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経営事項審査とは|点は決算日までに決まる2026年改正の3つ

経営事項審査とは 点は決算日までに決まる

公共工事を取るなら、経審の点数からは逃げられません。ただ、この点数を「決算が終わってからやる申請の作業」だと思っている会社が、とても多いです。順番が逆です。点は、決算日までの1年間の判断でほぼ決まっています。

そして2026年7月1日から、中身が3つ変わりました。去年と同じことをしている会社は、それだけで点が下がります。逆に、手続きだけで5点を取れる項目が新しくできました。ただし、決算日を過ぎてから動いても今期は取れません。

目次

結論|経審は申請の作業ではなく、期中の経営判断の通知表です

なお、この記事は2026年7月1日の改正点と決算日までの段取りに絞っています。Z評点の上げかたは経審Z評点アップ実践マニュアル、決算のつくりかたは建設業の決算対策で扱っています。本記事はその手前にある「いつまでに何を決めるか」を担当します。

いちばん大事なところだけ先に書きます。やることは、むずかしくありません。ただし時期をまちがえると、その年はもう取り返せません。

経審の総合評定値(P点)は、5つの数字を決まった重みで足したものです。その重みを見れば、どこに手を打てば動くのかが分かります。

P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W

読み方はかんたんです。かけ算の左にある数が、その項目の重さ。大きいものから手を付ければ済みます。

いちばん重いのはX1(完成工事高)とZ(技術職員数と元請完成工事高)で、それぞれ0.25です。この2つで半分を占めます。どちらも、決算日までにどんな工事をどう取ったかで決まる数字です。申請書の書き方では動きません。

一方で、W(その他の審査項目)の重みは0.15です。今回の改正で動いたのは、このWだけです。ただしWは、会社の大きさではなく「制度に入っているかどうか」で動く場所です。X1やZは規模がそのまま出ますが、Wはそうではありません。だから中小の会社ほど、ここを取りこぼすと痛いです。

経営事項審査のP点を構成する5項目とウェイト
重いのはX1とZ。この2つで半分を占める。

経審が測っている5つの数字|最高点と最低点

それぞれの満点と最低点は、次のとおりです。Wだけがマイナスになるところが、この制度の性格をよく表しています。

評点 見る数字 重み 最高点 最低点
X1 完成工事高 0.25 2,309 397
X2 自己資本額と利払前税引前償却前利益 0.15 2,280 454
Y 経営状況 0.20 1,595 0
Z 技術職員数と元請完成工事高 0.25 2,441 456
W その他の審査項目 0.15 2,073 ▲788
P 総合評定値(5つの合計) — 2,159 163
令和8年7月1日以降に適用される最高点と最低点。出典:国土交通省。

ここで、数字のものさしが2つあることだけ先に断っておきます。上の表は評点(各項目を重みで足せるように換算した点)です。このあと出てくる「W合計237点/▲210点」は素点で、別のものさしになります。Wの評点が▲788まで下がるのは、素点のマイナスが換算で拡大するためです。同じ「W」でも数字が違って見えるのは、そのためです。

2026年7月1日以降の申請では、Wの最低点が改善されました。W全体の合計は、改正前の237点/▲210点から、改正後は237点/▲90点になっています。減点の幅が120点ぶん小さくなりました。理由は後で書きます。

2026年7月1日、3つ変わりました

ここからが、今年あたらしくなったところです。知っているかどうかだけで差が付きます。順に見ていきます。

告示第二百六十二号(令和8年2月6日公布)で改正され、2026年7月1日以降の申請から適用されています。変わったのは次の3つです。

国交省が挙げている改正の視点は3つです。①担い手の育成と確保 ②災害対応力の強化 ③令和2年の建設業許可要件の改正を踏まえた見直し。それぞれが、下の3つの変さらにそのまま対応しています。

