監修: 代表取締役 佐藤 望(建設業界30年・建設業経理士1級/記事末に経歴)
最終確認日: 2026年10月31日(条文と通知は、この日に国土交通省とe-Govの原文で確かめました)
この記事は、従業員10〜50人ほどの建設会社で、公共工事の元請や一次下請として現場を持つ社長と工事部長に向けて書いています。毎日、工程表を見ながら職人と重機の手配を組み直している方です。
雨が続いた。猛暑で昼に作業を止めた。図面と現場が合わなかった。それでも工期は動かず、土曜出勤と残業で埋めていませんか。
令和8年4月1日以後に入札公告された国の直轄工事から、週休2日の費用の上乗せが無くなりました。
この記事の結論は1つです。自社のせいではない遅れは、理由を書いた書面で、工期の延長を求めます。口で頼むのでも、黙って埋めるのでもありません。
結論: 上乗せは消えた。残ったのは「延長を求める書面」
国土交通省は、令和8年3月10日の通知で、週休2日の費用の上乗せを終えました。通知はこう書いています。
「これまで実施してきた週休2日の取得に要する費用の計上等による試行は完了とし、今後は費用計上等を実施しないものとする。」
(出典: 国土交通省「国土交通省直轄工事における週休2日の取組方針について」令和8年3月10日)
対象は国交省の直轄工事(官庁営繕・港湾空港を除く)で、令和8年4月1日以後に入札公告された工事からです。それより前の公告は前の通知のままです。
同じ通知の「多様な働き方の支援」の項に、次の一文があります。
「発注者は、施工期間・時間等の変更について受注者から協議があった場合には、丁寧に協議に応じるものとする。」
(出典: 同上の通知 3.)
この一文は、働き方を選ぶための協議の話です。延長の根拠は次の節の約款で、通知は直轄工事で協議に入るときの後押しです。
| 令和8年4月以後に公告された直轄工事 | どうなったか |
|---|---|
| 週休2日の費用の上乗せ | 終わった(月単位の週休2日なら、労務費1.02倍などの補正があった) |
| 週休2日の取り組み方 | 週休2日や交替制など、現場に合う方法で |
| 施工期間・時間の変更の協議 | 受注者から申し出れば、発注者は丁寧に応じる |
上乗せが無くなった経緯は、建設業の週休2日|令和8年度で費用計上は終了にまとめています。
根拠は3つ: 2つの約款と建設業法
延長を求めるときは、根拠を書面に書きます。使える根拠は、次の3つです。
| 根拠 | 中身 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 公共工事標準請負契約約款 第22条 | 自社のせいでない理由で工期内に終わらないとき、理由を書いた書面で延長を求められる | 標準約款を使う公共工事(元請) |
| 建設工事標準下請契約約款 第19条 | 自社のせいでない理由や正当な理由で終わらないとき、遅滞なく、理由を書いた書面で元請に延長を求められる。延長の日数は協議で決める | 標準約款を使う下請工事 |
| 建設業法 第20条の2 | 主要な資材の供給の著しい減少や、資材の価格の高騰など、省令で決まった事象のおそれがあると認めたら、契約前に、状況が分かる情報を添えて決まった方法で注文者に通知する(義務)。通知していれば、起きた後に工期の変更の協議を申し出られる | 資材の不足・高騰などが契約前から見えている工事 |
国交省の直轄工事なら、第22条の書面に令和8年3月10日の通知を添えると、協議に入りやすくなります。
(出典: e-Gov法令検索「建設業法」第20条の2)
約款は、中央建設業審議会が作った「ひな形」です。実際の契約書がこのとおりとは限りません。まず、自社の契約書の中に同じ条があるかを見ます。
公共約款の第22条は、こう書いています。
「受注者は、天候の不良、第二条の規定に基づく関連工事の調整への協力その他受注者の責めに帰すことができない事由により工期内に工事を完成することができないときは、その理由を明示した書面により、発注者に工期の延長変更を請求することができる。」
(出典: 中央建設業審議会「公共工事標準請負契約約款」第22条)
大事なのは「書面」の一語です。口で頼むだけでは、この条を使ったことになりにくいのです。
同じ条の2項は、必要と認められるときは発注者が「工期を延長しなければならない」と書いています。発注者のせいの遅れなら、代金の変更もあります。

延長を求められる遅れ、求めにくい遅れ
求められるのは、自社のせいではない遅れです。工事が遅れたら、まず原因を2つに分けます。
| 遅れの原因 | 延長を求められるか | 根拠・書面に添えるもの |
|---|---|---|
| 雨・雪で作業が止まり、工期内に終わらなくなった | 求められる | 約款第22条「天候の不良」。日ごとの天気と作業の記録。見込みの日数との比べ |
| 猛暑で作業を止め、工期内に終わらなくなった | 求められる | 約款第22条「天候の不良」。日ごとの暑さ指数(WBGT)と作業の記録。見込みの日数との比べ |
