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監理技術者・主任技術者の専任|4,500万円の基準

監理技術者を置く基準5,000万円と専任の基準4,500万円を分母の違いとともに並べた比較図

「4,000万円を超えたら専任」。そう覚えている方は、いちど数字を直してください。

いまは4,500万円です。建築一式工事なら、8,000万円ではなく9,000万円から。

やっかいなのは、よく似た数字がもうひとつ並んでいることです。監理技術者を置く基準は5,000万円(建築一式は8,000万円)。専任の基準とは、金額もちがえば、何をたして数えるのかもちがいます。この2つを混ぜたまま人を配置すると、現場の組み立てが根っこからずれます。

そしてもうひとつ。「専任=その現場に1日じゅう張り付く」も、もう正確ではありません。いまの条文には、2つの現場まで持てる道がはっきり書かれています。ただし、ただで使える道ではありません。

この記事では、金額の線引き・専任の中身・兼任の要件を、条文にあたって整理します。数字はすべて、e-Gov法令検索で現行の条文を取り直して確かめたものです。

目次

「置く」基準と「専任」の基準は、別のものさし

監理技術者を置く基準5,000万円と専任の基準4,500万円を分母の違いとともに並べた比較図

まず、いちばん多い取りちがえから。

監理技術者を置くかどうかは、下請契約の「合計額」で決まります。元請が結んだ下請契約を、ぜんぶ足す。それが5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)になったとき。そこで主任技術者ではなく、監理技術者を置きます(建設業法26条2項・施行令2条)。

専任かどうかは、工事1件の「請負代金の額」で決まります。公共性のある重要な工事で、その額が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)のとき。その技術者は専任でなければなりません(法26条3項・施行令27条1項)。

分母がちがう。この一点だけ持ち帰ってください。片方は下請に出したぶんの合計、もう片方は受けた工事そのものの金額です。

よくあるのは、こんな場面です。「今回は4,000万だから、うちは専任じゃなくていいよね」。ここでうなずいてしまうと、あとから直せません。言われた側が、その場で「何の4,000万ですか」と聞き返せるかどうか。そこだけの差です。

ここでいちばんまちがえるのが、建築一式です。置く基準は8,000万円、専任の基準は9,000万円。同じ工事なのに、1,000万円ずれています。

8,000万円で線を引いてしまうと、専任にしなくてよい工事に人を張り付けることになります。逆に9,000万円で置く基準を判断すれば、監理技術者を置きそこねます。片方は人のむだ、もう片方は法令違反です。

現場の会話では「8,000万を超えたら」で通じてしまいます。そこが落とし穴です。何の8,000万なのか。いちど、ことばにしてみてください。

専任が必要になるのは4,500万円から

請負代金の額と専任・兼任の境目を4,500万円と1億円で示した数直線

専任とは、その工事現場にかかりきりになることです。ほかの現場の技術者を兼ねない、という意味だと考えてください。

対象は「公共性のある施設もしくは工作物、または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な工事」です(法26条3項)。公共工事だけの話ではありません。民間でも、多くの人が使う建物なら入ってきます。マンション、店舗、病院、学校。このあたりは、ほぼ当たると考えておいたほうが安全です。

そのうえで金額が4,500万円以上(建築一式は9,000万円以上)なら、専任になります。

工事の種類 監理技術者を置く
(下請契約の合計額)
専任にする
(工事1件の請負代金)
2現場まで兼任できる上限
(請負代金)
建築一式工事 8,000万円以上 9,000万円以上 2億円未満
建築一式以外 5,000万円以上 4,500万円以上 1億円未満
根拠 法26条2項・令2条 法26条3項・令27条1項 法26条3項1号イ・令28条
建築一式だけ、置く基準(8,000万円)と専任の基準(9,000万円)が1,000万円ずれる

ここで、古い数字が世の中にたくさん残っています。「3,500万円/7,000万円」「4,000万円/8,000万円」と書かれた記事や社内資料を、いまでも見かけます。現行は4,500万円と9,000万円です。社内の手順書が古いままなら、そこだけはきょうのうちに直してください。

