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【2026年最新】建設業の人手不足を経営改善で解決する5つの方法|採用・育成・DXの具体策

目次

はじめに――数字が示す「人手不足」の深刻度

建設業の人手不足は、もはや「業界の慢性的な課題」という言い方では済まないレベルに達しています。

総務省「労働力調査」によれば、建設業の就業者数は1997年のピーク時に685万人だったものが、2025年時点で約480万人にまで減少しています。約30年で200万人以上が建設業を離れた計算です。

さらに深刻なのは年齢構成です。建設業就業者のうち55歳以上が約36%を占める一方、29歳以下はわずか約12%。今後10年で約110万人のベテランが定年を迎える見通しであり、若手の流入が現在のペースのままでは、2035年には建設業の就業者数が約390万人にまで落ち込むと推計されています。

一方、建設投資額は2025年度の見通しで約73兆円と、堅調に推移しています。仕事はあるのに人が足りない――この需給のミスマッチこそ、建設業の経営者が直面する最大の経営課題です。

本記事では、人手不足の原因を構造的に分析した上で、経営改善の視点から取り組める5つの具体的な解決策を提示します。単なる「採用テクニック」ではなく、経営の仕組みそのものを変えることで、持続的に人材を確保・定着させる方法を解説します。


第1章 建設業の人手不足――3つの構造的原因

「人手不足」と一口に言っても、その原因は複合的です。対策を打つためには、まず原因を正確に理解する必要があります。

原因1:「3K」イメージと処遇の問題

建設業には「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージが根強く残っています。これは実態に基づいている部分もあれば、過去のイメージが固定化している部分もあります。

処遇面のデータ

指標 建設業 全産業平均
年間実労働時間 約1,978時間 約1,633時間 +345時間(約21%多い)
年間出勤日数 約244日 約217日 +27日(約12%多い)
週休2日取得率 約35% 約65% -30ポイント
年収(技能者平均) 約430万円 約460万円 -30万円

労働時間が長く、休みが少なく、それでいて年収は全産業平均を下回る。この処遇格差が、若年層の建設業離れの最大の要因です。

原因2:高齢化と技能伝承の断絶

建設業の就業者の年齢構成をグラフにすると、50代後半〜60代にピークがあり、20代〜30代前半が極端に少ない「逆ピラミッド型」になります。

この年齢構成が問題なのは、単純に人数が減るだけでなく、ベテランが持つ技能や暗黙知が次世代に伝わらないまま失われるリスクがあることです。

建設業の多くの作業は、マニュアル化が難しい「経験知」に依存しています。コンクリートの打設タイミング、配筋の微妙な調整、地盤の状態の見極め――こうした「体で覚える」技能は、師弟関係の中で長い時間をかけて伝えられてきました。

しかし、若手の入職者が減り、ベテランとの接点が限られる現状では、この伝承の仕組み自体が機能しなくなりつつあります。

原因3:業界構造の問題

建設業特有の重層下請構造も、人手不足を深刻化させる一因です。

下請になるほど利益率が低くなり、処遇改善の原資が確保しにくくなります。結果として、「賃金を上げられない → 人が集まらない → さらに一人当たりの負担が増える → 離職が進む」という負のスパイラルに陥りやすい構造があります。

また、元請・下請間の指揮命令系統の複雑さが、労務管理の高度化を阻んでいる面もあります。


第2章 経営改善の視点から取り組む5つの解決策

人手不足の解決は、「良い人を探す」だけでは限界があります。経営の仕組みそのものを変えることで、「少ない人数でも回る経営体制」「人が集まり、定着する会社」の両方を実現する必要があります。

解決策1:採用力の強化――「選ばれる会社」になる

待遇改善なくして採用改善なし

採用の前提として、まず処遇を見直す必要があります。具体的には:

給与水準の引き上げ

  • 地域の同業他社と比較して、最低でも10%以上高い水準を設定する
  • 資格手当、現場手当の拡充
  • 賞与の支給基準を明確にし、業績連動型にする

休日数の増加

  • 4週8休(週休2日)の完全実施を目標とする
  • 国土交通省の「建設業の働き方改革加速化プログラム」でも、週休2日工事の推進が明確に掲げられている
  • 実際に4週8休を実現した企業では、採用応募数が1.5〜2倍に増加したケースがある