| 図面と現場が合わなかった | 求められることがある | 約款第18条で監督員に通知した記録と日付。設計図書が直されたら、同条5項で発注者が必要に応じて工期を変える |
| 発注者が別に発注した工事の調整を待った | 求められる | 約款第22条「関連工事の調整への協力」。待った日数 |
| 元請が手配したほかの業者の遅れで、下請が待った | 求められることがある | 下請約款第19条「正当な理由」。待った日数と元請への連絡の記録 |
| 資材が入らなかった | 求められることがある | 契約前に、主要な資材の不足や価格の高騰のおそれを決まった方法で通知していれば建設業法第20条の2。下請約款第19条にも書かれている |
| 自社の段取り・人の手配の遅れ | 求めにくい | 自社のせい。延長より、工程の組み直しで取り返す |
約款第22条の条件は、天候の不良など自社のせいでない理由で、工期内に終わらなくなったことです。そのことを示すいちばん分かりやすい材料が、工期を決めたときに見込んだ日数との比べです。猛暑の日数をどう見込むかは、工期に関する基準が参考になります。国交省の土木工事では、午前8時から午後5時までに暑さ指数が31以上になった時間を集め、1日8時間で日数に直して、作業できない日に入れています。
(出典: 中央建設業審議会「工期に関する基準」)
まず契約のときに何日を見込んでいたかを確かめ、実際に止めた日と比べます。見込みの日数の内でも、大事な工程の時期に重なって完成が遅れることはあります。どちらの場合も、延長日数は止めた日数そのものではなく、止まった作業が完成日をどれだけ後ろにずらしたかを工程表で示します。
図面と現場が合わないときは、約款第18条で「直ちに監督員に通知」することになっています。調べた結果、設計図書が直されたり変えられたりしたら、同じ条の5項で、発注者は必要に応じて工期や代金を変えます。通知の日付が記録に残っていると、協議で日数を話すときの手がかりになります。
記録は、遅れたその日に残します。月末にまとめると、どの日が何のせいか分からなくなります。

書面に書く5つのこと
延長を求める書面は、長くなくてかまいません。次の5つが入っていれば、相手は判断できます。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 1 工事名と、今の工期 | ○○線道路改良工事。工期は令和8年12月25日まで |
| 2 遅れの理由(自社のせいでないこと) | 8月に暑さ指数31以上で作業を止めた日が見込みより多く、工期内に終わらなくなった |
| 3 その裏付け | 日ごとの暑さ指数と作業の記録。見込みの日数が分かる資料。変更前と変更後の工程表 |
| 4 求める延長の日数と、その数え方 | 見込みを超えて止めた日のために、工程表で完成日が6日後ろにずれた。6日分の延長を求める |
| 5 根拠の条 | 契約書(約款)の第22条。直轄工事なら、令和8年3月10日の通知を添えてもよい |
例の数字は仮のものです。

気をつける点は2つです。1つ目は出す時期で、下請約款第19条は「遅滞なく」と書いています。遅れが分かった時点で出します。
(出典: 中央建設業審議会「建設工事標準下請契約約款」第19条)
2つ目は、延長で増える費用です。工期に関する基準は、リース料の延長や、短い期間で仕上げるための人件費などを挙げています。必要なら、代金の変更も一緒に書きます。
延長に伴う代金の変更は、公共約款なら第22条2項(発注者のせいの遅れのとき)、下請約款なら第19条2項(必要と認められるとき)の協議で求めます。資材の値上がりで代金を変える話は別の条で、スライド条項とは|資材高騰は交渉ではなく請求で通す3つの条項で書いています。
協議が整わないとき、下請に回すとき
書面を出したら、次は協議です。公共約款第24条は、工期の変更は発注者と受注者が協議して決めると書いています。
協議を始める日は、発注者が受注者の意見を聴いて決めます。第22条の書面のときは、発注者が書面を受け取った日から決められた日数のうちに、協議を始める日を知らせます。知らせが無ければ、受注者が決めて知らせることができます。
協議を始めた日から決められた日数のうちに整わなければ、発注者が決めて知らせます。日数は契約書の空欄に書き入れる形なので、自社の契約書で確かめます。
同じ条の3項は、協議が整わなかったことや、受注者があっせん・調停を求めたり仲裁を申し立てたりしたことを理由に、受注者を不利に扱ってはならないと書いています。
(出典: 公共工事標準請負契約約款 第24条)
| 段階 | 誰が | 何をする |
|---|---|---|
| 1 書面を出す | 受注者 | 理由と日数を書いて延長を求める |
| 2 協議を始める日を決める | 発注者(遅れれば受注者) | 決めて相手に知らせる |
| 3 協議 | 両方 | わけを示し合い、対等に話す |
| 4 整わないとき | 発注者 | 決めて知らせる。整わなかったことを理由に不利に扱わない |
