「売上は伸びているのに、手元にお金が残らない」――建設業の経営者から、よくいただく相談です。原因の多くは、売上ではなく利益を生む仕組み(戦略)が設計されていないことにあります。当社は建設業界30年・海外5カ国の施工経験を持つ代表が、現場と財務の両面から建設業経営を見てきました。本記事では、建設業の経営改善戦略を「利益を生む5つの打ち手」に整理します。受注の選別から原価管理、外注最適化、多角化、DXまで、それぞれの詳しい実践記事への入口(ハブ)として、全体像をつかめる形でお届けします。経済産業省「DX認定事業者」(2026年6月認定)の知見に基づきます。

なぜ「売上を追う」だけでは利益が残らないのか
結論から言えば、建設業は受注産業であり、案件ごとの採算管理がそのまま利益に直結するからです。売上規模を追っても、採算の悪い案件を増やせば、忙しいのに儲からない状態に陥ります。
とくに近年は、利益を圧迫する外部要因が重なっています。資材高騰に加え、公共工事設計労務単価は2026年3月適用分で14年連続の上昇(全国全職種単純平均で前年度比+4.5%)となり、人件費は構造的に上がり続けています。この環境では、「売上を伸ばす」よりも「利益を残す戦略」を持つ会社が生き残ります。
経営改善戦略とは、売上の最大化ではなく、利益の最大化を設計することです。当社は人材育成 × DX推進 × 収益改善を一体で考える「統合最適化」の視点で、5つの打ち手を束ねます。

打ち手1:利益の出る案件を選ぶ(受注の選別)
狙い:忙しさではなく、採算で受注を決める。
すべての案件を取りにいくのは、戦略ではありません。自社の強み・得意工種・適正な利益が確保できる案件に絞ることが、利益を残す第一歩です。見積段階で「この案件はいくら残るのか」を判断できる仕組みをつくります。受注量を追って手元資金が細る「黒字倒産」リスクを避けるためにも、量より質の受注が要になります。
- 過去案件の実績原価をデータ化し、利益の出る案件・出ない案件のパターンを把握する。
- 「断る勇気」を持つための判断基準(最低粗利率・支払条件)を、経営者が明文化する。
- 適正な利益を確保するための価格交渉は、価格転嫁の5ステップで詳しく解説しています。
打ち手2:工事別の原価管理で利益を可視化する
狙い:「どんぶり勘定」から「工事別の損益」へ。
利益を残す会社は、工事ごとの原価をリアルタイムで把握しています。完成工事原価(材料費+労務費+外注費+経費)を案件単位で見える化し、着工後も粗利率を追うことで、赤字案件を未然に防げます。
- 実行予算の労務単価を毎期見直し、上昇する人件費を見積に織り込む。
- SaaS型の原価管理ツールで、紙・Excelから段階的に移行する。
- 人手不足が原価に与える影響と対策は、人手不足を経営改善で解く5施策で整理しています。
打ち手3:外注・協力会社マネジメントの最適化
狙い:調達の選択肢と交渉力を取り戻し、付加価値の流出を防ぐ。
自社で人を抱えきれない分、外注比率は上がります。ここを戦略的に管理しないと、付加価値が社外へ流出し、品質コントロールも難しくなります。協力会社を「付き合い」ではなく「実績」で評価し、複数の選択肢を持つことが利益を守ります。
- 協力会社を工種・地域別にポートフォリオ化し、1社依存をやめる。
- 工期遵守率・書類正確度などの基準で、協力会社を見える化して評価する。
- 外注を含めた事業構造の見直しは、収益の柱を増やす次の打ち手とも連動します。
打ち手4:多角化・新規事業で収益の柱を増やす
狙い:本業の波に左右されない、第二・第三の収益源をつくる。
建設業は受注産業ゆえ、景気や季節で売上が変動します。本業で培った技術・人脈・設備を活かして隣接領域へ広げることで、収益を安定させられます。たとえば新築中心の会社が、安定需要のあるリフォーム・修繕・定期点検・維持管理へ広げると、フロー型の受注にストック型の収益が加わります。やみくもな多角化ではなく、本業と相乗効果のある領域を選ぶことが鍵です。
- 本業の強みを棚卸しし、活かせる隣接市場(リフォーム・メンテナンス・点検など)を見極める。
- 小さく始めて検証し、勝ち筋が見えてから投資を広げる。
- 進め方の詳細は建設業の多角化戦略で解説しています。
打ち手5:DXで生産性を上げ、コストを下げる
狙い:同じ人数で、より多くの利益を生み出す。
人を増やせない時代に利益を伸ばすには、一人当たりの生産性を上げるしかありません。DXは、現場と事務の無駄を削り、コストを下げる最も再現性の高い打ち手です。
- 業務効率化で間接コストを削減する。具体策は建設業の業務効率化ガイドを参照。
- 働き方改革とDXを連動させ、工期短縮と残業削減を両立する(働き方改革×DXの記事)。
- 安全管理のDX化で労災による損失を防ぐ(安全管理×IoTの記事)。
なお、買いたたきを禁じる建設業法第19条の3や2025年12月施行の改正建設業法(標準労務費)など、制度も「適正な利益」を後押しする方向に動いています。制度を味方につけることも、経営改善戦略の一部です。
5つの打ち手の早見表

| 打ち手 | 主な狙い | 3軸(人材/DX/収益) |
|---|---|---|
| 1 受注の選別 | 採算で受注を決める | ○ / ○ / ◎ |
| 2 工事別の原価管理 | 赤字案件を防ぐ | ○ / ◎ / ◎ |
| 3 外注・協力会社最適化 | 調達力と交渉力の回復 | ○ / ○ / ◎ |
| 4 多角化・新規事業 | 収益の柱を増やす | ○ / ○ / ◎ |
| 5 DXで生産性向上 | 少人数で利益を生む | ◎ / ◎ / ◎ |
◎=強く寄与/○=寄与。統合最適化メソッド(人材育成 × DX推進 × 収益改善)の3軸で評価。
まとめ|経営改善戦略は「利益の設計図」
建設業の経営改善戦略とは、売上を追うことではなく、利益を残す仕組みを設計することです。(1)利益の出る案件を選び、(2)工事別の原価で利益を可視化し、(3)外注・協力会社を最適化し、(4)多角化で収益の柱を増やし、(5)DXで生産性を上げる――この5つの打ち手を、経営者の意思決定として束ねることが要点です。一度にすべてを始める必要はありません。自社の弱い部分から、優先順位をつけて着手することが、利益への近道です。
何から始めるべきか迷う場合は、論点の整理から始めましょう。進め方は初回相談の進め方をご覧ください。
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※ 無料相談は建設業の企業様に限らせていただきます。
【執筆・監修】株式会社アプリバンク 代表取締役 佐藤 望
建設業専門の経営コンサルタント/建設業界30年(現場〜本社財務、海外5カ国の施工経験)。独自メソッド「統合最適化(人材育成 × DX推進 × 収益改善)」で、建設業の経営改善を一気通貫で支援。経済産業省「DX認定事業者」(2026年6月認定)。
お問い合わせ・無料相談:株式会社アプリバンク 公式サイト / 最終更新: 2026年6月28日
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本記事は法令・制度の一般的な内容をお伝えするものです。法令の適用についての個別の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。
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