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建設業の事業承継|親族・従業員・M&A 3つの選び方

建設業の後継者不在率は2025年57.3%で全業種最高(帝国データバンク)

「息子は継がない。番頭も高齢。このままでは、自分の代で会社をたたむしかないのか」――建設業の経営者から、いま最も多く寄せられる相談のひとつが事業承継です。帝国データバンクの調査によれば、建設業の後継者不在率は57.3%と全業種で最も高い水準にあります(2025年)。しかも建設業には、一般の会社にはない固有の壁があります。承継のやり方を間違えると、長年かけて積み上げた「建設業許可」と「経営事項審査(経審)の点数」「工事実績」が一度リセットされてしまうのです。本記事では、建設業界30年の知見から、後継者不足時代の3つの選択肢と、建設業ならではの許可・実績の引き継ぎ方、公的支援の使い方までを、一次データと想定モデルで整理します。

目次

この記事の結論(先にまとめ)

  • 建設業の後継者不在率は57.3%で全業種最高(帝国データバンク2025)。承継は「いつか」ではなく「今すぐ」検討すべき経営課題。
  • 選択肢は①親族内承継 ②従業員(役員)承継 ③第三者承継(M&A)の3つ。近年は同族承継より内部昇格(36.1%)が同族承継を上回り、脱ファミリー化が進む。
  • 建設業固有の要注意点は「建設業許可・経審・実績の承継」。2020年10月の改正建設業法で事前認可を受ければ許可番号・実績を空白期間なく引き継げるようになった。
  • 承継は「株式を渡す」ことではなく「渡せる会社に磨き上げる」5ステップ。人材育成×DX×収益改善の三位一体で企業価値を上げることが成功の条件。
  • 事業承継税制・事業承継M&A補助金(最大2,000万円)・事業承継引継ぎ支援センターなど公的支援は充実。使わない手はない。

1. なぜ建設業の事業承継は「待ったなし」なのか──3つの理由

理由1:後継者不在率が全業種で最も高い

帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によれば、建設業の後継者不在率は57.3%で、全業種の中で最も高い水準です。全体平均の50.1%を7ポイント以上上回ります。ピークだった2018年の71.4%からは14.1ポイント改善しているものの、これは廃業によって母数(会社の数)そのものが減った影響も含まれており、「後継者問題が解決に向かっている」と楽観できる数字ではありません(出典:帝国データバンク、2025年11月公表・全国約27万社調査)。

建設業の後継者不在率は2025年57.3%で全業種最高。2018年ピーク71.4%から改善も全業種平均50.1%を上回る(帝国データバンク)
建設業の後継者不在率は57.3%で全業種最高。改善傾向でも依然高水準(帝国データバンク2025)。

理由2:経営者の高齢化と、進む「脱ファミリー化」

同調査では、後継者の決まっている会社でも承継のかたちが大きく変わってきています。2025年の速報値では内部昇格(従業員・役員への承継)が36.1%と初めて最も多くなり、同族承継の32.3%を上回りました。M&Aほかによる承継も20.6%に達しています。かつての「息子が継ぐのが当たり前」という前提は、もはや通用しません。「親族に継ぐ人がいない=廃業」ではなく、従業員承継やM&Aという現実的な選択肢を、早めにテーブルに載せることが経営者に求められています。

建設業の事業承継のかたち構成比(2025年速報)内部昇格36.1%・同族承継32.3%・M&Aほか20.6%で内部昇格が初めて同族承継を上回る(帝国データバンク)
内部昇格が初めて同族承継を上回った(帝国データバンク2025年速報)。

理由3:承継を誤ると「許可・経審・実績」が消える

ここが、建設業の事業承継が一般企業と決定的に違う点です。建設業を営むには建設業許可が必要で、公共工事を受注するには経営事項審査(経審)の点数が要ります。この許可も経審の実績も、「会社(法人)」または「個人事業主本人」に紐づいています。承継の段取りを誤ると、後継者は許可を取り直しになり、許可番号が変わり、これまでの工事実績や経審の点数がリセットされかねません。入札参加資格に響けば、事業そのものが立ち行かなくなります。この「見えない資産」をどう引き継ぐかが、建設業の承継の最大のポイントです(詳しくは第3章)。

