建設業の人手不足について、政策パッケージをつくる動きが始まりました。2026年10月1日の日本成長戦略会議で、高市総理が年末までにまとめるよう指示しました。
ただ、中身はまだ何も出ていません。だからこそ、いまのうちに自社の数字を3つ数えておくことをおすすめします。支援策が出て申しこむことになったとき、理由をすぐに書けるからです。
総理は、建設の人手不足について何を指示したのか
首相官邸の発言録によると、総理は会議のまとめで、つぎのように述べました。
まず、建設分野の人手不足解消に向け、尾﨑副長官の下に、国土交通省と経済産業省を中心に「政府横断の検討の場」を創設し、年末までに具体的な政策パッケージをとりまとめてください。
この発言は、人手や資金、電力、AIなどを戦略分野へ回す話の中にあります。建設の人手は、そのなかで「まず」とさいしょに挙がりました。
会議の資料「当面の検討課題(案)」にも、「建設供給力不足への対応」という項目が入っています。中身はつぎの1行です。
今後の成長投資のボトルネックとなり得る建設分野等の労働力不足への対応。
おなじ発言の中で、AIの社会実装についても、年末までにまとめるよう指示が出ています。
「5年間」は、どこまでたしかめられるか
報道には、集中投資の期間を年度つきで伝えたものもあります。官邸と内閣官房の資料でたしかめられたのは、つぎの2つです。
- 発言録:年末までの実行計画で「今後5年間の『国内投資』の道筋」を示す
- 資料1:「今後5年間を集中投資期間と位置づけて」計画をつくる
何年度からはじまるかは、この2つの資料には書かれていません。この記事では、はじまりの年度は書かずにおきます。
政策パッケージで総理が指示したこと、まだ出ていないこと
10月3日の時点で、公式の資料から言えることを分けると、つぎのとおりです。
| 項目 | 2026年10月3日時点 |
|---|---|
| 話し合う場 | 尾﨑副長官の下に「政府横断の検討の場」をつくる(総理の指示) |
| 中心になる省 | 国土交通省と経済産業省(総理の指示) |
| まとめる時期 | 年末まで(総理の指示。発表の日付は出ていない) |
| 対象になる会社や工事 | 出ていない |
| 金額や補助率 | 出ていない |
| 申しこみの時期と条件 | 出ていない |

中身は、まだひとつも出ていません。補助金になるのか、税の扱いか、決まりの見直しか。それもまだわかりません。
「こういう補助金が出るはずだ」と見こみで動くのは、おすすめしません。かわりに、どんな形で出ても役に立ちやすい数字を先にそろえます。
人手不足は、もう数字にも出ています。帝国データバンクの調べでは、2025年度の人手不足倒産は441件で、そのうち建設業は112件でした。退職や採用難、人件費の上がりなどが原因の倒産を数えたものです。
数えているのは、負債1,000万円以上で法的整理になった倒産だけです。負債1,000万円未満の倒産や廃業は入っていません。
いまの省力化投資補助金は、人手不足を何でたしかめているか
手がかりになるのが、いまも続いている中小企業省力化投資補助金です。人手不足に悩む中小企業の、省力化の投資を支える制度です。
カタログ注文型の公募要領は、申しこむ会社に「人手不足の状態にあること」を示すよう求めています。つぎの4つから1つを選ぶ形です。
1 限られた人手で業務を遂行するため、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている。
2 整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している。
3 採用活動を行い求人掲載したものの、充足には至らなかった。
4 その他、省力化を推し進める必要に迫られている。
カタログ注文型 公募要領「人手不足の状態にあることの確認」から
4つめを選ぶと、審査がよりきびしくなります。採択の結果の知らせが、大幅におくれることもあると書かれています。この書きぶりからは、数字で示せる1〜3を選べるようにしておくほうが、進めやすいと読めます(当社の読み)。
一般型の公募要領(第8回)は、別の2つの数字を見ます。業務がどれだけへるかの「省力化指数」と、投資額を、へる時間の金額などで割った「投資回収期間」です。
投資回収期間は、根拠の資料といっしょに出すよう求められます。審査では、2つの数字の出しかたが妥当かどうかも見られます。
年末のパッケージがおなじ型になるとは限りません。それでも、いまある国の省力化の支援は、人の足りなさと、へる時間を数字で問うています。