| 5 下請に反映 | 元請 | 変わった工期と代金を、下請の契約にも反映する |
元請の方は5番目を忘れずに。工期に関する基準は、発注者と変えた条件を「適切に元下間の契約に反映させなければならない」と書いています。
工期そのものの考え方や、短すぎる工期の禁止は、適正工期とは|短い工期は受けた側も違反になるをご覧ください。
統合最適化メソッドで見る: 人・DX・収益、そして今日やること
| 軸 | 何をするか | 効くところ・測るもの |
|---|---|---|
| 人材育成 | 職長と若手の現場担当に、遅れの原因を毎日2つに分けて書く習慣をつける | 延長を求める書面を、現場から上げられる人が増える |
| DX推進 | 日報アプリに「天気・暑さ指数・止めた時間・原因」の欄を足す | 月末に探さずに、書面の裏付けがそろう |
| 収益改善 | 延長で減った土曜出勤・残業の時間と、延長で増えた現場管理費・リース料、認められた代金の変更を、現場ごとに並べる | 延長が、人で埋めるより安く済んだかが見える |
現場の毎日の記録が書面の裏付けになり、延長が認められれば、土曜出勤を減らす工程に組み直せます。
今日できることは、次の3つです。
- 今動いている現場の遅れを書き出し、「自社のせい」と「そうでない」に分ける
- 自社の契約書に、約款第22条(下請なら第19条)と同じ条があるかを見る
- 「そうでない」遅れについて、5つの欄を埋めた書面を1枚下書きする
今の現場で、どの遅れが延長を求められるかを一緒に仕分けることもできます。アプリバンクの無料経営相談(60分・毎月5社まで)をご利用ください。
よくある質問
Q. 民間工事や市町村の工事でも、延長を求められますか
契約書しだいです。民間や自治体の工事は、契約書に延長を求める条と、書面で求める決まりがあるかを確かめます。
Q. 口で監督員に伝えてあれば、書面は要りませんか
約款は「書面」で求めると書いています。口で伝えた後でも、書面で出し直します。公共約款では、発注者が書面を受け取った日から、協議を始める日の知らせまでの日数を数えます。
Q. 延長を申し出ると、次の入札で不利になりませんか
公共約款第24条3項が禁じているのは、協議が整わなかったことや、あっせん・調停・仲裁を求めたことを理由に、受注者を不利に扱うことです。次の入札の評価まで定めた条ではありません。
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出典一覧(取得日 2026-10-31)
- 国土交通省「国土交通省直轄工事における週休2日の取組方針について」(令和8年3月10日 国会公契第21号・国官技第492号): https://www.mlit.go.jp/tec/content/001987377.pdf
- 国土交通省「工事における週休2日の取得に要する費用の計上について(試行)」(令和7年3月12日・廃止済み): https://www.mlit.go.jp/tec/content/001978965.pdf
- 中央建設業審議会「公共工事標準請負契約約款」(令和7年12月2日改正): https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499463.pdf
- 中央建設業審議会「建設工事標準下請契約約款」(令和7年12月2日改正): https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001329293.pdf
- 中央建設業審議会「工期に関する基準」(令和6年3月27日最終改定): https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001735066.pdf
- e-Gov法令検索「建設業法」第19条・第19条の5・第20条の2: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
本記事は一般的な情報提供です。個別の契約の解釈は、契約書の原文を確かめたうえで、弁護士や発注者の窓口にご確認ください。
更新履歴: 2026-11-02 公開/2026-11-02 通知を添える所の書き方と、労務費1.02倍の出典を直しました
監修

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。
保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。
株式会社アプリバンクは、経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化メソッド)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180 へ。
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