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建退共|経営事項審査15点が付く要件と電子申請

建退共は加入だけでは経営事項審査で加点されないことを示すアイキャッチ

「うちは建退共に入っています」。建設会社の社長さんから、よくうかがうことばです。

ところが、入っているだけでは経営事項審査の15点は付きません。

経審で加点をもらうには、建退共が出す「加入・履行証明書(経営事項審査用)」という決まった様式の証明書を添えることが要ります。これ以外はみとめられません。加入していることと、履行していることは、べつのあつかいだ、ということです。

この記事でお伝えするのは3つです。15点が付く条件。証紙をやめて電子申請へ切りかえる手順。そして、掛金を原価のどこへ入れるか。いずれも公式の資料にあたって書いています。

目次

まず、建退共の中身をそろえておく

建退共の掛金日額320円や共済手帳250日分など制度の基本をまとめた表

建退共は、建設現場ではたらく方のための退職金の仕組みです。中小企業退職金共済法にもとづく国の制度です。運営しているのは、独立行政法人 勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部です。

掛金は1日あたり320円。令和3年10月1日からこの金額です。共済手帳は1冊で250日分(1冊目の掛金助成手帳は200日分)で、貼り終えたら更新します。

退職金がもらえるのは、掛金納付月数が12月以上になってからです。ここは21日分を1か月と換算します。つまり、のべ252日はたらけば12月ぶんになる、というかぞえ方です。

加入できるのは、大工・左官・とび・土工・電工・配管工・現場事務員など、職種を問わず現場ではたらく方です。日給でも月給でも入れます。

ここでよくとりちがえられるのが、入れない人のほうです。役員報酬を受けている方と、本社などの事務専用の社員は加入できません。社長が自分の分も掛けているつもりだった、というお話をうかがうことがあります。ですが、それは制度の外です。

一人親方は、そのままでは入れません。一人親方どうしで任意組合をつくり、機構が規約をみとめたときに、その組合を事業主とみなし、制度が使えるようになります。一人親方とフリーランス新法で書いた区分の話とも、つながるところです。

経審のW1では、建退共と退職一時金は別の項目

経営事項審査W1で建退共加入と退職一時金・企業年金導入が別項目であることを示す比較図

経営事項審査のW評点のうち、W1にあたる部分に「建退共の加入状況」という項目があります。最高15点、最低0点。平成6年から続いています。

そのすぐ下に、「退職一時金もしくは企業年金制度の導入」という別の項目があります。こちらも最高15点、最低0点です。

点数が同じで、ならびも近い。だから、ひとつのものだとおもわれがちです。けれども、この2つはべつべつに評価されます。

そして、建退共では下の項目の加点は取れません。

経審の手引きを見ると、退職一時金制度の証明として出せる書類は3つに限られています。中小企業退職金共済事業本部が出す加入証明書。所得税法施行令第73条第1項の特定退職金共済団体が出す証明書。労働基準監督署長の印のある就業規則か労働協約の写し。この3つです。ここに建退共は入っていません。

つまり、両方の15点がほしいなら、建退共とはべつに退職一時金の制度を持つ必要があります。中退共に入る、就業規則に退職金の規定を置く、といったやりかたです。ここを一本と数えていると、取れるはずの15点をずっと落としたままになります。

あわせて申しあげておくと、W1にはCCUSの導入状況という項目も追加されています。CCUS活用ガイドで書いたとおりで、建退共とCCUSは、経審の上でもならんでいます。

15点が付くのは、証明書を出したときだけ

経営事項審査で建退共の15点が付くまでの4つの手順

では、何を出せばいいのか。

経審の手引きには、こう書かれています。「建設業退職金共済事業加入・履行証明書(経営事項審査用)の写し」を出すこと。そして、「所定の様式による証明書以外の書類は認められません」

この証明書は、審査基準日のある決算期間について、建退共の本部または各支部が出します。共済契約者証のコピーでも、掛金を払った領収書でも代わりにはなりません。

もうひとつ、取りちがえの多いところをお伝えします。建退共の加入・履行証明には、「経営事項審査用」と「一般競争入札参加用」の2種類があります。用途がちがうので、入札のために取った証明書を経審に回すことはできません。申しこむときに、どちらが要るのかをはっきりさせてください。

