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建設業の原価管理|改正建設業法に対応する5つの実務

建設業の原価管理 改正建設業法に対応する5つの実務

2025年12月、建設業の原価管理を取り巻く「ルール」が大きく変わりました。改正建設業法(令和6年法律第49号)が全面施行され、中央建設業審議会が職種別の「労務費の基準(標準労務費)」を勧告。あわせて、著しく低い労務費による見積り・見積依頼の禁止や、原価割れ契約の禁止が受注者側にも導入されました(国土交通省「労務費に関する基準」・2026年6月時点)。

これは、「どんぶり勘定」「気合いの安値受注」がもう通用しない時代に入ったことを意味します。原価管理はいまや、コストを削るための事務作業ではなく、適正な利益と労務費を守り、法令を遵守するための経営の生命線です。本記事では、建設業に特化した経営コンサルタントとして多くの会社の収益改善を支援してきた経験から、改正法時代に利益を守る原価管理の5つの実務を、公的データに基づいて解説します。

目次

2025年改正建設業法で原価管理はどう変わったか

まず押さえるべきは、2025年12月に全面施行された改正建設業法のポイントです。建設業の担い手不足と、労務費の買い叩きによる処遇悪化に歯止めをかけることが狙いです。買い叩きの極端な形である無償発注については、ゼロ円発注と取適法のルールで整理しています。

図1:2025年改正建設業法・原価管理に関わる3つの新ルール

労務費の基準中央建設業審議会が職種別の標準労務費を勧告。見積りの「ものさし」ができた
安値見積の禁止著しく低い労務費での見積り・見積依頼を禁止(発注者は勧告・公表対象)
原価割れの禁止不当に低い請負代金(原価割れ)の禁止を受注者側にも導入

「労務費の基準」は、労務単価(円/人日)×歩掛(人日/施工量)の形で、職種ごとに「1トンあたり」「1㎡あたり」などの単位施工量労務費として示されます。詳細は国土交通省の労務費に関する基準ポータルサイト(2026年6月時点)で公開されています。つまり、自社の見積りが「基準に照らして適正か」を客観的に確認できるようになったということです。

この改正は、原価を正確に把握していない会社にとっては大きなリスクです。原価が見えないまま受注すれば、知らぬ間に原価割れや基準割れに該当しかねません。逆に、原価管理ができている会社にとっては、適正な価格を堂々と主張できる追い風になります。

なぜいま原価管理が経営の生命線なのか

背景には、止まらない人件費の上昇があります。国土交通省の公共工事設計労務単価は令和8年3月適用分で14年連続の上昇となり、全国全職種平均で初めて2万5千円を超えました(国土交通省・2026年6月時点)。資材価格も高止まりが続いています。

コストが構造的に上がり続けるなかで利益を残すには、「いくらかかっているか」をリアルタイムで把握し、適正な価格に転嫁し続けるしかありません。原価管理は、その土台です。以下、改正法時代に利益を守る5つの実務を順に見ていきます。

原価管理の出発点:建設業の原価構造を正しく掴む

実務に入る前に、自社の原価構成を把握しておきます。一般的な中小建設会社の工事原価の目安は次のとおりです(規模・業態で変動するため自社数値でご確認ください)。

図2:建設会社の工事原価の構成(一般的な目安)

外注費(協力会社への支払い) 40〜60%

材料費 15〜25%

労務費(自社の人件費) 10〜20%

現場経費・間接費 10〜20%

数値は一般的な目安(会社・業態で変動)。バーは代表値で図示しています。外注費・材料費で原価の6〜8割を占め、改正法で焦点となる「労務費」は、外注先の労務費も含めてサプライチェーン全体で適正化が求められます。

実務1:工事別の実行予算と原価を「見える化」する

原価管理の核心は、会社全体ではなく「工事ごと」に予算と実際原価を比べることです。受注時に実行予算(目標原価)を組み、工事の進行に合わせて実際にかかった原価をリアルタイムで突き合わせます。

図3:工事別原価管理のサイクル

①実行予算
受注時に目標原価を設定
②原価集計
外注・材料・労務を工事別に
③予実対比
予算消化率を随時チェック
④是正
超過の兆候で即手を打つ

「締めてみないと利益が分からない」状態は、改正法時代には致命的です。クラウドの原価管理ツールを使えば、工事ごとの採算を進行中に把握でき、原価割れの芽を早期に摘めます。

実務2:間接費・生産支援管理費を「各工事に配賦」する

建設業の原価管理でつまずきやすいのが、複数の現場にまたがって発生する間接費の扱いです。重機リース・仮設・運搬・管理部門の労務などを「販管費として一括処理」してしまうと、本当はどの工事が儲かっているのかが見えなくなります。

