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建設業の人材力強化|じんざいフレームワークで考える

じんざいの4分類と6分類。分け方は当社の見方。CCUS登録189万人(2026年7月末)、レベル別の合計190万8,307人のうち91.2%がレベル1(8月31日)、レベル別年収の標準値の差177万円

「いい人がいない」。建設業の社長から、いちばん多く聞く言葉です。

いる会社もあります。ただ、その会社が特別にいい人を採れているわけではありません。同じ人を、どう見て、どう扱っているかが違うだけです。

この記事では、2つの枠組みを並べます。人を4つに分けて見るじんざいのフレームワークと、絆徳の経営スクールが採用の章で示す6分類です。そのうえで、建設業でそれが制度の上でどう見えているかを国と建設業振興基金の公表値でならべます。

4分類は古くから使われていますが、出どころは定かではなく、軸の取り方や定義は解説によって違います。この記事では、代表の佐藤 望が2018年に整理した「マインド × スキル・成果」で書きます。2018年の原稿に、2026年の数字を足して書き直したものです。

目次

じんざいは、2つの軸で4つに分かれる

縦にマインド(やる気・価値観・成長と貢献の意識)、横にスキルと成果を取ると、人は4つに分かれます。

マインドとスキル成果の2軸で人材・人財・人罪・人在に分かれるじんざいの4分類マトリクス。割合は代表の経験による
代表の経験では、人材と人在が8割ほど。統計ではありません。
呼び方 マインド スキル・成果 ひとことで言うと
人財 高い 高い 実績もあり、これからも伸びる。会社の財産
人在 低い 高い 実績はあるが、それ以上は伸びない。指示待ち
人材 高い 低い 実績はないが伸びる。原材料の「材」
人罪 低い 低い 実績も成長もない。時に足を引っ張る

代表の経験では、人材と人在が8割ほど、人財と人罪が残り2割ほどに分かれます(統計ではありません)。

人財 — 仕事をつくる人

スキルが高く、マインドも高い。仕事が非常によくできて、その上、人としても立派でみんなから信頼されています。部下や同僚のやる気まで引き上げられる。仕事を動かし、部門を動かし、会社を動かす原動力です。

人在 — 仕事をもらう人

スキルは高く、指示や命令を受ければ正しく理解して仕上げます。欠けているのは自分から手を上げることです。人財が仕事をつくる人なら、人在は良い仕事をするけれども仕事をもらう人。言われるまで動かない、ただ在るだけ、という意味で人在です。

人材 — これからの人

マインドが高く、やる気もある。目に光があり、声に張りがある。足りないのはスキルと経験だけです。新入社員や若手はもちろん、部署が変わってベテランが素人に戻る場面もここに入ります。原材料の「材」を当てているのは、これから何にでもなれるからです。

人罪 — 会社に罪になる人

マインドも低く、スキルも足りない。同僚を応援するどころか、時に足を引っ張る。存在そのものが会社に対して罪になる、という意味で人罪と呼びます。

建設業では、技能の側だけが制度で見える

ここからが、建設業に特有の話です。じんざいの分け方そのものは、当社の見方です。国の制度が「人財か人罪か」を判定しているわけではありません。CCUSが評価しているのは技能と経験で、会社との価値観の一致は対象外です。

ただし、2軸のうちスキル・成果の側だけは、国の制度が外から見える形にしました。マインドの側は、会社が自分で見るしかありません。

CCUSのレベル別技能者数。総計190万8,307人のうちレベル1が174万1,190人で91.2%。レベル判定は会社か本人が申請して初めて付く
割合の分母は、レベル別の人数を足した190万8,307人です。
項目 数字 時点・出どころ
建設業の就業者 478万人(うち技能者296万人) 令和7年・国土交通省
55歳以上の割合 36.6% 同上
29歳以下の割合 11.9% 同上
CCUSに登録した技能者 189万人(技能者296万人の約64%) 2026年7月末・国土交通省
レベル別の人数(4段階の合計) 190万8,307人 2026年8月31日・建設業振興基金
うちレベル1 174万1,190人=91.2% 同上