福利厚生の充実

  • 社宅・住宅手当の整備
  • 資格取得支援制度(受験費用全額負担+合格報奨金)
  • 退職金制度の明確化

採用チャネルの多様化

ハローワークと求人誌だけに頼る採用は、もはや機能しません。

採用チャネル 特徴 コスト感
Indeed・求人ボックス 検索流入が多く、幅広い層にリーチ 月1〜10万円
自社採用サイト 企業文化・現場の雰囲気を伝えやすい 制作費30〜100万円
SNS(Instagram・TikTok) 若年層への訴求力が高い。現場の日常を発信 運用コスト(人件費)
建設業専門転職サイト 業界経験者にピンポイントでリーチ 成功報酬型30〜80万円
高校・専門学校との連携 新卒採用の安定化。インターンシップ受入れ 低コスト(労力は必要)
リファラル採用 社員紹介。入社後の定着率が高い 紹介報奨金10〜30万円

特に効果が高いのは、自社採用サイトとSNSの組み合わせです。現場の「リアルな日常」を動画で発信し、自社サイトで詳細な情報を伝える。この導線を設計するだけで、応募者の質と量が大きく改善するケースが増えています。

採用ブランディングの構築

「この会社で働きたい」と思ってもらうための情報発信が不可欠です。

  • 社員インタビュー動画の制作・公開
  • 現場のビフォーアフター写真の定期発信
  • 資格取得者の紹介と祝福(社内SNSやブログ)
  • 「入社1年目の1日」を紹介するコンテンツ

関連記事: 採用も含めた経営改善の全体像については、建設業の経営革新ガイドで詳しく解説しています。

解決策2:人材育成の仕組み化――「育てて定着させる」

早期戦力化プログラムの構築

従来の「背中を見て覚えろ」式の育成では、若手の離職を防げません。体系的な育成プログラムが必要です。

入社〜6ヶ月のカリキュラム例

期間 内容 担当
1ヶ月目 安全教育、会社の理念・制度理解、基本工具の扱い 教育担当者
2〜3ヶ月目 先輩社員との同行作業、基本作業の実習 OJT指導員
4〜5ヶ月目 担当作業の範囲を拡大、日報の単独作成 OJT指導員
6ヶ月目 振り返り面談、次期目標設定 直属上長+教育担当

メンター制度の導入

新入社員1人に対して、年齢の近い先輩社員1人を「メンター」として配置します。仕事の悩みだけでなく、生活面の相談にも乗れる関係性を構築することで、早期離職のリスクを大幅に低減できます。

メンター制度を導入した建設会社では、入社3年以内の離職率が45%から20%に低下した事例があります。

資格取得支援の充実

建設業では資格が処遇に直結します。計画的な資格取得を支援することで、社員のモチベーション向上と会社の技術力向上を同時に実現できます。

  • 受験費用の全額会社負担
  • 合格時の報奨金(5〜30万円)
  • 資格手当の月額支給(3,000〜30,000円/月)
  • 勉強時間の確保(業務時間内での学習許可)

キャリアパスの明示

「この会社で何年頑張れば、どのポジション・年収になれるか」を明示することは、人材定着において極めて重要です。

年次 役割 年収目安 取得推奨資格
1〜3年目 技能者(見習い) 350〜400万円 2級施工管理技士
4〜7年目 職長・班長 450〜550万円 1級施工管理技士
8〜12年目 現場代理人・主任技術者 550〜700万円 監理技術者資格
13年目〜 工事部長・役員 700万円〜 経営事項審査の加点資格

解決策3:多能工化――「一人二役以上」をつくる

多能工化のメリット

多能工(マルチスキル人材)とは、複数の工種や作業を担当できる人材のことです。多能工化を進めることで:

  • 人員の柔軟な配置が可能になる: 工種ごとの人員過不足を社内で調整できる
  • 手待ち時間が削減できる: 自工程の作業がない時間に他工程を支援できる
  • 一人当たりの稼働率が上がる: 結果として、少ない人数で同じ工事量をこなせる

多能工化の進め方

  1. スキルマップの作成: 全社員の保有スキルを一覧化し、不足している組み合わせを特定する
  2. クロストレーニング計画: 計画的に異なる工種のOJTを実施する(四半期ごとに1つの新スキル習得を目標)
  3. 評価制度への反映: 多能工としてのスキル数を評価・処遇に反映させる
  4. デジタルでの技能記録: 建設キャリアアップシステム(CCUS)と連動させ、技能の見える化を図る