いま動いている現場で、専任の技術者は何人必要になっていますか。

アプリバンクでは、建設業に特化した無料の経営相談を毎月5社まででお受けしています。施工中の工事一覧(請負代金の額つき)と、配置している技術者の名簿をおもちください。その場で、専任が要る工事と兼任できる工事に仕分けしてお返しします。

「1現場に張り付き」は、もう正確ではない

2現場まで兼任できる3つの要件(金額・移動と連絡・情報通信技術)を並べた図

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

法26条3項のただし書と施行令30条で、同じ技術者が2つの現場まで持てます。ただし、次の3つをぜんぶ満たしたときだけです。

  • イ 請負代金が1億円未満であること(建築一式は2億円未満・施行令28条)
  • ロ 現場のあいだの移動時間、それに連絡をとる方法が、国土交通省令の要件に合っていること
  • ハ 現場の状況を確かめる仕事を、情報通信技術を使う方法でできる措置がとられていること

1つでも欠ければ、兼任はできません。「近いから大丈夫」では通らない、ということです。

そして上限は2現場です(法26条4項・施行令30条)。3つ目はありません。

注目していただきたいのは、ハです。条文が、現場に足を運ぶかわりに情報通信技術を使うことをはっきり求めています。カメラ、遠隔での確認、記録の共有。やりたければやってよい、という書き方ではありません。兼任するなら、その仕組みが要る、という書き方です。

ここは、当社が申し上げてきた統合最適化とまっすぐつながります。人が足りないから兼任したい。ならば、そのための道具を先に入れる。そして入れた道具は、現場の記録を残します。記録が残れば、若い技術者の育ちかたも変わります。人材の育成と、デジタル、それに1人あたりの粗利。3つは、べつべつの話ではありません。

お金の面でも、はっきり差が出ます。専任が要る工事に技術者を1人張り付けるということは、その人の人件費を、その工事だけで持つということです。4,500万円の工事に1人。もし兼任が使えれば、おなじ1人で2件を見られます。1人あたりが生む粗利は、単純に倍ちかくになります。逆に、要件を満たさないまま兼任してしまえば、監督処分から公共工事の失注につながり、失うのは粗利どころではありません。兼任のための道具にいくらかけるかは、この差と見くらべて決めるものです。見積の段階で専任の要否が分かっていれば、その費用ははじめから工事の原価に入れられます。

営業所の技術者が、現場を兼ねられるようになった

営業所技術者が現場の主任技術者・監理技術者の職務を兼ねられる関係を示した図

条文のことばが変わっていることにも、ふれておきます。

いまの条文には「営業所技術者」「特定営業所技術者」という言葉が入っています。かつての「専任技術者」という呼び方で書かれた資料は、用語の時点で古いということです。

そして法26条の5で、一定の要件を満たせば、営業所技術者が現場の主任技術者・監理技術者の職務を兼ねられます。持てる現場の数には、同じ条の2項で上限があります。

社内の役割表が「営業所の技術者は現場に出せない」で止まっているなら、見直す余地があります。人が足りない会社ほど、ここは効きます。

元請の主任技術者が、下請のぶんを兼ねる

特定専門工事で元請の主任技術者が下請の主任技術者の職務を兼ね、再下請負が禁止される構造図

人のやりくりに効く特例が、もうひとつあります。特定専門工事の特例(法26条の3)です。

元請の主任技術者が、下請の主任技術者の職務を兼ねられます。その下請には、技術者を置かなくてよくなります。

要件は主に2つ。元請の主任技術者が、同じ種類の工事で1年以上の指導監督的な実務経験を持っていること。そしてその現場に専任していることです(同条7項)。

そのかわり、この下請は再下請に出せません(同条9項)。上から下まで見えている工事だから認める、という組み立てです。

資格者証は「持っている」だけでは足りない

監理技術者資格者証・登録監理技術者講習・発注者への提示義務の3点を並べた図

専任の監理技術者には、監理技術者資格者証と、登録講習を受けていることが求められます(法26条5項)。

そして発注者から求められたら、提示しなければなりません(同条6項)。

期限切れは、当日に見つかると動けません。資格者証の有効期限、それに講習を受けた日。この2つは、人ごとに一覧にして持っておいてください。紙のファイルにはさんだままだと、まず気づけません。