2. 事業承継の3つの選択肢──親族・従業員・M&A

事業承継の方法は、大きく3つに分かれます。どれが正解かは会社の状況によって異なります。自社の後継者候補・財務・従業員構成を踏まえて選ぶことが重要です。

建設業の事業承継3つの選択肢の比較。親族内承継・従業員(役員)承継・第三者承継(M&A)の向く会社・メリット・課題
3つの選択肢の比較。まず①②を検討し、難しければ③へ。
選択肢 向いている会社 メリット 主な課題
①親族内承継 後継者候補(子・親族)が社内にいる 従業員・取引先の納得を得やすい。準備期間を長く取れる 後継者の育成に時間。相続・贈与税、株式分散
②従業員(役員)承継 信頼できる番頭・幹部がいる 技術・現場・人脈を熟知。事業の一貫性を保てる 後継者に株式取得資金・個人保証の負担。金融機関の理解
③第三者承継(M&A) 親族にも社内にも後継者がいない 従業員の雇用と会社を存続。創業者利益の確保 相手探し・条件交渉。企業文化の統合(PMI)
3つの選択肢は排他ではない。まず①②を検討し、難しければ③に進むのが一般的な順序。

近年、建設業でM&Aが急増している背景には、後継者不足に加えて「規模拡大」「許可業種の補完」「若手人材の確保」といった買い手側の戦略があります。売り手にとっても、廃業して従業員を路頭に迷わせるより、事業を引き継いでもらうほうが、雇用も技術も守れます。M&Aの考え方は中小建設会社のM&A|成功のカギは「補完性」もあわせてご覧ください。

3. 【建設業の要】許可・経審・実績を「空白期間なく」引き継ぐ

2020年(令和2年)10月1日に施行された改正建設業法により、建設業許可の「事業承継・相続の認可制度」(建設業法第17条の2・第17条の3)が創設されました。これにより、事業承継の設計図が大きく変わりました。

改正前は、会社の合併や事業譲渡で建設業を引き継ぐ場合、いったん元の許可を廃業(取り下げ)し、承継先が許可を新規取得する必要がありました。すると許可番号が変わり、これまでの工事実績や経審の積み上げがリセットされるという重大なデメリットがありました。

改正後は、事業譲渡・合併・分割の場合、承継の効力が生じる前にあらかじめ「認可」を受けておけば、許可番号を含む建設業者としての地位を、空白期間を生じることなく承継できます。相続の場合も、被相続人の死亡後30日以内に認可を申請すれば、相続人が許可を引き継げます(出典:国土交通省 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」)。

建設業許可の事業承継。改正建設業法2020年10月の改正前後比較。改正前は許可番号変更で実績・経審リセット、改正後は事前認可で空白期間なく承継
改正建設業法(2020年10月)で、事前認可により許可番号・実績を空白期間なく承継できるようになった。

ここで経営者が押さえるべき実務ポイントは3つです。

  • 「事前」認可が原則:承継してから慌てるのでは間に合いません。譲渡・合併の予定が固まった段階で、認可のスケジュールを逆算して動く。
  • 相続は「30日以内」の申請が命綱:経営者に万一のことがあった際、遺族が30日以内に認可申請できるよう、必要書類と手続きを平時から共有しておく。
  • 経営業務管理責任者・専任技術者の要件を切らさない:許可の裏付けとなる「経管」「専技」を後継体制でどう満たすか。ここが空くと、認可制度を使っても許可を維持できません。

つまり建設業の承継は、株式や資産の話に入る前に、「許可と資格要件を、誰が・いつから・どう満たすか」の設計から始める必要があるのです。

4. 承継を成功させる5ステップ──「渡す」前に「磨く」

事業承継は、株式を渡した瞬間に終わるものではありません。「後継者が引き継ぎたくなる会社/金融機関や相手が引き受けたくなる会社」に磨き上げることが本質です。当社が建設業の統合最適化メソッド(人材育成×DX推進×収益改善)で支援する場合、次の5ステップで進めます。

  • STEP1 現状の見える化:財務・工事別損益・許可/経審・資格者の年齢構成・株主構成を棚卸しし、「承継の論点マップ」を作る。
  • STEP2 磨き上げ(企業価値向上):赤字工事の是正、原価管理の徹底、価格転嫁で利益率を改善。企業価値を上げることが、税負担も買い手評価も有利にする。
  • STEP3 属人化の解消(DX):ベテランの見積・段取り・原価管理のノウハウを、施工管理アプリやAIで仕組みに落とす。「社長がいないと回らない会社」は誰も引き継げない。承継後も回る仕組みづくりが必須。
  • STEP4 後継者・幹部の育成(人材育成):後継者に経営数字・現場・対外折衝を段階的に移す。従業員承継なら幹部チームで支える体制に。
  • STEP5 承継計画の実行:許可の認可申請、株式・保証・税の実務、(M&Aなら)相手探しと交渉を、専門家と進める。
建設業の事業承継を成功させる5ステップ。現状の見える化→磨き上げ(収益改善)→属人化の解消(DX)→後継者・幹部育成(人材育成)→承継計画の実行
承継を成功させる5ステップ。「渡す」前に「磨く」——人材育成×DX×収益改善の三位一体。

