新しい顧客開拓にもつながるケースが多く、これまでもカスタマーの声を重視してきた。ソーシャルとCRMを連携させることで、さらにカスタマーからの信頼を高め、ブランドを支援してくれる存在へと育成することにつなげている。

オープニングキーノート終了後、スコット・マッコークル氏は、プレス向けにQ&Aセッションを行った。記者たちからは「誰が次世代型のデジタルマーケティングの推進役になるのか」「部門間の壁はいかにして、取り払われるべきか」といった質問があがった。

それに対して同氏は「カスタマーはリアルとデジタルの体験を区別していない。あらゆる商品・サービスにとって、今やデジタルでの体験価値の向上が重要になっている。その実現には社内のあらゆる部門が壁を取り払い、連携することが必要だが、これまでもその重要性が理解されながら、なかなか実現されてこなかったのは、それだけ困難を伴うからだ。壁を打ち壊すには、まずはトップダウンで強力に推進していくこと。加えて、その取り組みを確実に進め、顧客中心のジャーニーを構築し、企業とのエンゲージメントを深める牽引役となるデジタルマーケターの役割が大きい。デジタル上での魅力的な体験がどんなものであるかは、デジタルマーケターしか理解できていないからだ。

デジタルマーケターにとって、いま大きなチャンスが目の前にある。このチャンスを生かし、顧客中心のジャーニーを実現し、次世代マーケティングを実現できれば、ビジネスを大きく飛躍させることができる」と話した。

会期中にはマーケターだけでなく米国デューク大学バスケットボールチーム・ヘッドコーチのマイク・シャシェフスキー氏(写真左)やファッションデザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグ氏(写真右)など、多様なゲストスピーカーが登壇した。

出典:http://www.advertimes.com/20150622/article195247/

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