よくあるご質問

Q. 「監理技術者を置くか」と「専任にするか」は、どちらを先に考えるのですか。

A. 先に決まるのは置くほうです。下請に出したぶんの合計が5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上になれば、そこで監理技術者になります(法26条2項)。そのうえで、その工事1件の請負代金が4,500万円(建築一式は9,000万円)以上なら、こんどは専任かどうかの話になります(法26条3項)。ふたつは順番に見るもので、どちらか一方ではありません。

Q. 建築一式の9,000万円は、下請に出したぶんの合計ですか。

A. ちがいます。受けた工事1件の請負代金の額です(施行令27条1項)。下請の合計で見るのは、監理技術者を置くかどうかのほう(同令2条)です。ここを取りちがえると、金額はそのままなのに結論だけが入れかわります。

Q. 要件を満たせば、3つ目の現場も持てますか。

A. 持てません。上限は2つです(法26条4項・施行令30条)。金額の要件も、移動と連絡の要件も、情報通信技術の要件も全部そろっていても、3つ目はありません。

Q. 特定専門工事の特例を使った下請は、さらに下請に出せますか。

A. 出せません。再下請負は禁止されています(法26条の3第9項)。元請の主任技術者が下請のぶんまで見るしくみなので、その下にもう一段入ると、見えなくなるからです。

まとめ

  • 監理技術者を置く基準は5,000万円(建築一式8,000万円)。下請契約の合計額で見る
  • 専任の基準は4,500万円(建築一式9,000万円)。工事1件の請負代金で見る
  • 建築一式は8,000万円と9,000万円で1,000万円ずれる。ここが最大の落とし穴
  • 2現場までの兼任はできる。ただし1億円未満(建築一式2億円未満)・移動と連絡の要件・情報通信技術での現場確認の3つがそろったときだけ
  • 営業所技術者が現場を兼ねられる(法26条の5)。役割表を見直す価値がある
  • 特定専門工事なら、元請の主任技術者が下請のぶんを兼ねられる(法26条の3)。ただし再下請は禁止

人が足りないことは、もう与件です。そのうえで条文は、道具を入れた会社にだけ、人のやりくりを認めるという形になっています。順番は逆にできません。

なお、5,000万円(建築一式8,000万円)という同じ線は、施工体制台帳の作成義務にも引かれています。配置する技術者と、作る書類。この2つは同じ金額で同時に動きます。台帳側は施工体制台帳|作成義務の金額基準5,000万円と実務で整理しています。

2現場の兼任を使うために足りていないのは、金額ですか、それとも道具ですか。

建設業に特化した無料の経営相談を、毎月5社まででお受けしています。技術者の名簿と、いま現場で使っている連絡・記録の手段をおもちください。兼任の3要件のどこが欠けているかを洗い出し、そこを埋めるための道具まで含めてお返しします。

この記事について

執筆:佐藤 望(さとう のぞむ)/株式会社アプリバンク 代表取締役

建設業界での経験は30年。大手ゼネコンでは20年にわたり、現場・財務・人事を横断して担当してきました。海外5カ国での施工経験もあります。現在は建設業に特化した経営コンサルティングを行い、人材育成・DX推進・収益改善を同時に動かす「統合最適化メソッド」を提供しています。

現場で多く見てきたのは、「金額の線引きを、誰も自分の口で説明できない」という状態です。工事の受注が決まってから技術者をさがしはじめ、専任なのか兼任でよいのかを、契約書ではなく記憶で判断してしまう。金額の判断がずれるのは、条文がむずかしいからではなく、判断する場面が受注のあとに来るからでした。見積のだんかいで「この工事は専任が要る」と分かっていれば、人の手配も、経費の見かたも変わります。

なお、本記事は制度の内容をお伝えするものです。個別の工事における専任義務の有無や、兼任が認められるかどうかの判断は、許可行政庁または発注者にご確認ください。

お問い合わせ:株式会社アプリバンク/無料経営相談

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出典

本記事の内容は2026年8月12日時点の情報にもとづきます。金額要件や専任の要件は法令改正により変わることがあり、個別の工事における結論は契約内容や工事の種類により異なります。実際の運用にあたっては、許可行政庁または発注者にご確認ください。

本記事は法令・制度の一般的な内容をお伝えするものです。法令の適用についての個別の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。


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