書類の名前に「加入・履行」と2つ並んでいるのが、この制度のすべてです。契約しているだけでは足りません。その期間に掛金をきちんと納めていたか。そこまで見られます。

建退共は、証明書を出す条件を公表しています。①共済手帳の更新を適正に行っていること。②退職給付拠出額等の総額が、被共済者の就労日数に見合う額であること。③証紙貼付方式の公共工事があるなら、その「工事別共済証紙受払簿」を工事完成後1年間、事務所に備え付けていること。④下請への証紙の交付や掛金の充当が適正に行われていること。この4つです。

いちばん引っかかるのは②です。就労した日数に対して、納めた額が足りていないと出ません。実務ではこんな詰まりかたをします。証紙を買ってはいるが、手帳への貼付が追いついていない。あるいは、下請の分を元請が買ったまま、わたしそこねている。このまま申しこむと、履行の部分でつまずきます。

決算が終わってからあわてても間に合いません。審査基準日は決算日ですから、その期間の納付の実績はもう動かせないからです。期中に、毎月やっておく仕事です。

いま、証明書が取れる状態にありますか。取れないなら、どこで止まっているか。

アプリバンクでは、建設業に特化した無料の経営相談を毎月5社まででお受けしています。直近の経審の結果通知書と、共済手帳の保管状況がわかるものをおもちください。その場で、落としている加点を洗い出します。

証紙をやめる。電子申請とCCUS連携

建退共の証紙貼付方式と電子申請方式のちがいを並べた比較図

掛金の納めかたには、証紙を貼るやりかたと、電子申請のやりかたの2つがあります。

証紙のやりかたは、手間のかたまりです。金融機関の窓口へ行き、共済契約者証を見せて証紙を買う。賃金を払うたびに手帳へ貼って消印する。下請には現物でわたす。受払簿をつくって在庫をあわせる。これが毎月くりかえされます。

電子申請にすると、これがまるごと消えます。社内のパソコンから専用サイトに入り、「退職金ポイント」を買います(ペイジーか口座振替)。あとは就労日数を月に1回登録するだけです。買ってあるポイントから、掛金が自動であてられます。証紙の購入も、貼付も、消印も、現物のわたしも、在庫の管理もありません。

利用は無料です。「就労実績報告作成ツール」か建退共のホームページから申込書を出力し、支部へ出します。しばらくすると、仮IDとパスワードが送られてきます。

そして、ここがDXとして一番効くところです。国土交通省は、「建設キャリアアップシステムで蓄積される就業履歴をデータ連携により掛金充当に活用し、退職金給付の徹底と事務の効率化につなげていただくことが可能となります」としています。カードをリーダーにかざした記録が、そのまま掛金の根拠になるということです。

専用サイトも、リニューアルされています。これまでパソコンに入れる「就労実績報告作成ツール」でやっていた作業が、サイトの中で終わるようになりました。工事情報の作成も、就労実績の入力もです。ZIPファイルをメールでやりとりする手間はなくなりました。掛金の充当も、これまで2営業日かかっていたエラーチェックが、最短で当日中に短くなっています。CCUSとの連携でも、現場・契約情報、施工体制情報、就業履歴のファイル受けわたしが要らなくなりました。

1点だけ、期限のある話をお伝えします。パソコンに入れて使う「就労実績報告作成ツール」には、使用期限があります。2026年4月28日に出た Ver.2308.5.595 で、期限が2027年12月31日まで延長されました。延長されたということは、いつかは終わるということです。猶予があるうちにWebのやり方へ移しておくほうが、あとであわてずにすみます。

掛金は損金になり、元請が持った下請分は工事原価に入る

建退共の掛金の税務上の扱いをまとめた表

お金のあつかいも、はっきり決まっています。

事業主が払いこむ掛金は、全額を算入できます。法人なら損金(法人税法施行令第135条第1号)、個人事業なら必要経費(所得税法施行令第64条第2項)です。

そして、ここを使っていない会社が多いところです。共済証紙の現物交付ぶんも、退職金ポイントぶんも、元請が負担した下請の掛金は工事原価に算入できます。

販管費に一括で落としてしまうと、どの工事にいくらかかったのかが見えなくなります。建設業は、工事ごとに損益を見る商売です。原価に入れられるものを入れないのは、実行予算の精度をじぶんで落としているのと同じです。実行予算の作り方原価管理の実務と、同じ考え方です。

電子申請にしておくと、この仕事も楽になります。専用サイトで購入額と充当額が自動で管理され、「建設業退職金共済掛金納付・充当状況証明書」をダウンロードできるからです。どの現場に、いくら充当したかが数字で残ります。証紙のやりとりを紙の受払簿で追っている限り、この振りわけは手作業のままです。

