協力会社の情報を、どこで持っていますか。
たいていの会社で、答えは「あちこち」です。名刺の束、経理がもっている支払先の一覧、現場ごとの安全書類、そして担当者の頭のなか。おなじ会社の情報が3か所にあって、どれも少しずつ古い。こうなると、いちばん先に困るのは期限です。
この記事では、協力会社の台帳に何をもたせるかを、項目のレベルで書きます。ねらいは1つ。期限を切らさないことです。
なお、その項目をCRMという道具にどう載せるかはZoho CRM 建設業|工事・協力会社・原価をどう載せるかに書きました。この記事は、その手前にある「台帳そのものの作り方と、期限の見張り方」です。
台帳がないと、いちばん先に「期限切れ」で止まる
先に、何が起きるかを書きます。
現場が動きだす直前になって、協力会社の建設業許可が切れていたとわかる。あるいは、労災の保険の期間が終わっていた。書類が受けつけられず、その日は入場できません。工程は1日ずれて、元請への報告もいります。
原因は、たいてい怠けたからではありません。期限をどこで持つかが、決まっていないだけです。
- 許可の写しは、安全書類のフォルダのなかにある
- 保険証券の写しは、経理がもっている
- 更新したかどうかは、担当者がおぼえている
この3つがばらばらにある会社は、期限が切れたことに、切れたあとで気づきます。
期限を見張るには、まず1か所にまとめるところからです。それが台帳です。

施工体制台帳とは、別のものです
まず、混ざりやすいところを整理します。
施工体制台帳は、法律で作ることが決まっている書類です。元請が、ある金額をこえる工事で作ります。工事ごとに作るもので、その工事が終われば役目を終えます。くわしくは施工体制台帳|作成義務の金額基準5,000万円と実務に書きました。
この記事でいう協力会社台帳は、社内でつかう管理の台帳です。工事ごとではなく、会社ごとにもちます。義務ではありません。ただ、これがないと施工体制台帳のほうも、毎回ゼロから集めることになります。

先に作るべきなのは、社内の台帳のほうです。
台帳にもたせる項目は、4つのかたまりで考える
項目をならべる前に、かたまりで整理します。基本のこと、許可、保険、そして工事の実績。この4つです。

① 基本のこと
| 項目 | 中身 | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| 会社名 | 正式なほう | 現場でのよび名は、べつの欄にもつ |
| 法人番号 | 13桁 | 表記のゆれをふせぐ鍵になる |
| 代表者名 | 契約書につかう | 変わったら、前のものも残す |
| 所在地 | 本社と、実際に来る営業所 | 両方がちがうことが、よくある |
| 連絡先 | 会社の代表と、現場担当者の携帯 | 担当者は変わる。会社側の窓口ももつ |
| 取引の区分 | 協力会社/材料の仕入/リースなど | 発注者とおなじ台帳に混ぜない |
| 一人親方かどうか | 該当・非該当 | 分けかたは一人親方とフリーランス新法に整理しています |
② 許可と ③ 保険
ここは、あとで見張ることになる欄です。もつべき項目は下の図にまとめました。

大事なのは中身より、もちかたです。許可の期限も、保険の期間も、かならず日付の欄でもってください。文章のなかに書いてしまうと、機械が見張れません。「令和◯年まで」と書いた瞬間に、その欄は人が読むしかなくなります。
もう1つ、許可の業種だけは、はじめに突きあわせてください。お願いする工事と、もっている許可の業種がずれていることが、実際にあります。
④ 実績と、記録
| 項目 | 中身 | つかいどころ |
|---|---|---|
| 取引をはじめた日 | いちばん最初の工事 | つきあいの長さがわかる |
| 直近の工事 | 工事名と時期 | 「近ごろ使っていない会社」が見える |
| 得意な工種・地域 | 自由に書かせず、選ぶ形にする | 急に人がいるときに探せる |
| 単価のめやす | 直近の実績 | 見積が妥当かどうかを判断できる |
| 安全の記録 | 是正があったかどうか | 元請への説明につかう |
評価の欄をつけるかどうかは、社内で議論になります。点数をつけると角が立つ、という声も出ます。そのときは、点数ではなく事実だけを残してください。「いつ、どの工事で、何があったか」。これなら、だれも傷つきません。
期限は、日付でもって、60日前に鳴らす
台帳を作っただけでは、期限は守れません。見にいかないと気づかないからです。
やることは1つ。期限のある項目を日付でもち、その日の前に自動で知らせるしくみを1本たてる。それだけです。

建設業の許可は5年です。更新の申請は、有効期間が終わる30日前までに出すのが原則になっています。ただ実務では、そこから逆算していては間にあいません。書類をそろえる時間がいるので、90日前に一度動く形にしておくと安心です。
保険のほうは、年度の更新の時期と重なると、いちばん忘れられます。60日前に鳴らしておくのが無難です。
CCUS(建設キャリアアップシステム)の技能者の情報は、期限というより、変わったときの管理です。レベルが上がったのに古いままだと、せっかくの評価が現場に反映されません。制度の全体像は建設業のCCUS活用ガイドに書いています。
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紙とExcelで回している会社が、次にとるべき順番
いきなりシステムを入れる必要はありません。順番があります。