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者をレベル1からレベル4の4段階で見える化する仕組みです。レベル1が174万1,190人で、91.2%を占めます。レベル2は5万2,106人、レベル3は4万6,116人、レベル4は6万8,895人です。

この91.2%は、4段階の人数を足した190万8,307人を分母にした割合です。国土交通省が公表している189万人は2026年7月末、レベル別の人数は8月31日なので、そのまま割ると分母がずれます。

レベル判定は、会社か本人が申請して初めて付きます。レベル1が9割という数字から、その人たちが使っていない、とは言えません。レベル1のまま就業履歴をためている人もいますし、経験年数が基準に届かない人も、申請していないだけの人もいます。

この数字から言えるのは、レベル2以上の判定を受けた人が1割に満たないということだけです。登録の手順そのものは建設キャリアアップシステム活用ガイドにまとめてあります。この記事は、その手前にある「人をどう見るか」を扱います。

自社の技能者が、いまどのレベルに何人いるかを数えるところからご一緒します(毎月5枠)

制度の上では、賃金の目安と会社の評価に出てくる

ここが、他の業種と決定的に違うところです。建設業では、技能者のレベルが、国の示す賃金の目安と、申請した会社が受ける評価の両方に出てきます。

CCUSレベル別年収はレベル1標準395万円・レベル4標準572万円(労務単価をもとにした試算)。見える化評価の採点項目はレベル3以上の割合・29歳以下の割合・平均勤続年数
採点されるのは、いま在籍している人の構成です(見える化評価は、認定された12職種の会社が申請して受ける任意の制度です)。

ひとつは、賃金です。国土交通省は、公共事業労務費調査(令和7年10月調査)をもとに、CCUSのレベル別の年収を示しています。

全国のレベル1が標準値395万円、レベル4が標準値572万円。差は177万円です。これは実際に支払われている年収の統計ではありません。公共工事設計労務単価をもとに、所定の労働日数ぶん支払われた場合を試算した目安で、支払いを義務づける金額でもありません。

レベル別の年収と人事評価のつなぎ方は建設業の人事評価制度に詳しく書きました。

もうひとつは、受注です。専門工事企業の「見える化」評価制度というものがあります。評価基準が認定された12職種の会社が申請して受ける、任意の制度です(2024年1月に圧入が加わって12職種になりました)。会社を☆〜☆☆☆☆の4段階で評価します。その評価内容に、こう書かれています。

評価内容に入っているもの
レベル3以上の技能者数の割合
29歳以下の割合、平均勤続年数
建設キャリアアップカードの保有者数
保有する建設機械の台数/社会保険の加入状況/処分歴 など

「レベル3以上が何割いるか」「29歳以下が何割いるか」「何年続いているか」。つまり、この評価を受けた会社では、いま在籍している人の構成が、発注者と元請に見える形で採点されます。

ただし、採点されているのは「自社で育てた数」ではありません。よそで育った熟練者を採用しても、同じように数に入ります。それでも、育てて残した人は顔ぶれに残ります。育成は、この採点に効く数少ない手のひとつです(対象の職種で、評価を受けた場合です)。

4つのじんざいに、それぞれ違う手を打つ

戦略はいたってシンプルです。まず自社をこの4つに落とし、それぞれに合わせたフォローをします。

人財人在人材人罪それぞれに打つ手と、建設業での具体策
同じ手を全員に打たない。それだけです。
相手 打つ手 建設業での具体
人財 目標を合意したうえで、いっぱい任せる 登録基幹技能者(レベル4)へ。職長・安全衛生責任者の役割も渡す
人在 やる気を上げながら、指示を出し続ける レベル2・3の能力評価を受けさせる。資格が処遇に変わる筋道を見せる
人材 スキルの訓練をする 就業履歴をCCUSに溜める。技能講習・一級技能士へ順番に
人罪 やる気と訓練の両方。どうしても動かなければ、別の道を 配置転換を先に試す。安全に関わる場面では先送りしない

