建設業の働き方改革といえば、この数年は「週休2日」でした。4週8休を満たせば費用が上乗せされる。そういう仕組みで進んできました。
その仕組みが、令和8年度で終わりました。
国土交通省が令和8年3月10日に出した通知に、こう書かれています。「これまで実施してきた週休2日の取得に要する費用の計上等による試行は完了とし、今後は費用計上等を実施しないものとする」。
ただし、これは「休まなくていい」という話ではありません。むきは変わっていません。変わったのは、休みを支える手段のほうです。この記事では、何が終わって何がのこったのか、そして手元の工事をどう仕分けるのかをお伝えします。
令和8年度から、週休2日の費用計上は終了した

まず、どの工事の話なのかをはっきりさせます。
対象は国土交通省の直轄工事です。ただし官庁営繕関係と港湾空港関係は除かれます。自治体の工事や民間工事は、この通知の対象ではありません。そこははじめにおさえてください。
適用は令和8年4月1日以降に入札公告等を行う工事からです。つまり、いま動いている工事のうち、公告が令和8年3月31日までのものは、これまでどおりです。
取組の方針は、こう書かれています。「地域の実情や現場の状況等を踏まえ、週休2日や交替制など、適切な方法により取り組むものとする」。休み方を一つに決めるのをやめ、現場ごとに選ばせる形になりました。
そして費用です。試行は完了。今後は費用計上等を実施しない。ここが実務にいちばん効きます。
無くなったのは、この6本の通知

おなじ通知の附則で、令和7年3月12日付の通知が6本まとめて廃止されました。
費用計上の本体と、その運用。交替制の試行と、その運用。市場単価方式による計上と、土木工事標準単価による計上。この6本です。
ここで大切なのは、廃止のされ方です。「令和8年3月31日までに入札公告等を行う工事については、旧通知による」と、はっきり書かれています。
つまり、公告日で扱いがわかれます。おなじ会社がおなじ時期にもっている2本の工事で、片方は旧通知、片方は新方針、ということが起こります。まずここを仕わけてください。
「週休2日」から「多様な働き方」へ

では、代わりに何が来たのか。
国土交通省は、令和8年度からの考え方をこう説明しています。「多様な働き方の実現に向けた支援に軸足を置くこととし、これまでの週休2日としての働き方の他、気候(猛暑対策等)を踏まえた働き方、変形労働時間制を適用した柔軟な働き方、担い手の多様化に合わせた働き方など、建設産業として多様な働き方の実現に向けた支援を行ってまいります」。
よみかえると、こうなります。「土日に閉所する」だけが正解ではなくなった。猛暑の時期に昼を外す。変形労働時間制で繁閑に合わせる。担い手に合わせて働き方を分ける。どれも認める、というむきです。
現場の実感にちかい変更だと思います。8月に土日を休んでも、平日の炎天下で人はたおれます。休みの日数より、いつ働くかのほうが効く現場はあります。夏季休工と猛暑対策で書いたとおりです。
ここで、よくある勘違いをひとつだけ。
「国が費用を出さなくなったのだから、うちも休みを減らしていい」——これは逆です。お金の出し方が変わっただけで、休ませる向きは、なにも変わっていません。むしろ「多様な働き方」と言いはじめたぶん、やり方の幅は広がりました。
減らしていいのは休みではなく、「土日でなければならない」という思い込みのほうです。うちの現場に合うのは交替制かもしれないし、夏のあいだだけ昼を外すやり方かもしれません。そこを選べるようになった、と読むのが正しいと考えています。
ただし、選べるということは、選んだ結果をじぶんで説明することでもあります。上乗せが自動でついてきた時代は終わりました。
上乗せが消えた分は、どこへ行くのか

ここからが経営の話です。
直轄工事を受ける会社。週休2日を理由にした費用の上乗せは無くなります。でも、休むこと自体はやめません。やめれば人がやめるからです。つまり、その原資を自社の見積で確保する要ります。
下請に入る会社。元請の受注額に上乗せが乗らなくなれば、下請価格に波及する可能性があります。単価だけをまもろうとしても通りません。工期とセットで話すことになります。
公共以外が中心の会社。この通知は直轄工事の話です。自治体や民間の発注者がどうするかは、それぞれの発注者が決めます。「国が費用計上をやめたから」を理由に条件を下げられたら、それは根拠が違います。
そして、使える手が1つのこりました。通知にはこう書かれています。「発注者は、施工期間・時間等の変更について受注者から協議があったときには、丁寧に協議に応じるものとする」。
上乗せが消えたことより、この一文がのこったことのほうが、実務では大きいと考えています。工期の協議を申し出る根拠が、通知の本文にあるということです。口頭で頼むのと、通知を示して申し出るのでは、通り方が変わります。
上乗せが消えた分を、どこで確保するか。ここは会社ごとに答えが違います。
アプリバンクでは、建設業に特化した無料の経営相談を毎月5社まででお受けしています。直近の実行予算と、いま動いている工事の公告日の一覧をおもちください。その場で仕分けまでやります。
今月やること:公告日で仕分ける