数える数字① 人が足りず、受けられなかった工事
ひとつめは、人が足りずに断った工事や、見送った工事の件数と金額です。会計の帳簿には出てこない数字です。
断った見積は、書いておかなければ残りません。今月から、つぎの6つを1件1行で書きとめます。
| 書くこと | 書きかたの例 |
|---|---|
| 日付 | 見積の依頼を受けた日 |
| 発注者の区分 | 公共か民間か。元請か下請か |
| 工種 | 型枠、内装、設備など |
| おおよその金額 | 見積の前なら、依頼の規模でよい |
| 断ったわけ | 人・工期・単価のどれか(重なれば全部) |
| 足りなかった人 | 職種と、何人が何日足りなかったか |
だいじなのは、断ったわけを分けておくことです。単価が合わずに断った工事は、人手不足の数に入れません。人のわけだけで数えた数字のほうが、説明に使いやすくなります。
今月より前の分は、見積の依頼のメールや電話のメモから、思い出せる範囲で書き足します。金額がわからない工事は、空けておきます。あとから見こみの数字でうめないことが大切です。
年末までには、3か月分ほどの記録がたまります。月に何件、いくらぶんを人の理由で手ばなしているか。それが、自社の人手不足を自社の数字で説明する土台になります。
断る手前の動きも見ます。工期をのばしてもらった工事や、協力会社に断られた回数も、おなじ表に足しておきます。前ぶれの見かたは建設業の人手不足倒産でくわしく書きました。
数える数字② 1人当たり完成工事高
ふたつめは、1人当たり完成工事高です。完成工事高を、その期の人数で割って出します。
| 1人当たり完成工事高 = 完成工事高 ÷ 人数 |
人数の数えかたは、はじめに決めて変えないことです。たとえば「期末の社員数」か「12か月の平均」かです。役員を入れるかどうかも、そろえておきます。
架空の例です。完成工事高が6億円で、社員が30人なら、1人当たり2,000万円です。3年前が1,800万円なら、金額では1割ほど上がっています。
ただし、金額にはものの値上がりもふくまれます。こなした工事の量がふえた、とまでは言えません。また、外注が多いほど大きく出る数字でもあります。
自社の手で生んだ分を見るなら、完成工事高のかわりに付加価値を人数で割ります。考えかたは建設業の生産性向上にまとめました。そちらでは、完成工事高から材料費や外注費を引いて出しています。
省力化投資補助金の一般型の要領は、足し算で出す形です。付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」、労働生産性は「付加価値額÷労働者数」と決めています。
この労働者数は、従業員数に役員の人数を足したものです(個人事業主なら事業主と専従者)。補助金の計算では、自社で決めた数えかたではなく、この決め方を使います。
出しかたが2つあるので、どちらで数えたかを表の上に書いておきます。直近3期分をおなじ決め方で並べると、人がへっても工事を回せているかが見えてきます。
数える数字③ 省力化投資の候補と、その効果
みっつめは、何を入れたら、何時間へるかです。候補は、どの現場でもかならず出る作業から選ぶと数えやすくなります。日報、写真の整理、出面(でづら)の集計、安全書類などです。
候補が思いつかないときは、現場の人に「いちばん時間をとられる事務は何か」と聞いてみてください。その答えを、候補の1つめにします。
一般型の要領には、2つの式があります。これを、そのまま借ります。
| 数字 | 要領の式 |
|---|---|
| 省力化指数 | (設備導入により削減される業務に要していた時間 − 設備導入後に発生する業務に要する時間)÷ 設備導入により削減される業務に要していた時間 |
| 投資回収期間 | 投資額 ÷(削減工数 × 年間稼働日数 × 人件費単価 + 増加した付加価値額) |

架空の例で計算します。写真の整理と日報に、会社全体で1日4時間かかっているとします。新しい道具を入れると、確認と入力に1日1時間かかるとします。
このとき、省力化指数は(4−1)÷4で0.75です。へる時間は1日3時間です。
投資額を300万円、年間稼働日数を250日、人件費単価を1時間3,000円とします。へる時間を金額に直すと、3×250×3,000で年225万円です。
これは、へる時間に人件費単価を掛けた換算の数字です。給与や残業代が、そのまま225万円へるとは限りません。
増加した付加価値を0とすると、要領の式の投資回収期間は300÷225で、約1.3年です。この例では、削減工数を1日あたりの時間として計算しました。
約1.3年は、要領の式で出した数字です。手元のお金が1.3年でもどる、という意味ではありません。実際にへる支出は、残業代や外注費が導入の前後でどう変わるかで見ます。
数字はすべて架空です。だいじなのは、いまの作業に何時間かかっているかを、先に測ることです。導入の前の時間がなければ、どちらの式も計算できません。
まずは1〜2週間、担当の人に、作業ごとの時間をメモしてもらうところからはじめます。いまある補助金の選びかたは省力化投資補助金に間に合わない時にまとめました。
総理が指示した年末までの段取り