ある中堅建設会社では、多能工化の推進により、必要人員を約15%削減しながら、工期を維持することに成功しています。

解決策4:外国人材の戦略的活用

在留資格の整理

建設業で外国人材を受け入れる主な在留資格は以下の通りです。

在留資格 特徴 在留期間 技能水準
技能実習 技能移転が目的。単純労働中心 最長5年 初級〜中級
特定技能1号 人手不足対応。即戦力を想定 最長5年 中級
特定技能2号 熟練した技能。家族帯同可 更新制(上限なし) 上級
技術・人文知識・国際業務 施工管理等の技術職 更新制 高度

2023年の制度改正により、特定技能2号の対象分野が建設業にも拡大され、長期的なキャリア形成が可能になりました。これにより、「5年で帰国する一時的な戦力」ではなく、「長く会社の中核を担う人材」として外国人を育成する選択肢が現実的になっています。

受入れ成功のポイント

  1. 日本語教育の充実: 業務上必要な日本語(安全用語、工事用語)に特化した教育を行う
  2. 生活支援: 住居の確保、行政手続きのサポート、地域コミュニティへの橋渡し
  3. キャリアパスの提示: 特定技能2号への移行を含めた長期的なキャリアプランを共有する
  4. 日本人社員との融和: 文化の違いを理解するための研修を日本人社員にも実施する
  5. 監理団体・登録支援機関の選定: 実績と信頼性を重視して選定する

コスト試算

外国人材(特定技能1号)の受入れにかかる年間コスト概算:

項目 年間コスト目安
給与(日本人と同等以上) 350〜420万円
住居費補助 36〜60万円
監理費用・支援費用 24〜48万円
渡航費等の初期費用(初年度のみ) 30〜50万円
合計(初年度) 440〜578万円
合計(2年目以降) 410〜528万円

日本人の新規採用コスト(採用広告費、教育費等を含む)と比較した上で、中長期的な視点で判断することが重要です。

解決策5:DXによる省人化――「人に頼らない仕組み」をつくる

人手不足を「人を増やす」ことだけで解決しようとするのは限界があります。DXによって「そもそも人手がかからない仕組み」をつくることが、根本的な解決策です。

省人化に直結するDX施策

施工管理のデジタル化

事務作業の自動化

  • AI-OCRによる手書き伝票の自動読取り
  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による定型帳票の自動作成
  • クラウド会計・原価管理による経理業務の効率化

施工の自動化・省力化

  • ICT建機による自動施工(オペレーター1人で従来3人分の作業量)
  • ドローンによる測量・点検の自動化
  • プレキャスト工法の拡大(現場作業量の削減)

省人化の効果試算

年間売上5億円、社員30人の建設会社が省人化DXに取り組んだ場合の試算:

施策 投資額 年間削減効果 削減人数換算
施工管理アプリ 60万円/年 225万円/年 0.5人分
クラウド原価管理 36万円/年 180万円/年 0.4人分
AI-OCR+RPA 120万円/年 300万円/年 0.7人分
ICT建機(リース) 240万円/年 600万円/年 1.2人分
合計 456万円/年 1,305万円/年 2.8人分

約456万円の投資で、約2.8人分の労働力に相当する効果が得られる計算です。ROIは約186%であり、1年以内の投資回収が見込めます。

関連記事: DXの具体的な導入方法については建設業DX完全ガイドで詳しく解説しています。また、コスト面での効果については建設業のコスト削減完全ガイドもご参照ください。


第3章 成功事例に学ぶ

事例1:東北の土木会社(従業員25人)――採用力強化で応募数3倍

課題: ハローワーク中心の採用で、年間の応募者がわずか3人。充足率50%以下。

取り組み:

  • Instagramアカウントを開設し、現場の日常を週3回投稿
  • 自社採用サイトを制作し、社員インタビュー動画を5本掲載
  • 給与水準を地域平均比+12%に引き上げ
  • 完全週休2日制を段階的に導入(年間休日110日→125日)

成果:

  • 年間応募者数:3人 → 10人に増加
  • 採用充足率:50% → 100%(必要人員の確保に成功)
  • 投資額:採用サイト制作80万円+SNS運用コスト月2万円
  • 人件費増:年間約350万円(給与アップ+休日増による原価増)
  • 採用広告費削減:年間60万円(ハローワーク以外の有料媒体を縮小)

事例2:関東の設備工事会社(従業員40人)――多能工化で15%省人化

課題: 工種ごとの人員配置に偏りがあり、手待ち時間が多発。慢性的な人手不足感。

取り組み:

  • 全社員のスキルマップを作成し、弱い領域を特定
  • 四半期ごとに「クロストレーニング月間」を設定(月4日間、別工種のOJT実施)
  • 多能工手当を新設(2工種以上:月5,000円、3工種以上:月15,000円)