項目 改正前 改正後(令和8年7月〜)
自主宣言(W1-⑧) 項目なし 5点を新設
就業履歴・民間を含む全工事 15点 10点
就業履歴・全公共工事 10点 5点
雇用保険 0/▲40点 削除
健康保険 0/▲40点 削除
厚生年金保険 0/▲40点 削除
建設機械(W7) — 不整地運搬車ほか2機種を追加
W1合計(素点) 77/▲120 77/0
W合計(素点) 237/▲210 237/▲90
動いたのはWだけ。出典:国土交通省告示第二百六十二号ほか。
2026年7月1日の経営事項審査改正3点
点が下がる会社と、手続きだけで取り返せる会社に分かれる。

①手続きだけで取れる5点|自主宣言は決算日までに出さないと、今期は取れません

「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無が、新しく5点の加点項目になりました。W1の8番目の項目です。

この制度は、技能者を大切にして処遇改善に取り組む会社が、その旨を内外に宣言するしくみです。宣言する内容は選べます。

  • 共通:宣言企業との取引優先、CCUSの利用環境整備、会社独自の取り組み
  • 元請・発注者の立場で:適切な工期・労務費等での取引
  • 下請の立場で:技能レベルに応じた手当や賃金支払、月給制、週休2日制

申請は国交省のポータル(愛称「職人いきいき宣言」)から、オンラインでできます。2025年12月12日から受付が始まりました。申請の入口は建設業許可番号の入力で、許可を持っていない会社も「許可番号なし」を選んで進めます。ポータルのよくあるご質問にも、事業規模や建設業許可の有無にかかわらず申請できると書かれています。

建設業許可がある場合、企業名と代表者名は建設業許可情報から取得されます。これはポータルの注意事項に明記されています。

手数料については、書けることと書けないことを分けます。ポータルと制度資料を8月24日に見た範囲では、金額の定めも「無料」との記載も見つかりませんでした。ですので、ここでは「無料です」と書きません。この5点の値打ちは、費用ではなく期限のほうにあります。

制度は、すでに動いています。8月24日時点で宣言企業は6,041社、取組を開始した企業は4,646社です。宣言の有効期間は、申請日の翌月を起算日として2年経過後の最初の12月末まで。宣言した会社はシンボルマークを使えます(使用できるのは取組開始日以降)。8月4日には、名刺に印刷できるサイズのデザインガイドライン改訂も出ています。5点だけでなく、名刺とサイトに貼れるマークが手に入ります。

ここが本題です。加点の要件に、時間の条件が入っています。

審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていること

審査基準日とは、決算日のことです。つまり、宣言したのが決算日より後だと、その期の経審では加点されません。次の期まで待つことになります。

もう1つ、駆け込みを避けるべき理由があります。ポータルの申請ページには、こうあります——「審査基準日において有効な自主宣言を行っている必要があります」。あわせて有効期間の起算日は「申請日の翌月」と書かれています。よくあるご質問では、公表までに最大1か月程度かかるとも案内されています。決算日の直前に出すのは、制度の書きぶりから見て安全側ではありません。当社は決算日の2か月前までに出しておくことをおすすめします。

手続きはオンラインだけ、しかし決算日を過ぎたら1年待ち。次の決算日までに時間があるなら、今日出してください。

自主宣言制度の加点タイムライン
宣言日が決算日より前かどうかだけで、今期取れるかが決まる。

②CCUSの加点が15点から10点へ|去年と同じでは点が下がります

就業履歴の蓄積に関する評価(W1-10)の配点が、下がりました。

  • 民間工事を含むすべての建設工事で要件を満たす場合:15点 → 10点
  • すべての公共工事で要件を満たす場合:10点 → 5点

減った5点は、①の自主宣言へ移ったかたちです。国交省の資料でも、自主宣言の新設と「あわせて」配点を見直したと書かれています。

CCUS就業履歴15点から10点へ 減った5点は自主宣言へ
減った5点は自主宣言へ移った。取りにいった会社だけが元に戻る。

意味はこうです。CCUSで就業履歴をためているだけの会社は、今年から点が下がります。同じことを続けていても、5点減るということです。その5点を取り戻すには、自主宣言を出すしかありません。CCUSの中身については建設業のCCUS活用ガイド|登録から処遇改善までにまとめています。

