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Newspicks認定エキスパートに就任いたしました。                              「DX認定事業者」に認定されました。

ゼネコン3社のDX投資3,200億円|中小の勝ち筋はどこか

ゼネコン3社のDX投資3,200億円 中小の勝ち筋

「大手はAIに何百億も突っ込んでいる。うちみたいな会社が今から何をやっても無駄ではないか」——DXの話をすると、建設会社の経営者からこの言葉が返ってくることがあります。

金額だけを見れば、その感覚は正しいと言えます。スーパーゼネコン各社の中期経営計画を読むと、技術開発とデジタルに投じる金額は3か年で数百億から千億円規模。中小建設業が同じ土俵に立つことは、金額の面では不可能です。

しかし、投資額が大きい会社ほど成果が出ているかというと、そうではありません。むしろ大手ほど「導入したのに使われない」という問題を抱えています。本記事では、まず大手が実際にいくら投じているのかを公式資料の数字で確認し、そのうえで中小建設業がどこで勝てるのかを整理します。結論は「投資額では勝てないが、届く速さでは勝てる」です。

目次

まず事実——大手3社は3か年でいくら投じるのか

推測を交えず、各社が公表している中期経営計画(2024〜2026年度)の数字だけを並べます。

会社技術・デジタル関連の投資(3か年)投資総額(3か年)
大成建設技術開発・DX投資 1,250億円(ほかに人的資本投資350億円、新たなビジネスモデル関連投資100億円)3,500億円(M&A投資は別枠)
清水建設生産性向上・研究開発 850億円(最先端技術・機械の開発、デジタル関連投資)3,600億円(M&Aなどは別枠)
鹿島建設R&D投資 600億円+デジタル投資 500億円1兆2,000億円程度(うち国内外の開発事業投資9,500億円)

(出典:各社の中期経営計画。いずれも2024年5月公表の公式資料から抜粋)
※「投資総額」は各社で対象範囲が異なります。鹿島建設の1兆2,000億円程度には国内外の不動産開発事業投資9,500億円が含まれており、大成建設・清水建設の金額はM&A投資を別枠としたものです。総額どうしの単純比較はできません。本記事で比較しているのは、左列の技術・デジタル関連投資です。

スーパーゼネコン3社の技術・デジタル投資 2024-2026年度3か年
図1:スーパーゼネコン3社の技術・デジタル投資(各社中期経営計画より作成)

技術・デジタル関連だけを足すと、3社で3か年3,200億円。しかもこれは増加の途中です。鹿島建設はデジタル投資を前中期計画の410億円から500億円へ増額し、計画のなかで生成AIの活用による業務効率化を明記しています。

この数字を前に「うちには関係ない」と閉じてしまうか、「では自分たちはどこで勝つのか」と問い直せるかが、5年後の差になります。

大手は、その金額を何に使っているのか

金額だけを見ても自社の判断材料にはなりません。中身を見ると、投資先は大きく2つに分かれています。

① 現場の自動化・遠隔化

人が立ち入る回数そのものを減らす方向の投資です。重機の自動運転、遠隔操作、施工データの自動計測。人手不足が構造的で、猛暑や災害で現場に人を置けない日が増えている以上、ここは避けて通れません。

この領域は装置産業に近く、開発費も設備費も大きい。中小が独自開発で追いかける領域ではありません。ただし、大手が開発した技術は数年遅れで製品化され、レンタルやサービスとして中小にも降りてきます。自社で作るのではなく、降りてきたときに即座に使える体制を作っておくのが正しい構えです。

② 間接業務の効率化(生成AI)

こちらは中小にとって本命です。鹿島建設は中期経営計画のなかで、生成AIの活用による業務効率化を明記しています。書類作成、議事録、社内手続き、図面や仕様の検索——現場ではなく事務所で起きている時間の消費を削る領域です。

この領域は、①と違って初期投資がほとんど要りません。月額数千円のツールと、使い方を決める意思決定だけで始められます。大手と中小の投資額の差が、最も成果の差につながりにくい領域がここです。だからこそ、中小が最初に手を付けるべきはここになります。

投資額と成果は比例しない——AI疲れの谷

ここからが本題です。金額を投じれば定着するなら話は簡単ですが、現実はそうなっていません。ツールを入れた会社ほど、ある時期に必ず失速します。私はこれを「AI疲れの谷」と呼んでいます。