なお、退職金の額も公表されています。掛金日額320円のまま、途中で制度の改正がなかった場合の予定額です。納付年数10年で893,559円、20年で1,933,479円、30年で3,038,919円(2021年10月1日現在)。ただし予定運用利回りや掛金日額が見なおされると変わりますので、そのつもりでご覧ください。

統合最適化でみると、どう効くのか

建退共を人材育成・DX推進・収益改善の3軸で捉えた図

アプリバンクは、人材育成・DX推進・収益改善の3つをまとめて動かす「統合最適化メソッド」でご支援しています。建退共は、この3つがきれいに重なる、めずらしい制度です。

人材育成の面。建設業は、会社を移りながらはたらく方が多い業界です。建退共は、事業所が変わっても掛金の納付が続きます。だから「うちにいた期間ぶんは、ちゃんと残ります」と言えます。勤続を、金額という形で見せられる仕組みです。人手不足への対応で書いたとおり、いまは入れる話より、抜けさせない話のほうが効きます。

DX推進の面。電子申請とCCUS連携で、証紙にかかっていた事務がゼロになります。ここは「システムを入れる」話ではありません。いまやっている手作業をやめる、という話です。費用は無料で、減るのは手間だけ。DXの入り口として、これほどはじめやすいものはあまりありません。

収益改善の面。経審の15点は、そのままP点に効きます。掛金は損金に入り、元請が持った下請ぶんは工事原価に入ります。払っているお金の置きどころを正すだけで、入札の点数と、工事別の損益の精度がいっしょに上がります。

3つは、ひとつの手続きの上でつながっています。電子申請に切りかえると、就業履歴がそのまま掛金の記録になります。経審に出す証明書も、原価へ入れる根拠も、同じデータから出ます。別々にやるより、はやく効きます。

まとめ

整理します。

  • 経審の15点が付くのは、「建設業退職金共済事業加入・履行証明書(経営事項審査用)」を出したとき。所定の様式以外はみとめられない
  • 「建退共の加入状況」と「退職一時金もしくは企業年金制度の導入」は、W1の別々の項目。どちらも最高15点で、建退共では下の項目の加点は取れない
  • 掛金は1日320円、共済手帳は1冊250日分。受給資格は掛金納付月数12月以上(21日分を1か月と換算)
  • 役員報酬を受けている方と本社の事務専用社員は加入できない。一人親方は任意組合をつくれば入れる
  • 電子申請にすると証紙の購入・貼付・消印・現物交付・在庫管理がなくなる。利用は無料で、CCUSの就業履歴と連携できる
  • 掛金は法人なら損金、個人なら必要経費元請が負担した下請の掛金は工事原価に算入できる

この制度でいちばんもったいないのは、入っているのに点数になっていない状態です。掛金は毎月出ていくのに、経審には乗らず、原価にも入っていない。そこを直すのに、あたらしい出費は要りません。

取れるはずの加点を、いくつ落としているか。1時間あれば洗い出せます。

建設業に特化した無料の経営相談を、毎月5社まででお受けしています。経審の結果通知書と、直近の決算書をおもちください。W評点で落としている項目と、その直し方をその場でお返しします。

この記事について

執筆:佐藤 望(さとう のぞむ)/株式会社アプリバンク 代表取締役

建設業界での経験は30年。大手ゼネコンでは20年にわたり、現場・財務・人事を横断して担当してきました。海外5カ国での施工経験もあります。現在は建設業に特化した経営コンサルティングを行い、人材育成・DX推進・収益改善を同時に動かす「統合最適化メソッド」を提供しています。

現場にいた頃、共済証紙の受払簿を月末にあわせるのは、事務の方のいちばんおもい仕事のひとつでした。枚数が合わない。誰にわたしたかおもい出せない。そのたびに手帳を集めてかぞえなおしていました。あの作業に、価値はひとつもありませんでした。電子申請の話をご相談でおすすめするのは、そのときの記憶があるからです。

お問い合わせ:株式会社アプリバンク無料経営相談

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出典

本記事の内容は2026年8月6日時点の情報にもとづきます。経営事項審査の審査項目および評点は改正されることがあり、提出書類の細目は許可行政庁によって取扱いが異なる場合があります。申請にあたっては、許可行政庁が公表する最新の手引きをご確認ください。掛金の税務上の取扱いについては、個別の事情により結論が変わることがありますので、顧問税理士にご相談ください。

建退共は加入だけでは経営事項審査で加点されないことを示すアイキャッチ

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