③社会保険の減点が消えました|ただし喜ぶ話ではありません

雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況に関する審査項目が、削除されました。この3つは、それぞれ加入していない場合に▲40点という減点項目でした。合わせて▲120点です。

削除された理由は、優遇ではありません。2020年10月に、許可と更新の要件へ社会保険の加入が入りました。2025年10月以降に経審を受ける会社は、入っているのが当たり前になったからです。

つまり「減点されなくなった」のではなく、「入っていない会社は、そもそも許可が続かない」という形に変わりました。W1の最低点が▲120点から0点になったのは、この削除によるものです。

経営事項審査W1の改正前後の対照
W1は10項目から8項目へ。減点が消え、取りにいく項目だけが残った。

建設機械の加点に2機種|買う判断は、点数で決めないでください

建設機械の保有状況(W7)で、加点の対象に「不整地運搬車」と「アスファルト・フィニッシャ」が加わりました。2024年の能登半島地震で、応急復旧の現場に使われた実績が確認されたためです。

W7は満点でも15点です。15点のために機械を買うのは、順番が違います。災害協定を結んでいて、実際に出動する会社なら、加点は結果としてついてきます。点数のために買った機械は、使わなければ償却と保管の費用だけが残ります。災害時の備えの考え方は建設業のBCP|発災72時間の実務と事業継続力認定で書きました。

自社の経審が今どこで点を落としているかを一緒に見る無料経営相談はこちら(毎月5社まで)

経審を経営判断に訳しなおす3つの問い
決算日までに決める3つが、点のほとんどを作る。

経営判断に訳しなおす|①どの工事を取るか

X1(完成工事高)とZ(技術職員数・元請完成工事高)で、P点の半分が決まります。ここは経理でも申請でもなく、受注の判断そのものです。

とくにZには「元請完成工事高」が入っています。同じ売上でも、下請で積んだぶんと元請で積んだぶんでは、点への効き方が違います。元請に回るかどうかは、値段の話ではなく点数の話でもあるということです。

売上を追うか利益を追うかという話は建設業の差別化戦略|価格競争を抜け出す方法に書きました。公共工事を続けるつもりなら、そこに「点はどう動くか」という軸がもう1本入ります。

同じ売上でも元請と下請では経審の点の付き方が違う
下請で積んだ売上はX1にしか効かない。元請なら重みは0.50になる。

技術職員の資格をどう積むかは、経審Z評点を上げる実践法|技術職員の資格取得を加速するに分けて書いています。

経営判断に訳しなおす|②いつ投資するか

X2は自己資本額と、利払前税引前償却前利益の2つです。重みは0.15。どちらも、決算日の残高と1年間の積み上げで決まります。

ここで効くのは、利益を出して残すか、使うかという判断になります。節税のために期末で使い切ると、X2は下がります。公共工事の比率が高い会社にとって、これは税金だけの話ではありません。翌年の入札の土俵が変わります。

Y(経営状況)も、負債とのバランスや収益性で決まります。重みは0.20で、Wより重いです。決算の数字そのものなので、期中の資金の使い方がそのまま出ます。資金繰りの実務は建設業の資金繰り改善|黒字倒産を防ぐ5つの実務にまとめました。

期末に使い切ると自己資本額が減りX2が下がる
期末に使い切るか、残すか。翌年の入札の土俵が変わる。

節税と点数のどちらを取るかは、2本に分けて書いています。経審対策と節税の両立|税理士と連携した戦略的決算テクニック。もう1本は建設業の決算対策|経審スコアを下げない節税の考え方です。本記事は、その手前の「いつ決めるか」を置きます。

経営判断に訳しなおす|③人に何を持たせるか

経審W1の主な配点と、点にするために残す記録の対応表
W1の人に関する項目は、記録が残って初めて点になる

Z(技術力)の中身は、許可業種ごとの技術職員数です。誰がどの資格を持っているかで、点が変わります。資格は取るのに時間がかかるので、決算日の直前には動かせません。

W1にも人に関する項目が並びます。建退共の加入で15点、退職一時金または企業年金の導入で15点、法定外労災で15点。さらに若年者の育成と確保で2点、知識や技術の向上への取り組みで10点、ワーク・ライフ・バランスで5点です。建退共の要件は建退共|経営事項審査15点が付く要件と電子申請で詳しく書いています。