10月 記録をはじめる
断った工事の表をつくり、今月の分から書きます。あわせて、平均の残業時間、退職した人の数、求人の控えをそろえます。カタログ注文型が人手不足をたしかめるのに使っている3つと、おなじものです。
11月 3期分を並べる
1人当たり完成工事高と付加価値を、直近3期分で並べます。おなじ月に、候補の作業の時間のメモも取りはじめます。
12月 候補を2〜3つにしぼる
測った時間をもとに、効きそうな候補をしぼります。見積をとるところまでは進めてかまいません。
ただし、発注は急がないでください。一般型の要領は、交付決定の前に生じた経費を対象外としています。「いかなる理由であっても事前着手は認められません」とあります。
中身が出たら 条件と照らす
パッケージの中身が出たら、対象・金額・条件を、そろえた数字と照らします。補助金の形なら、申請の入口もたしかめます。いまの省力化投資補助金は、GビズIDプライムの取得が必要です。
断った工事の表や、作業時間の測りかたを、自社に合わせて決めたい。そうお考えでしたら、無料経営相談からお声がけください。手元の台帳から、何が数えられるかをいっしょに見ます。
統合最適化でみると、どう効くのか
株式会社アプリバンクは、人材育成・DX推進・収益改善をひとつにして見ます(統合最適化メソッド)。3つの数字なら、人と時間を数える1つの作業が、3つの軸に同時につながります。
人材育成 仕事がだれに寄っているかが見える
作業ごとの時間を測ると、決まった人に仕事が寄っている場所がわかります。教える順番と、まかせる順番を決める手がかりになります。
DX推進 道具を選ぶ物差しができる
測った時間が、どの道具を入れるかの物差しになります。入れたあとも、おなじ物差しで効いたかどうかをたしかめられます。
収益改善 とりこぼした売上の大きさがわかる
断った工事の金額は、人がいれば取れたかもしれない売上の目安です。人を1人ふやすねうちや、投資の上限を考える手がかりになります。
よくある質問
Q1. 政策パッケージは、いつ発表されますか。
総理の指示は「年末までに」とりまとめる、というものです。くわしい日付は、2026年10月3日の時点では出ていません。
Q2. 補助金になるのですか。
まだわかりません。官邸の発言録には「具体的な政策パッケージ」とあるだけで、形は書かれていません。
Q3. 社員の少ない会社でも、数えておく意味はありますか。
あります。1人当たり完成工事高は、社員が数人でも出せます。省力化投資補助金の一般型にも、従業員5人以下の区分があります。
Q4. いま申しこめる補助金はありますか。
省力化投資補助金の一般型は、第8回を2026年9月18日から受けつけています。しめきりは2026年10月16日17時です(公式サイト・2026年10月3日時点)。しめきりや条件は、公式サイトで最新のものをたしかめてください。
まとめ
- 総理は2026年10月1日、建設の人手不足の政策パッケージを年末までにまとめるよう指示しました。中身は、まだ出ていません
- いまある省力化投資補助金は、人の足りなさと、投資でへる時間を数字で問うています
- 年末までに、断った工事の件数と金額・1人当たり完成工事高・省力化の候補とへる時間の3つを数えておきましょう
支援策が出たときに、すぐ動ける数字をそろえておきたい。そうお考えでしたら、無料経営相談へどうぞ。人材育成・DX推進・収益改善をまとめて見ます。
この記事は一般的な内容をお伝えするものです。政策の中身は、発表された公式の資料でおたしかめください。補助金の申請は、各制度の公募要領と事務局の案内にしたがってください。
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出典
- 日本成長戦略会議(令和8年10月1日)総理の発言(首相官邸)
- 日本成長戦略会議(第8回)会議資料(内閣官房)
- 資料1「日本成長戦略実行計画」の策定にあたって(内閣官房・PDF)
- 資料2 当面の検討課題(案)(内閣官房・PDF)
- 中小企業省力化投資補助金 公式サイト(中小企業基盤整備機構)
- 中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領(中小企業基盤整備機構・PDF)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領 第8回公募(中小企業基盤整備機構・PDF)
- 人手不足倒産の動向調査(2025年度)(帝国データバンク)
出典はいずれも2026年10月3日時点で公式サイトを確認しています。
監修

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。
保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。
経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180 へ。
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