技能実習の認定取消しを受けた会社は、2017年11月の今の制度から累計754社になりました。東京商工リサーチ(TSR)が2026年10月1日に出した調べです。
TSRが調べた660社(個人事業主などを除く)のうち、建設業は214社で、製造業についで2番目に多い数です。取消しを受けると、その日から5年間、新しい実習の認定を受けられません。
この記事では、法律が決めている取消しの理由を条文で読みます。そのうえで、自社で点検する順番と、2027年4月の育成就労への切り替えで変わることをまとめます。
認定取消しは754社。建設業は214社で2番目に多い
TSRは、国が社名を公表した754社のうち、個人事業主などを除く660社を調べました。業種ごとの数は次のとおりです。
| 産業 | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| 製造業 | 255社 | 38.6% |
| 建設業 | 214社 | 32.4% |
| サービス業他 | 82社 | 12.4% |
| 卸売業 | 45社 | 6.8% |
| 農・林・漁・鉱業 | 31社 | 4.7% |

製造業と建設業を足すと、7割(71.0%)になります。もっとくわしい業種で見ると、いちばん多いのはとび工事業の51社、つぎが土木工事業の38社でした。
県ごとでは、愛知県46社、大阪府42社、広島県41社の順です。2026年度も、8月までに50社が公表されました。
同じ調べでは、660社のうち24社がすでに休廃業・解散していました。ただし、取消しとの因果関係は分からない、と書かれています。
取消しを受けると、何が起きるのか
認定を取り消すのは、国(出入国在留管理庁長官と厚生労働大臣)です。技能実習法16条2項で、取り消したときはそのことを公示すると決まっています。
実際に、出入国在留管理庁(入管庁)のページには、取消しを受けた会社の名前や住所、わけが、年度ごとに並んでいます。だれでも見られる一覧です。

TSRの記事によると、受け入れていた実習生は、ほかの受け入れ先へ移る(転籍する)ことがいります。そのぶん、現場の人手が減ります。
そのうえで、10条7号が効いてきます。取消しの日から5年を過ぎない会社は、新しい実習の認定を受けられません。
会社が法人のときは、10条8号にも注意します。取消しの原因が起きたときの役員も、5年は認定を受けられない場合があります。その人が役員をつとめる別の会社も、10条12号で認定を受けられないことがあります。
取消しの理由は、法律に7つ書いてある
16条1項は、認定を取り消せる場面を7つあげています。条文を、現場の言葉にすると次のとおりです。
| 号 | 条文の中身 | 現場で起きる形 |
|---|---|---|
| 1号 | 認定計画に従って実習をさせていない | 計画とちがう作業・賃金 |
| 2号 | 計画が9条の基準に合わなくなった | 報酬・待遇が基準を下回る |
| 3号 | 10条の欠格事由に当たることになった | 労働の法律などで罰金を受けた |
| 4号 | 国の報告・検査に応じない、うその報告 | 帳簿を出さない・うそを書く |
| 5号 | 機構の検査で、うその帳簿や答え | 出勤簿を作り直して見せる |
| 6号 | 改善命令(15条)に従わない | 命令のあとも直さない |
| 7号 | 出入国・労働の法令で不正や著しく不当な行為 | 不法就労・賃金の不払い |
ここで大事なのは、2号の先にある9条9号です。「報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」と書かれています。
そして、計画に書いた賃金を払っていなければ、1号の「計画に従っていない」に当たります。公表された理由にも、そう書かれています(次の章)。
公表された理由には、同じ言葉がくり返し出てくる
入管庁の一覧(平成30年度から令和8年度まで。令和8年9月29日の時点)には、取消しのわけが文で書かれています。当社で、その文を数えました。
- 一覧に載っている行は770件(同じ名前の行はありません)
- 「労働安全衛生法違反」という言葉が入っているもの:265件
- 「認定計画に従って賃金を支払っていなかった」という言葉が入っているもの:109件
- 「虚偽の帳簿書類」という言葉が入っているもの:61件
770件とTSRの754社のちがいは、いつの時点かのちがいです。TSRは8月までの数で、一覧には9月29日に取り消された16件も入っています(770−16=754)。
文には、たとえば次のような書き方があります。
外国人技能実習機構の職員に対し、虚偽の出勤簿及び賃金台帳を提示し、虚偽の答弁を行った
賃金を払っていないことと、それを帳簿でかくすことが、1つの理由の中にセットで書かれている例があります。点検では、この2つを分けずに見ます。
いちばん多いのは、労働安全衛生法の違反で罰金を受けた例です。265件で、全体の3分の1をこえます(34.4%)。賃金の109件とは重なっていません。
罰金が確定すると、16条1項3号や7号の取消しの理由になります。265件は、どれもこの2つのどちらかをあげています。
ほかにも、入国してすぐの講習の期間に、現場の仕事をさせた例(12件)があります。
いまの帳簿と賃金の流れを、取消しの理由の順に見直したい。そうお考えでしたら、無料経営相談からお声がけください。手元の書類で何を見ればよいかを、いっしょに整理します。
自社で点検する順番 — お金、時間、作業、帳簿
安全衛生の違反は、取消しの理由でいちばん多いものです。現場の安全の点検は、この順番とは別に、かならず続けてください。
ここでは、賃金と記録にかかわる理由を逆から読みます。すると、点検の順番が決まります。上から順に見ていきます。