成果:

  • 2工種以上対応可能な社員の比率:30% → 75%に増加
  • 手待ち時間:月平均20時間/人 → 8時間/人に削減
  • 必要人員:同規模の工事で38人 → 32人(約16%削減)
  • 社員の年収:多能工手当により平均+12万円/年

事例3:九州の総合建設会社(従業員80人)――外国人材を20人活用

課題: 地方都市で日本人の採用が年々困難に。特に20代の応募がほぼゼロ。

取り組み:

  • ベトナムからの特定技能人材を段階的に受入れ(年5人ペース)
  • 社内に日本語教室を開設(週2回、業務時間内に実施)
  • ベトナム人リーダーを2名育成し、母国語での指導体制を構築
  • 社宅を4棟整備(1DKアパート)

成果:

  • 4年間で20人の外国人材を受入れ、うち18人が在籍継続(定着率90%)
  • 特定技能2号への移行者:3人(将来の中核人材候補)
  • 人手不足による受注辞退:年5件 → 0件に
  • 施工能力(年間完工高):6億円 → 8.5億円に拡大(+42%)

第4章 人手不足対策の優先順位の決め方

5つの解決策を全て同時に進めることは現実的ではありません。自社の状況に応じて優先順位を決める必要があります。

判断基準のフレームワーク

自社の状況 最優先すべき施策 次に取り組むべき施策
応募がゼロ、採用できない 採用力の強化(待遇改善+採用チャネル拡大) DXによる省人化
採用はできるが3年以内に辞める 人材育成の仕組み化(メンター制度+キャリアパス) 多能工化
人数はいるが特定工種が足りない 多能工化 外国人材の活用
地方で日本人採用が極めて困難 外国人材の戦略的活用 DXによる省人化
人件費の高騰で利益率が悪化 DXによる省人化 多能工化

投資対効果による比較

施策 初期投資 効果発現までの期間 ROI(1年)
採用力の強化 100〜300万円 3〜6ヶ月 50〜150%
人材育成の仕組み化 50〜100万円 6〜12ヶ月 100〜200%
多能工化 20〜50万円 3〜6ヶ月 200〜400%
外国人材の活用 100〜200万円 3〜6ヶ月 100〜200%
DXによる省人化 100〜500万円 6〜12ヶ月 150〜300%

最もROIが高いのは「多能工化」です。初期投資が少なく、効果発現も早い。まだ取り組んでいない企業は、ここから始めることをお勧めします。


まとめ――人手不足は「経営の仕組み」で解決する

建設業の人手不足は、単に「人が採れない」という問題ではありません。採用力・育成力・組織の生産性を総合的に高める「経営の仕組みの変革」が求められています。

本記事で紹介した5つの解決策を改めて整理します。

  1. 採用力の強化: 待遇改善+採用チャネルの多様化+ブランディング
  2. 人材育成の仕組み化: 体系的な教育プログラム+メンター制度+キャリアパスの明示
  3. 多能工化: スキルマップ+クロストレーニング+評価制度への反映
  4. 外国人材の戦略的活用: 適切な在留資格の選択+生活支援+長期キャリアプランの提示
  5. DXによる省人化: 施工管理のデジタル化+事務作業の自動化+施工の省力化

これらの施策は、個別に取り組んでも一定の効果がありますが、組み合わせることで相乗効果が生まれます。例えば、DXによる省人化と多能工化を同時に進めれば、少ない人数でより多くの工事をこなせるようになります。

関連記事: 具体的な事例をさらに知りたい方は、導入事例一覧もぜひご覧ください。


統合最適化メソッドで人手不足を根本解決する

株式会社アプリバンクでは、建設業専門の経営コンサルティングとして、「統合最適化メソッド」(人材育成 × DX推進 × 収益改善の三位一体)を提供しています。

人手不足の解決には、この3つの要素が不可分です。

  • 人材育成: 採用した人材を早期に戦力化し、長く定着させる仕組みをつくる
  • DX推進: デジタル技術で省人化を実現し、「人に頼りすぎない経営体制」を構築する
  • 収益改善: 生産性向上によって利益を確保し、その利益を処遇改善に再投資する

この3つの好循環を回すことで、人手不足の根本的な解決が可能になります。

「人が辞めていく原因がわからない」「採用に費用をかけても応募がない」「少ない人数で利益を出す方法を知りたい」――そんなお悩みをお持ちの建設業経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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# 記事3:建設業

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