分類は固定ではありません。人財と言われる人をヘッドハンティングで採っても、新しいことに挑戦しないまま時間が経てば人在に落ちます。人在も、昔の実績だけで挑戦をやめれば、技能が古くなります。景気が良いうちは仕事が回ってくるので見えませんが、悪くなって仕事が減った途端に、人罪に変わります。

景気の悪化で仕事が減っただけの人を、人罪に動かしてはいけません。動くのは、技能が古くなった人です。

逆も起きます。人の入れ替えや環境の変化で、人在から人財に上がる人もいます。だから、年に一度は数え直す必要があります。

4つではなく6つで見る、という切り方もある

4分類は「マインド × スキル」の2×2です。これを「マインドセット × パフォーマンス」の2×3で見る切り方もあります。絆徳の経営スクール(MBS4)が、採用の章で示している「6つタイプの『じんざい』」です。

マインドセット3段と成果2列で人材人財人在人才人罪人済に分かれる6分類の表。4分類との違いは段の数・人才と人済の箱・人在の置き場所の3つ
出典の図をもとに、当社で組み直したものです。

縦軸は価値観があうか、成長と貢献の意識が高いか(マインドセット)。横軸は仕事の成果・貢献が大きいか(パフォーマンス)。マインドセットが高い順に3段、成果の大小で2列に分かれます。入社は左上の「人材」から入る、という置き方です。

マインドセット 成果・貢献が小さい 成果・貢献が大きい
高い(上段) 人材(入社はここから) 人財
中くらい(中段) 人在 人才
低い(下段) 人罪 人済

※この表は、出典の図をもとに当社で組み直したものです。

4分類との違いは3つです。ひとつは、マインドの段が2段から3段になっていること。ふたつめは、別の箱が2つ立っていることです。

みっつめは、「人在」の置き場所が動いていることです。4分類の人在は、マインドが低くスキル・成果が高い人でした。6分類の人在は、マインドセットが中くらいで成果・貢献が小さい人になります。同じ名前で中身が違います。2つの表を並べて読むときは、ここだけ気をつけてください。

「人才」は、成果は出すがマインドセットが中くらい。「人済」は、成果・貢献は大きいが、マインドセットが低い。ここでいうマインドセットは、価値観が合うか、成長と貢献の意識が高いかです。4分類を6分類に拡大したのではなく、切り方そのものが違います。

この図が置かれているのは、育成の章ではなく採用の章です。入社した人がよい人財になるかどうかは、入口の時点から意識しておくこと。将来の「よい人財」の像を持たないまま「よさそうな人」を採ってしまうのが、よくある失敗。教育・配置・評価を含めて人事制度を整え、人済や人罪が生まれない仕組みと意識をつくる。そういう読み方をします。

建設業で効くのは、「人才」と「人済」を、成果だけで一緒にしないという点です。どちらも数字は出します。違うのは、価値観が合うか、成長と貢献に向いているか、のほうです。

成果が出ているうちは、この差は見えません。代表の経験では、差が出るのは若手に教える場面、安全で手を抜かない場面、段取りを他人のために組む場面です。新しく採った人が見ているのも、たいていそこです。(いずれも出典の図に書かれている内容ではなく、当社の見立てです)

絆徳の図が育成の章ではなく採用の章に置かれているのは、この差が入口から効くからだと読めます。

出典: 絆徳の経営スクール MBS4「絆徳の人事 5つの主要実務/1)採用」。なお、一般に流通している6分類は「人才」ではなく「人災」を含む別系統です。ここでは絆徳の定義に従っています。

ブラジルでは、資格が処遇にそのまま出る

代表の佐藤 望は、ブラジルに5年住み、現地で事業を立ち上げました。ブラジルでは、高校を出たあと働き、お金をためながら夜間の大学に通う人が多い。代表が見たかぎりでは、小学校から大学まで一直線に進む人のほうが少ないくらいでした。

理由ははっきりしています。大学卒と高校卒で、給与も手当も肩書きも違うからです。だから、働きながら大学に通う。

日本の建設業は、長いあいだそうではありませんでした。資格を取っても、手当が少し付くだけ。いま、CCUSのレベルと年収の目安が国から示されたことで、この国の建設業も「資格が処遇に出る」側へ動き始めています。