とりわけSTEP2・STEP3は、承継の有無にかかわらず今日から着手できる経営改善です。利益を出す仕組みと属人化を解消する仕組みは、人手不足対策とも直結します。承継はゴールではなく、「強い会社をつくる過程」そのものだと捉えることが成功の分かれ目です。

5. 使える公的支援──税・補助金・相談窓口

事業承継には、国の支援制度が複数用意されています。代表的なものを押さえておきましょう。

  • 法人版事業承継税制(特例措置):一定要件を満たすと、後継者が引き継ぐ自社株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度。適用には「特例承継計画」の提出が必要です。計画の提出期限は当初2026年3月末でしたが、令和8年度税制改正大綱で2027年9月末(法人版)への延長方針が示されています(最新の適用可否・要件は必ず顧問税理士・所轄庁で確認してください/出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」)。
  • 事業承継・M&A補助金:経営資源の引き継ぎ・M&A・経営統合(PMI)・廃業までを支援する国の補助金。専門家活用や設備投資などが対象で、最大2,000万円規模の枠があります(出典:中小企業庁「事業承継・M&A補助金」公式サイト)。
  • 事業承継・引継ぎ支援センター:各都道府県に設置された公的な相談窓口。親族内承継の相談から第三者へのマッチングまで、無料で相談できます。
建設業の事業承継で使える公的支援。法人版事業承継税制・事業承継M&A補助金(最大2000万円)・事業承継引継ぎ支援センター
使える公的支援。税制・補助金(最大2,000万円)・相談窓口。

これらは「知っているかどうか」で負担が数百万円単位で変わります。制度は年度で要件・期限が変わるため、着手を先延ばしにせず、最新情報を前提に早く動くことが肝心です。

まとめ──承継は「終活」ではなく「経営の総仕上げ」

建設業の事業承継は、後継者不在率57.3%という厳しい現実の一方で、許可承継の認可制度・税制・補助金といった「追い風」も整っています。大切なのは、承継を「会社をたたむ準備」ではなく「強い会社に磨き上げる経営の総仕上げ」と捉え直すことです。利益を出す仕組み(収益改善)、属人化を解く仕組み(DX)、次を担う人を育てる仕組み(人材育成)――この三位一体を今日から進めることが、そのまま承継の準備になります。「まだ早い」と思ったときが、始めどきです。

株式会社アプリバンクは、建設業専門の経営コンサルティングとして、事業承継を見据えた企業価値の磨き上げ(原価管理・DX・人材育成)をワンストップで支援しています。「何から手をつければいいか分からない」段階でのご相談を歓迎します。

▶ 建設業の事業承継・経営改善の無料相談はこちら(毎月5社まで)

よくある質問(FAQ)

Q. 後継者がいません。廃業するしかないですか。
A. いいえ。従業員(役員)承継や第三者承継(M&A)という選択肢があります。実際、承継のかたちは同族から内部昇格・M&Aへとシフトしており(2025年速報で内部昇格36.1%)、親族以外への承継は珍しくありません。まずは事業承継・引継ぎ支援センターや専門家に早めに相談してください。

Q. M&Aで会社を売ると、建設業許可や実績はどうなりますか。
A. 2020年10月の改正建設業法により、事業譲渡・合併などの前に「認可」を受けておけば、許可番号を含めて空白期間なく承継できます。逆に段取りを誤ると許可・実績がリセットされるため、事前設計が重要です。

Q. 事業承継の準備は、いつから始めるべきですか。
A. 一般に、承継の磨き上げには5〜10年かかると言われます。経営者が60代なら「今すぐ」が答えです。特に建設業は許可・資格者要件の設計に時間がかかるため、早いほど選択肢が広がります。


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【執筆・監修】株式会社アプリバンク 代表取締役 佐藤 望

建設業専門の経営コンサルタント/建設業界30年(現場〜本社財務、海外5カ国の施工経験)。独自メソッド「統合最適化(人材育成 × DX推進 × 収益改善)」で、建設業の事業承継・経営改善を一気通貫で支援。経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01/2026年6月認定)。

お問い合わせ・無料相談:建設業の事業承継・経営改善の無料相談(毎月5社まで) / 最終更新: 2026年7月4日

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建設業の後継者不在率は2025年57.3%で全業種最高(帝国データバンク)

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