9月1日は防災の日です。多くの会社にとって、この日は「自社が被災したらどうするか」を考える日だと思います。
けれども建設会社だけは、立ち位置がちがいます。被災する側であると同時に、呼ばれる側です。道路をあけ、がれきをどけ、水路を通す。その仕事を最初にやるのは、地元の建設会社です。
その「呼ばれ方」をあらかじめ決めておくのが、災害時応援協定です。この記事では、協定を結ぶ前に社内で決めておくことと、経営事項審査での扱いを整理します。
9月1日に、協定の話をしておく理由
防災の日は、1923年9月1日の関東大震災をきっかけに、1960年に定められました。あわせて8月30日から9月5日までが防災週間です。
この時期になると、自治体は防災訓練を組みます。訓練には、協定を結んでいる建設会社が呼ばれます。つまり9月のはじめは、協定の話がいちばん通りやすい時期です。
そして、もうひとつ。協定は、災害が起きてからでは結べません。締結にかかるのは平時の手続きだからです。「うちも協力したい」と思ったときには、もう間に合いません。
災害時応援協定とは、どういう約束か
災害時応援協定は、災害が起きたときの建設業者の活動について、建設業者と行政機関などのあいだで結ぶ協定です。多くは、次のような形をとります。
| 決めること | よくある内容 |
|---|---|
| だれと結ぶか | 市区町村、都道府県、地方整備局、あるいは建設業協会をとおして |
| 何をするか | 道路の啓開、がれきの撤去、応急復旧、資機材や重機の提供 |
| いつ動くか | 行政からの要請を受けてから。自主的な出動を含む場合もある |
| だれが動くか | あらかじめ出した名簿にもとづく |
| お金 | 出動後に精算。単価や算定方法は協定や覚書による |
大事なのは、協定書に書かれているのは「呼ばれたら行きます」という約束だという点です。行けるかどうかを決めるのは、そのときの自社の状態です。ここを詰めずに判を押すと、災害のときに社内が止まります。
結び方は、おおよそ3つに分かれます。
- 自治体と直接結ぶ。市区町村や都道府県と、自社の名前で結ぶ形です。地元に密着している会社に多い形です。
- 建設業協会をとおして結ぶ。協会が自治体と結び、会員が名簿に載る形です。手続きは軽くなりますが、自社が名簿に入っているかどうかを別に確かめる必要があります。
- 地方整備局と結ぶ。国が管理する道路や河川が対象です。規模の大きい会社に多い形です。
自社がどれに当たるかを、まず確かめてください。「協会に入っているから、たぶん結ばれているはずだ」で止まっている会社が少なくありません。たぶんでは、経審の書類は出せません。
結ぶ前に決めておく3つ

協定そのものは、ひな形が用意されていることが多く、書式で迷うことはあまりありません。迷うのは中身ではなく、自社側の段取りです。
① だれが「出す」と決めるのか
要請は、夜中にも、休日にも来ます。そのとき社長に連絡がつかなかったら、だれが出動を決めるのか。ここを決めていない会社が、いちばん多いです。
決め方はかんたんです。一次の判断者と、二次の判断者を、名前で書いておく。それだけです。役職ではなく名前にするのは、その役職の人が現場に出ていることがあるからです。
この判断は、自社の現場を止める判断と一体です。人を出すということは、動いている現場から人を抜くということだからです。発災直後にやることの順番は、建設業のBCP|発災72時間の実務と事業継続力認定に時間軸で整理してあります。
② お金はどう払われるのか
出動の費用は、あとから精算されるのが一般的です。ここで見ておくのは3つです。
- 単価は何にもとづくか(公共工事の設計労務単価か、実費か、協議か)
- 待機している時間は見てもらえるか
- 燃料や資材を自社で立て替えた分は、どう戻るか
出るのが先で、入るのがあとになる点は、災害復旧の工事と同じ構造です。手元の資金がどれだけ持つかは先に見ておくべきで、その考え方は災害復旧の資金と税|出るのが先の工事を、止めずに受ける順番に書いています。
③ 自社がやられたときは、どうするか
見落とされやすいのがここです。地震でも水害でも、地元の会社は被災者でもあります。自社の資材置き場が水に浸かっているのに、要請だけが来ることもあります。
協定に「できないときは断れる」旨の定めがあるかを確認してください。多くの協定には、自社の被害などでやむを得ない場合の扱いが書かれています。書かれていなければ、結ぶ前に聞いてください。断れない約束は、結んではいけません。
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経審では20点。W3が15点から20点に上がりました

災害時応援協定は、経営事項審査でも評価されます。国土交通省の改正資料では、防災協定を締結している場合の加点は W3(防災活動への貢献の状況) の項目にあたり、従来の15点から20点へ引き上げられました。建設業者の「地域の守り手」としての活動を評価するためです。
数字の位置づけを見ておきます。
| 見るところ | 数字 |
|---|---|
| 総合評定値の式 | P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W |
| Pに占めるWの重み | 0.15(X2と並んで最小) |
| W点の素点合計(A)の最高点 | 202点(改正前の資料値)。W評点=A×10×190÷200 |
| うち防災協定(W3) | 20点(改正前は15点) |
※ 202点は改正前の資料に載っている数字です。防災協定の加点が5点上がるぶん、改正後の合計はこれより高くなります。
素点の合計200点あまりのうちの20点です。ひとつの項目としては、小さくありません。しかもX1(完成工事高)やZ(技術職員数)とちがって、会社の大きさで決まる点数ではありません。結んでいるか、いないかだけです。中小の会社ほど、取りこぼすと痛い場所だといえます。
注意点がひとつあります。協定を複数の自治体と結んでも、点数は重ねて入りません。20点か0点かのどちらかです。数を増やすより、1本を確実に結ぶことです。
経審そのものの組み立ては、経営事項審査とは|点は決算日までに決まる2026年改正の3つにまとめています。
結んだだけでは動かない。動かすのは名簿と訓練