AI疲れの谷の構造 焚き火期・谷・定着
図2:AI疲れの谷——投資額と定着は比例しない

第1期:焚き火期

導入直後は、一部の社員が面白がって使い始めます。期待が最も高い時期で、経営者から見ると「うまくいっている」ように見えます。ここで安心してしまうのが最初の落とし穴です。

第2期:AI疲れの谷

ツールが増え、使い分けと確認の手間が積み上がります。「結局、前のやり方のほうが早い」という声が出始め、使う人と使わない人に分かれる。多くの会社がここで止まります。

重要なのは、この谷は失敗ではなく、通過点だということです。谷が来ることを知らずに入ると「うちには向いていなかった」で終わりますが、来ると分かっていれば越え方を準備できます。

第3期:定着

業務の型が決まり、使うことが当たり前になる段階です。ここで初めて、投資が利益に変わります。逆に言えば、谷を越えられなかった投資は、金額の大小にかかわらず一円も回収できません。

大手と中小では、谷に落ちる理由が違います。大手は部署ごとに別のツールが入り、全社で使い方が揃わない。決めてから現場に届くまでの階層が多く、伝言の途中で目的が抜け落ちます。一方、中小は導入して終わりにしてしまう。誰がいつ使うかを決めないまま、成果が出ないと次のツールを足してしまう。

中小の勝ち筋は「届く速さ」

では中小はどこで勝つのか。答えは、金額でも技術力でもなく意思決定から現場に届くまでの距離です。

従業員10人の会社なら、社長が決めた翌日に全員へ届きます。全員の顔と業務が見えているので、使っていない人がいればその日に分かる。1万人の組織にこの速さはありません。これは規模の小ささが生む、数少ない構造的な優位です。

加えて、中小は業務が単純です。大手は案件ごとの例外が多く、標準化そのものに時間がかかります。扱う工種と取引先が限られている会社ほど、業務の型を決めやすい。AIは例外が少ない業務ほど成果が出ます。この点でも中小には分があります。

測る指標も変えるべきです。投じた金額ではなく、1人あたりの変化量で見る。10人の会社で1人あたり1日30分が浮けば、月に約100時間です。この規模感なら、投資額が二桁違っても勝負になります。

自社の現在地を確かめたい場合は、毎月5社までの無料の経営相談でご相談ください。どの業務から手を付けるべきかを、決算と受注状況から一緒に判断します。

大手が取りこぼす領域が、中小の商機になる

もう一つ、金額の話とは別の観点があります。大手の投資は大規模案件を前提に設計されているため、そこから外れる領域が必ず残ります。

第一に、小規模改修と維持管理です。1件あたりの金額が小さく、現場が分散し、条件が案件ごとに違う。大規模案件向けに最適化された仕組みほど、この領域では扱いにくくなります。一方で老朽化したインフラと建物の維持管理需要は増え続けており、市場としては拡大しています。

第二に、発注者との距離です。地場の建設会社は、施主や地域の元請と直接つながっています。要望を聞いてから提案までの時間が短い。この距離の近さは、システム投資では買えません。むしろAIで事務作業を削れば、その時間を発注者との対話に振り向けられます。

第三に、多能工的な人の使い方です。少人数で複数の役割をこなす体制は、大組織では作れません。1人が見積も現場も請求も見ている会社なら、業務のつながりが1人の頭の中で完結しており、AIに任せる範囲を決めるのも早い。人手不足への対処としても、この構造は強みになります(人手不足を経営改善で解決する方法)。

つまり中小が狙うべきは、大手と同じ土俵で効率を競うことではなく、大手の仕組みが届かない領域で、意思決定の速さを武器にすることです。時間外労働の上限規制への対応も、この構えで考えると打ち手が変わります(2024年問題)。

谷を越えるための3ステップ

中小が谷を越えるための3ステップ
図3:中小が谷を越えるための3ステップ

STEP1:1業務・1ツールに絞る

同時に3つ入れないことです。最も時間を食っている業務を1つ選び、そこにツールを1つだけ当てる。候補は写真整理、日報、見積の下書き、議事録あたりです。比較検討に3か月かけるより、決めて始めて3か月使うほうが、得られる情報ははるかに多い。どの業務が重いかの判断材料は業務効率化の5つの改善手順が参考になります。