並べてみると、Wの中身は「人にどれだけ手当てをしているか」でできています。点を取りにいく話ではなく、人が残る会社かどうかを国が数字で見ている、と読むほうが実態に合っています。

そして、ここが実務でいちばん詰まるところです。W1で点になる項目の多くは、紙のままでは積み上がりません。CCUSの就業履歴は、現場の入退場をカードで読み取って初めて記録になります。自主宣言はオンライン申請です。建退共も、証紙を貼る方式から電子申請へ移りました。どれも「やっているか」ではなく「記録が残っているか」で判定される項目です。

つまり経審の点は、人への手当てと、記録を残すしくみと、翌年の受注が、1本につながった数字です。当社が統合最適化と呼んでいるのは、この3つを別々の施策にしないという意味です。逆に言えば、現場の記録が紙のままの会社は、手当てをしていても点にならないということになります。

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よくある質問

Q. 自主宣言は、どのくらい手間がかかりますか。

オンラインで完結します。入口は建設業許可番号の入力です。許可があれば、企業名と代表者名は許可情報から取られます。宣言する項目は選択式で、自由入力欄は各120文字まで。手数料は、8月24日時点でどこにも記載が見つからなかったので、ここでは金額を書きません。手間より、決算日までに出せるかどうかのほうが問題です。

Q. 宣言した内容を守れなかったら、どうなりますか。

加点の要件には誓約書の提出が入っています。誓約の中身は、宣言した取り組みを取組開始日以降に行う、または行っている、というものです。守れない内容を宣言しないでください。選べる項目なので、いま実際にできていることから選ぶのが筋です。

Q. 決算日を過ぎてしまいました。今からできることはありますか。

その期の点を上げることは、ほとんどできません。経審は審査基準日、つまり決算日の状態を見る制度だからです。できるのは、次の期に向けて今日から動くことだけです。自主宣言は、いま出せば次の決算日には要件を満たします。

Q. 社会保険の項目が消えたぶん、点は上がりますか。

もともと加入していた会社は、変わりません。削除されたのは減点項目なので、加入していれば元から0点だったためです。変わるのは、加入していなかった会社だけです。ただしその場合、許可の要件のほうが先に問題になります。

Q. 中小でも点を上げる余地はありますか。

Wにはあります。建退共、退職一時金または企業年金、法定外労災で各15点、自主宣言で5点。いずれも規模を問いません。X1やZは会社の大きさがそのまま出ますが、Wは制度に入るかどうかだけの話です。小さい会社ほど、ここを埋めていない例をよく見ます。

まとめ|決算日を過ぎてからできることは、ほとんどありません

主張は1つです。経審の点は、申請のときではなく、決算日までの1年間で決まっています。

だから経審を上げたい会社がやるべきことは、申請書を見直すことではありません。どの工事を取るか、利益をどう残すか、人に何を持たせるか。この3つを決算日までに決めることです。

経審は決算日までに決まる 期中の4つの判断
決算日を境に、できることが変わる。右側に残るのは書類を整えることだけ。

そのうえで、2026年の改正でいちばん大事なのは、手続きだけで取れる5点が、決算日という期限つきで置かれたことです。CCUSの加点は5点下がりました。去年と同じことをしていれば点は下がり、自主宣言を出せば取り戻せます。違いは、動くかどうかだけです。

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参考にした一次資料

数値と条文は、2026年8月21日に公式資料で確かめ、ポータルの記載は8月24日に再確認しました。

点数と要件は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、許可行政庁の最新の案内をご確認ください。


佐藤 望 株式会社AppliBank代表取締役

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180/[email protected] へ。あわせて建設業の経営課題2026・建設業の生産性向上もどうぞ。


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経営事項審査とは 点は決算日までに決まる

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