建設業会計では、こうした共通費(生産支援管理費・工事間接費)を、完成工事高や直接費などの基準で各工事に配賦するのが実務です。配賦を正しく行うと、工事別の真の採算が見え、見積精度と価格交渉力が上がります。

図4:間接費の配賦——工事別の「真の原価」を出す

①共通費を集計
重機・仮設・管理労務
②配賦基準を決定
完成工事高/直接費 等
③各工事へ配賦
工事別の真の原価
④採算判断
見積・受注に反映
「うちの原価管理は改正法に対応できているか」を診断します。

工事別採算の見える化から労務費基準への対応まで、建設業専門のコンサルが無料で点検します。

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実務3:労務費の基準を「見積に正しく反映」する(改正法対応)

改正建設業法では、著しく低い労務費での見積り・見積依頼が禁止されました。見積書の段階で、労務費を適正に積み上げ、根拠を示せる状態にしておく必要があります。

見積でやること 狙い
労務費を内訳明示する 「労務費の基準」と照合可能にする
法定福利費を別枠で計上 社会保険料の適正確保(処遇改善)
歩掛・労務単価の根拠を持つ 発注者への価格交渉の材料
資材スライド条項を入れる 資材高騰分の適正転嫁

下請に対しても、著しく低い労務費での見積依頼はできません。協力会社への適正な支払いと、発注者からの適正な価格転嫁はセットです。国も2023年に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(内閣官房・公正取引委員会・2023年11月29日)を示しており、労務費の適正な転嫁は発注者・受注者双方に求められる行動です。

実務4:赤字工事を早期発見し、原価割れを防ぐ

改正法では、不当に低い請負代金(原価割れ)の禁止が受注者側にも導入されました。受注者であっても、下請に原価割れを強いることはできません。これを守りつつ自社の利益も確保するには、赤字工事を「進行中に」見つける仕組みが不可欠です。

不当に低い請負代金の禁止は、従来から建設業法 第19条の3(e-Gov 法令検索・2026年6月時点)に定められていましたが、改正でその実効性が高まりました。予算消化率にアラートを設定し、超過の兆候が出た時点で工程・人員・発注を見直すことで、原価割れと法令違反の両方を未然に防げます。

実務5:原価管理DXを「人材育成」につなげる——統合最適化

原価管理を一過性で終わらせない鍵が、デジタル化と人材育成の接続です。原価管理をクラウド化すれば、現場監督は手作業の集計から解放され、本来の施工管理と後進育成に時間を使えます。

図5:統合最適化——原価管理を成長の原資に変える

人材育成見える化で生まれた時間を教育・技能伝承へ。原価意識も社内に根づく
DX推進原価集計を自動化し、工事別採算をリアルタイムに把握
収益改善赤字工事を防ぎ、適正利益と適正労務費を両立

これがアプリバンクの統合最適化メソッド(人材育成 × DX推進 × 収益改善の三位一体)です。原価管理は、単なる守りのコスト管理ではなく、人が育ち利益が残る会社をつくる攻めの経営基盤になります。

まとめ:原価管理は「守り」から「経営の武器」へ

2025年12月の改正建設業法で、労務費の基準と原価割れの禁止が整い、原価を把握していない会社のリスクは一段と高まりました。逆に、工事別に原価を見える化し、間接費を正しく配賦し、労務費を基準どおりに見積に反映し、赤字工事を早期に是正できる会社は、適正な利益を堂々と確保できます。原価管理は、もはや事務作業ではなく、利益と人材と法令遵守を同時に守る経営の武器です。まずは自社の「工事別採算が見えているか」を点検することから始めてください。

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本記事は「原価管理」に焦点を当てました。コスト削減の実践、業務効率化、財務・資金繰りといった隣接テーマは、専門の記事で詳しく扱っています。

執筆:株式会社アプリバンク 代表取締役 佐藤 望
建設業界30年、ブラジルをはじめ海外5カ国での施工マネジメント経験を持つ建設業専門の経営コンサルタント。年商数億〜数百億円規模の建設会社に対し、人材育成 × DX推進 × 収益改善を一体で進める「統合最適化メソッド」で利益率改善を支援してきた。原価構造の見える化と現場が使えるDXの両輪で、机上論ではない実務の改善を重視する。
▶ 経営のご相談は 無料経営相談フォーム(毎月5社まで)から。会社概要は applibank.com。

【出典】国土交通省「労務費に関する基準」/「労務費に関する基準ポータルサイト」(改正建設業法・2025年12月施行)/国土交通省「公共工事設計労務単価」(2026年2月発表・14年連続上昇)/内閣官房・公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(2023年11月29日)/建設業法 第19条の3(e-Gov 法令検索)。いずれも2026年6月時点。本記事の原価構成比は一般的な目安です。


本記事は法令・制度の一般的な内容をお伝えするものです。法令の適用についての個別の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。


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