STEP2:誰がいつ使うかを決める

「使ってみて」では定着しません。担当者・使う場面・使う頻度を、業務の手順書に書き込むところまでやる。そして使わなかった週があれば、責めるのではなく理由を聞く。谷で脱落する会社は、ここを飛ばしています。

STEP3:3か月で残すか捨てるか決める

効果が出なければ捨てる。そして捨てた事実を記録する。これをやらないとツールだけが増え、谷から出られなくなります。捨てる判断ができる会社だけが、次の一手を打てます。

この3ステップは、AI以前のIT導入でも同じでした。違うのは、AIは使う人の判断が結果を大きく左右する点です。だからこそ、道具を選ぶことより、使う場面を決めることに時間をかけるべきです(AI導入の落とし穴、任せられる仕事30選)。

統合最適化の視点——3軸で回すから谷を越えられる

谷を越えられる会社と越えられない会社の差は、AIを1つの軸だけで捉えているかどうかにあります。

人材育成の軸。ツールを使いこなす過程そのものが教育です。若手が先に覚えてベテランに教える構図をつくれると、技術伝承の逆流も起きます(技術伝承×AI)。

DX推進の軸。1業務で成果が出たら、隣接業務へ横展開する。最初から全社最適を狙わない。国土交通省が進めるi-Construction 2.0も、現場の省人化を積み上げる発想です。

収益改善の軸。浮いた時間を何に振り替えるかを決めておく。残業削減で終えるのか、受注を増やすのか、価格交渉の準備に充てるのか。ここを決めていないと、時間が浮いても利益になりません(一人当たり付加価値の高め方)。

3軸を同時に回すと、投資額の差は埋まりませんが、回収の速さでは大手を上回れます。これが中小の現実的な勝ち方です。

よくある質問

Q1. 大手と同じツールを使う必要がありますか。

ありません。大手が導入するシステムは、数千人規模の組織や大規模プロジェクトを前提に設計されています。10〜50人の会社には過剰で、かえって使いこなせません。自社の業務の型に合うものを選ぶほうが、定着は速くなります。

Q2. AI疲れの谷は、どのくらいの期間で来ますか。

導入から数か月で兆候が出ることが多いですが、期間は会社の規模と業務量で変わります。重要なのは時期の予測ではなく、「必ず来るものとして事前に社内へ伝えておく」ことです。予告しておけば、谷に入ったときに「想定どおり」と受け止められます。

Q3. 投資額が小さくても成果は出せますか。

出せます。ただし条件があり、対象業務を絞ること、使う場面を決めること、成果が出なければ捨てることの3点を守れる場合に限ります。金額の大小より、この3点を実行できるかどうかが結果を分けます。

まとめ

  • スーパーゼネコン3社は2024〜2026年度の3か年で、技術・デジタル関連に合計3,200億円規模を投じる計画(大成 技術開発・DX投資1,250億円/清水 生産性向上・研究開発850億円/鹿島 R&D600億円+デジタル500億円)
  • 鹿島はデジタル投資を前中計の410億円から500億円へ増額し、生成AIの活用による業務効率化を計画に明記している
  • しかし投資額と定着は比例しない。導入した会社は必ず「AI疲れの谷」を通る。谷を越えられなければ、金額の大小にかかわらず回収できない
  • 中小の勝ち筋は投資額ではなく、意思決定から現場に届くまでの距離の短さ。1業務1ツール→誰がいつ使うか決める→3か月で残すか捨てるか決める、の3ステップで谷を越える

大手と同じ土俵に立つ必要はありません。自社の規模だからこそ使える速さを、どの業務に向けるか。そこを決めるところから始めてください。判断に迷われる場合は、毎月5社までの無料の経営相談でご相談ください。決算書と受注状況をもとに、最初の1業務を一緒に決めます。

出典


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【執筆・監修】株式会社アプリバンク 代表取締役 佐藤 望

建設業専門の経営コンサルタント/建設業界30年(現場〜本社財務、海外5カ国の施工経験)。独自メソッド「統合最適化(人材育成 × DX推進 × 収益改善)」で、建設業の経営改善を一気通貫で支援。経済産業省「DX認定事業者」(2026年6月認定)。

お問い合わせ・無料相談:株式会社アプリバンク 公式サイト / 最終更新: 2026年7月31日


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