やることは4つです。順番も決まっています。
1つ目。手元の工事を、入札公告の日でわけてください。令和8年3月31日までなら旧通知。4月1日以降なら新方針です。これは今週できます。
2つ目。旧通知の工事は、条件を最後までまもります。途中で扱いが変わることはありません。精算の根拠になる記録を、いまのこしておいてください。現場閉所の日数、交替制なら技術者と技能労働者の休日。あとから作れない書類です。
3つ目。新方針の工事は、見積の内訳を作り直します。上乗せを前提にした積算を、自社の原価に戻す作業です。ここを飛ばすと、去年とおなじ感覚で入れて、去年よりうすい利益になります。実行予算の作り方と合わせてみなおすのが近道です。
4つ目。工期の協議を、書面で申し出てください。「丁寧に協議に応じる」が根拠です。口頭で終わらせない。申し出た事実と、回答が残る形にしてください。
1と2は今週。3は次の入札まで。4は協議が要る工事が出てきたときに。ぜんぶをいちどにやろうとしなくてだいじょうぶです。
統合最適化でみると、どう効くのか

アプリバンクは、人材育成・DX推進・収益改善の3つをまとめて動かす「統合最適化メソッド」でご支援しています。この話も、3つでみると打ち手が変わります。
人材育成の面。「多様な働き方」を選べるようになったということは、社内で誰かが選ばなければならないということです。現場ごとに、閉所か交替制か、猛暑の時期をどうするか。これを所長に決めさせる練習にしてください。社長がぜんぶ決めていると、選べる幅が広がったことが、そのまま社長の仕事の増加になります。
DX推進の面。公告日で仕分ける作業は、こんかいだけでは終わりません。工事台帳に「公告日」と「新旧どちらの方針か」の欄を1つ足してください。次からは一覧で出ます。紙のいちらんでやると、らいねんまたおなじてまがかかります。
収益改善の面。上乗せが消えた分は、見積に載せ直すか、原価を下げるか、工期で吸収するかの3つしかありません。どれを選ぶかを、工事ごとに決めます。「なんとなく今までどおり」がいちばんそんをします。
3つはつながっています。台帳に欄を作れば(DX)、所長が現場ごとに選べるようになり(人材育成)、その選択が見積と原価に反映される(収益改善)。別々にやるより、おなじ台帳の上でやるほうがはやく効きます。
まとめ
整理します。
- 令和8年度以降に入札公告等を行う直轄工事から、週休2日の費用計上は実施されない(令和8年3月10日付通知)
- あわせて、令和7年3月12日付の関連通知6本が廃止された
- 令和8年3月31日までに公告した工事は、旧通知のまま。公告日で扱いがわかれる
- 方針は「週休2日」から「多様な働き方」へ。猛暑対策・変形労働時間制・担い手の多様化も含まれる
- 「施工期間・時間等の変更について丁寧に協議に応じる」が通知に明記された。工期協議の根拠になる
- 対象は国交省の直轄工事(官庁営繕・港湾空港を除く)。自治体・民間は各発注者の判断
上乗せが無くなったことを、値引きの理由にされないでください。国が変えたのは支援の方法であって、休ませる方向ではありません。そこをとりちがえると、現場から人がぬけます。
手元の工事が新旧どちらに当たるのか。30分あれば仕分けできます。
建設業に特化した無料の経営相談を、毎月5社まででお受けしています。工事の一覧(公告日つき)と、直近の実行予算をおもちください。その場で、上乗せが消える工事と残る工事をわけてお返しします。
この記事について
執筆:佐藤 望(さとう のぞむ)/株式会社アプリバンク 代表取締役
建設業界での経験は30年。大手ゼネコンでは20年にわたり、現場・財務・人事を横断して担当してきました。海外5カ国での施工経験もあります。現在は建設業に特化した経営コンサルティングを行い、人材育成・DX推進・収益改善を同時に動かす「統合最適化メソッド」を提供しています。
現場と人事の両方をみていた頃、休みを増やす話になると、かならずおなじ順番で詰まりました。さきに決まるのは休みの日数で、あとから来るのが工期と金額です。順番がぎゃくなら、現場はもっと楽に回りました。今回の変更で「協議に応じる」が明記されたことを大きいと書いたのは、そのためです。
お問い合わせ:株式会社アプリバンク/無料経営相談
関連記事
- 建設業の夏季休工|猛暑対策と中小の実務対応
- 建設業の2024年問題|時間外規制の後にのこったもの
- 建設業の手形払い|取適法の禁止と60日ルール
- 建設業の実行予算|工事別の損益を見える化する手順
- 建設業の資金繰り改善|受注産業でお金が回らない理由と打ち手
- 建設業の経営課題|中小がさきに手をつけるべき順番
出典
本記事の内容は2026年8月5日時点の情報にもとづきます。対象は国土交通省の直轄工事(官庁営繕関係および港湾空港関係を除く)です。自治体・民間工事の取り扱いは各発注者の判断によります。個別の工事の適用関係は、入札公告の内容と発注者の指示をご確認ください。
本記事は法令・制度の一般的な内容をお伝えするものです。法令の適用についての個別の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。