協定は、結んだ時点では紙です。実際に動くかどうかを決めているのは、次の3つです。
- 名簿が今の人になっているか(辞めた人が残っていないか)
- 重機と車両が、書いたとおりに存在するか
- 連絡が、夜中でもつながるか
とくに名簿は古くなります。1年に1度は見直してください。訓練に呼ばれたら、断らずに出ることです。訓練は点数のためではなく、当日に電話がつながるかどうかを試す場だからです。
要請から精算までの流れも、先に社内で共有しておいてください。おおまかには次の順です。
- 行政から要請が入る(電話、ファクス、メールなど。協定ごとに決まっています)
- 自社が可否を判断し、返答する
- 出動し、作業する
- 作業の内容を記録し、報告する
- あとから精算する
ここで抜けやすいのが4です。災害の現場では、写真も日報も後回しになります。しかし記録が残っていないと、精算の根拠がなくなります。出動の記録は、次の経審で協定の実績を示すときにも使います。現場に出る人に、「撮る」「書く」を作業の一部として渡しておいてください。紙ではなく、スマートフォンで撮って自動で集まる形にしておけば、現場の負担はほとんど増えません。
そして、連絡手段を紙の名簿だけに置かないでください。事務所が使えなくなったら、その紙は取り出せません。名簿と連絡網は、社外から見られる場所に置いておく。そこだけはデジタルにする値打ちがあります。
人材育成 × DX推進 × 収益改善の交点

災害時応援協定は、防災の話に見えて、経営の3つの軸がそろって動く数少ないテーマです。
人材育成。出動の判断を若手に任せる訓練になります。ふだんの現場では、判断は所長がします。災害時は所長が現場に行けないこともあります。「自分で決めた経験」を平時のうちに積ませておけるのが、この仕組みです。
DX推進。名簿、連絡網、重機の台帳を、事務所の外から見られる形に置く理由になります。ふだん「そのうち」で終わる整理が、期限を持って進みます。
収益改善。経審で20点が入ります。点数は入札の格付けにつながり、格付けは受注の幅につながります。防災の取り組みが、そのまま受注の話につながる。この構造は、建設業だけのものです。
今週やる3つ

防災週間のあいだに、次の3つだけ済ませてください。どれも1時間かかりません。
- 地元の自治体に、協定を結んでいるかを確認する。建設業協会をとおして加入している場合もあり、社内で把握できていないことがあります。まず今の状態を知ることです。
- 出動を決める人を、一次・二次の2名、名前で決める。紙1枚で足ります。
- 名簿と重機の台帳を、今の状態に直す。辞めた人を消し、売った重機を消す。それだけです。
結んでいなかった場合は、地元の自治体か建設業協会に問い合わせてください。9月は先方も防災の話をしている月なので、話が早く進みます。
よくある質問
Q1. 社員が10人でも、協定は結べますか。
結べます。協定は会社の規模ではなく、地域で動けるかどうかで意味を持ちます。小さい会社ほど地元に近く、いちばん早く現場に着けることも多いです。ただし、無理のない範囲を先に決めておいてください。
Q2. 協定を結ぶと、必ず出動しなければいけませんか。
多くの協定には、自社の被害などでやむを得ない場合の扱いが定められています。締結前に、その定めがあるかを確認してください。ない場合は、そこを協議してから結ぶべきです。
Q3. 経審の20点は、いつの申請から入りますか。
協定を結んだ日ではなく、審査基準日の時点で結ばれているかどうかで判断されます。決算日の前に結んでおく必要があるということです。詳しい取り扱いは、申請先の自治体や整備局の手引きで確認してください。
まとめ
災害時応援協定は、「呼ばれたら行く」という約束です。行けるかどうかを決めるのは、平時に何を決めておいたかです。
決めておくのは3つ。だれが出すと決めるか。お金はどう戻るか。自社が動けないときはどうするか。この3つが決まっていれば、当日に社内は止まりません。
そして、経審では20点が入ります。W3の項目で、15点から20点に上がった点数です。素点の合計200点あまりのうちの20点を、会社の大きさに関係なく取れます。防災の取り組みが、受注の話につながります。
9月1日は、その話をするのにいちばん通りやすい日です。
協定と経審を次の決算日から逆算して整理する無料経営相談はこちら(毎月5社まで)
参考にした一次資料
数値と制度の記述は、2026年8月30日に公式資料で確かめました。
- 経営事項審査の改正について(国土交通省・PDF):W3「防災活動への貢献の状況」の15点→20点、W点の評価項目と素点合計(A)の最高点、W評点=A×10×190÷200、総合評定値Pの算式
- 防災の日及び防災週間について(内閣府):防災の日の由来と、8月30日〜9月5日の防災週間
点数と要件は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、許可行政庁の最新の案内をご確認ください。
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