第1段階。1枚のExcelにまとめる。まず、あちこちにある情報を1つの表にします。この時点で、会社によってもっている情報の量がまるでちがうことがわかります。空欄が多い会社ほど、リスクが高い会社です。
第2段階。期限の列だけを日付にする。文章で書かれた期限を、日付の形になおします。これだけで、ならべかえができるようになります。期限の近い順にならべれば、来月やることが見えます。
第3段階。みんなが見られる場所に移す。Excelの弱いところは、だれかが開いていると触れないことと、最新のものがどれかわからなくなることです。協力会社が50社をこえたあたりから、これがきいてきます。
第4段階。安全書類とつなぐ。グリーンサイトのようなしくみをつかっていれば、提出の状況が画面で見えます。台帳と突きあわせると、二重に入力する手間が減ります。くわしくはグリーンサイト活用ガイドに書きました。
多くの会社は、第2段階までで、かなり楽になります。そこまでやってから、道具を考えてください。
よくある失敗を3つ
1つ目。発注者と協力会社を、おなじ台帳に混ぜる。混ぜると、案内を出すときに全部がならびます。仕事をくれる相手と、仕事を出す相手がおなじ画面に出てくると、だれも使わなくなります。区分の欄を1つ足すだけで、ふせげます。この考え方はZoho CRM 建設業|工事・協力会社・原価をどう載せるかでも書きました。
2つ目。担当者の名前で管理する。「あの会社は田中さんが窓口」というもちかたをすると、その担当者が辞めた瞬間に台帳が死にます。会社を主にして、人を従にしてください。
3つ目。作って終わりにする。台帳は、新しくしなければ、ただの古い名簿です。新しくするきっかけを、ふだんの仕事のなかに埋めてください。たとえば、発注のたびに許可の期限を見る。安全書類を受けとったら、その日に台帳へうつす。べつの作業として置くと、かならず後まわしになります。
よくある質問
Q. 協力会社が10社くらいでも、台帳はいりますか。
いります。むしろ少ないうちに形を作るほうが楽です。50社になってから整理するのは、かなりの手間になります。
Q. Excelとシステムのどちらがいいですか。
はじめはExcelでかまいません。わかれ目は、同時に何人かが触るかどうかです。触るなら、みんなで見られるしくみへ移してください。
Q. 許可の写しは、いつもらえばいいですか。
取引をはじめるときと、更新のたびです。更新の時期を台帳で見張っていれば、こちらから声をかけられます。先方によろこばれることもあります。
Q. 一人親方も台帳に入れますか。
入れてください。ただし区分は分けます。社会保険や労災のあつかいがちがい、確かめる項目も変わるためです。
Q. 台帳の情報は、どこまで社内で見せていいですか。
単価や評価は、あつかいを決めてから見せてください。先方の同意なく外に出せる情報ではありません。見られる人をかぎる設定は、はじめに決めておくと、あとが楽です。
台帳は、3つの効き方をします
当社は建設業の支援を、人材育成・DX推進・収益改善の3つを一体で考える形(統合最適化)で行っています。台帳の話も、この3つに分けると、やる意味がはっきりします。
人材育成の面から。期限を担当者の記憶で持っているうちは、その人が辞めた日に情報が消えます。台帳を作る作業は、頭のなかにあるものを会社の資産に移す作業です。新しく入った人が、前任者に聞かずに仕事を始められる状態をつくります。
DX推進の面から。本文に書いたとおり、期限を日付の欄で持てば機械が見張れます。逆に、文章のなかに書いてあるうちは、何を導入しても人が読むしかありません。道具を入れる前に、持ち方を直すのが順番です。
収益改善の面から。許可が切れていて入場できなければ、その日の工程は止まります。職人の手待ち、再手配、元請への報告。1日止まると、その現場の利益はそのぶん削られます。台帳の整備は、事故を防ぐ話であると同時に、利益を守る話です。
この3つは連動します。担当者の頭から情報が出てくると台帳が埋まり、埋まると機械が見張れるようになり、見張れるから工事が止まらない。どれか1つだけをやっても、続きません。
まとめ|今週やる3つ
1つ目。協力会社の情報が、いま何か所にあるかを数えてください。3か所以上なら、まとめる値打ちがあります。
2つ目。許可の有効期限だけを、1枚の表に集めてください。ぜんぶの項目をそろえるのは、あとで構いません。期限が先です。
3つ目。いちばん近い期限を見てください。60日を切っている会社があれば、今週のうちに連絡を入れます。
台帳は、作ることが目的ではありません。工事を止めないための道具です。まず、期限からです。
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参考にした資料
- 建設業法(e-Gov法令検索):許可の有効期間と更新の申請
- 建設キャリアアップシステム(CCUS 公式):技能者情報とレベル判定
制度は改正されることがあります。手続きにあたっては、許可行政庁と各制度の最新の案内をご確認ください。
本記事は法令・制度の一般的な内容をお伝えするものです。法令の適用についての個別の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。
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