人生100年時代で、「学ぶ→働く→余生」から「学ぶ+働く」が一体になっていくと言われます。その受け皿が、建設業ではCCUSのレベルという形で先にできた、と見ることもできます。

じんざいの分類は、3つの軸すべてに効く

当社の統合最適化メソッド(人材育成 × DX推進 × 収益改善)で整理します。

人材育成 — 「いい人がいない」が、数字の話になる

4つに分けて数えた瞬間、議論が変わります。「人財が2人、人在が6人、人材が4人」と言えれば、次に何をするかが決まります。「いい人がいない」からは、何も決まりません。

DX推進 — 数え直しを、手作業でやらない

CCUSには、就業履歴も資格も溜まっています。レベル別の人数は、システムから数えられます。社内の評価と突き合わせれば、「人在だと思っていた人が、実はレベル3を取れる」が見つかります。

収益改善 — 人の顔ぶれが、受注の機会につながる

見える化評価は、レベル3以上の割合と29歳以下の割合を数えます。評価を受けた会社では、人の構成がそのまま会社の採点に乗ります。

ただし、評価を受けたから受注できる、という制度ではありません。国土交通省は「自社の施工能力等を発信し、受注機会や入職者確保につなげる環境づくり」と説明しています。受注の条件になるかどうかは、発注者の入札参加資格や元請の選定基準しだいです。教育費は、その発信材料への投資だとお考えください。

自社の人を4つに分けて数え、来期の打ち手を1枚にするところまでご一緒します(毎月5枠)

まとめ

  • じんざいは、マインドとスキル・成果の2軸で人財・人在・人材・人罪の4つに分かれる。代表の経験では人材と人在が8割ほど、人財と人罪が2割ほど(統計ではありません)
  • 分類は固定ではない。挑戦をやめた人財は人在に落ち、挑戦をやめて技能が古くなった人在は、景気が悪くなった途端に人罪に変わる。年に一度は数え直す
  • 建設業は就業者478万人・技能者296万人。55歳以上が36.6%、29歳以下が11.9%(令和7年・国土交通省)
  • CCUS登録は189万人(技能者の約64%・2026年7月末)。レベル別の合計190万8,307人のうち91.2%がレベル1(2026年8月31日・建設業振興基金)
  • レベル別年収は全国のレベル1が標準値395万円、レベル4が標準値572万円(公共事業労務費調査 令和7年10月調査ベース。実収入の統計ではなく、労務単価をもとにした試算の目安)
  • 専門工事企業の見える化評価は、レベル3以上の割合・29歳以下の割合・平均勤続年数を採点項目にしている。評価を受けた会社では、いまの人の構成が発注者・元請に見える点数になる(受注の条件を定める制度ではなく、受注機会につなげる発信の仕組み)
  • 打ち手は4つ。人財は任せる、人在はやる気を上げて指示を出し続ける、人材は訓練する、人罪は両方
  • 絆徳の経営スクール(MBS4)は、これを「マインドセット × パフォーマンス」の2×3=6分類で見る。人才と人済という別の箱が立つ。拡大ではなく、切り方が違う
  • 「人済」は、成果・貢献は大きいがマインドセットが低い箱。成果が出ているうちは「人財」と見分けがつかない
  • まず経営者自身が人財であること。隗より始めよ

「いい人がいない」と言っているあいだは、何も動きません。4つに分けて数えるところからです。今日、自社の名簿を4つに分けてみるだけで、来期にやることが決まります。

本記事は制度の一般的な内容をお伝えするものです。能力評価やCCUSの手続きについての個別の判断は、各能力評価実施団体や建設業振興基金にご確認ください。

出典

出典はいずれも 2026年9月21日時点で公式サイトを確認しています。

監修

佐藤 望

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化メソッド)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180 へ。あわせて職長教育とは・建設業の求人もどうぞ。


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じんざいの4分類と6分類。分け方は当社の見方。CCUS登録189万人(2026年7月末)、レベル別の合計190万8,307人のうち91.2%がレベル1(8月31日)、レベル別年収の標準値の差177万円

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