1. 賃金台帳と、計画に書いた報酬を並べる
労働基準法108条で、賃金台帳は、払うたびに書きこみます。まず、この台帳と、計画に書いた報酬を、月ごとに並べます。
見るのは、基本給、手当、引いている額です。24条で、賃金は全額を払うのが原則です。寮費などを引くなら、労使の書面の協定があるかもたしかめます。
最低賃金が上がった月に、時給がそれより下になっていないかも見ます。見なおし方は建設業の最低賃金にまとめました。
2. 働いた時間を「客観的な方法」で残しているか
労働安全衛生法66条の8の3で、会社は、働いた時間のようすをつかんでおきます。やり方は、規則で「タイムカードによる記録」などの客観的な方法とされています(労働安全衛生規則52条の7の3)。
記録は3年間とっておきます(同じ条の2項)。手書きの出勤簿があるなら、打刻の記録と並べて食いちがいがないかを見ます。残業があれば、37条の割増賃金が台帳に出ているかも見ます。
3. 計画どおりの作業をさせているか、日誌で見る
技能実習法20条で、会社は帳簿をつくり、仕事場に置いておきます。どんな帳簿かは施行規則22条にあり、させた仕事と、教えた中身を書いた日誌も入っています。
日誌に書いた作業の名前と、計画の作業の名前をくらべます。人が足りない現場で、計画にない仕事に回していないかを見ます。
4. 帳簿は、事実のまま残す
技能実習法で決まっている帳簿(管理簿や日誌など。施行規則22条1項)は、実習が終わった日から1年間、仕事場に置いておきます(同じ条の2項)。
賃金台帳は、これとは別の決まりです。労働基準法109条は5年としており、143条で当分のあいだは3年です。
数えはじめるのは、最後に書きこんだ日からです(賃金を払う日がそれより後なら、その日。労働基準法施行規則56条)。実習が終わって1年たっても、賃金台帳は捨てられません。
まちがいが見つかったら、直した日と理由を残して、正しい額を払います。事実とちがう形に作り直して検査で見せると、4号・5号の「虚偽」に当たります。払っていない分は、まず払うのが先です。
5. 続けられないときは、届け出る
倒産や受注の減りで実習を続けられなくなったら、19条で届出や通知がいります。監理団体を通す形なら、まず監理団体に知らせます。届けずに休ませたままにすると、計画とちがう状態のままになります。
2027年4月、育成就労に変わると何が変わるか
入管庁によると、育成就労がはじまるのは令和9年(2027年)4月1日です。法律の名前も「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」に変わります。

取消しと「5年」のしくみは、新しい法律にも残る
e-Govで、2027年4月1日に施行される条文を読みました。16条の取消し、16条2項の公示、10条7号の「五年を経過しない者」は残っています。7号には、一部の例外が足されました。
9条1項9号の「日本人と同等以上の報酬」も残ります。賃金と帳簿を正しくしておく点検は、しくみが変わってもそのまま使えます。
ちがいもあります。いまの16条1項7号「不正又は著しく不当な行為」は、新しい16条からはなくなります。
10条9号(欠格事由)は、いまの法律にもあります。いまは「認定の申請の日前五年以内」に不正などをした者が対象です。新しい法律では「行為をした日から起算して五年」と、行為の日から数える形に変わります。
いまの実習生は、どうなるのか
入管庁のQ&A(Q47)を見ます。2027年4月1日の時点で来日している実習生は、原則として、今の認定計画のまま続けられます。
2027年3月31日までに計画の申請をして、6月30日までに実習を始める人も同じです。つまり2027年4月のあとも、しばらくは今の認定計画で実習が続きます。
技能実習で受けた取消しは、育成就労に変わっても消えません。改正法(令和6年法律第60号)の附則12条2項に、うつりかわりの決まり(経過措置)があります。
中身は、技能実習の認定を取り消された日に、育成就労の認定も取り消されたものとみなすというものです。対象は、育成就労法10条7号・8号の「5年」の決まりです。
つまり、取消しの日から5年たつまでは、育成就労の認定も原則として受けられません。当時の役員の5年(10条8号)も、同じ日から数えます。
これから受け入れたい方は、監理団体や外国人技能実習機構におたずねください。
受け入れの条件や、職場を移るときのルールは、育成就労とは|建設業の受入れ8要件と2年の転籍制限にまとめています。
統合最適化でみると、どう効くのか
株式会社アプリバンクは、人材育成・DX推進・収益改善をひとつにして見ます(統合最適化メソッド)。この件なら、勤怠と賃金台帳と日誌を1本につなぐ作業が、3つに同時に効きます。
人材育成 — 日誌が、育てたことの記録になる
日誌は、検査のためだけの書類ではありません。だれに、何を、どこまで教えたかの記録です。育成就労では、法律の目的に「人材を育成する」ことが書かれます(1条)。職長の教え方は職長教育とはでもふれました。
DX推進 — 記録を、あとから作り直せない形にする
タイムカードやアプリの打刻を、そのまま給与の計算につなぎます。手で写す回数をへらせば、まちがいと「作り直し」の疑いをへらせます。現場の入退場の記録はCCUSの活用ガイドにまとめました。
収益改善 — 5年止まる損を、先にふせぐ
取消しを受けると、5年間は新しい実習生を入れられません。その間の人手は、ほかの採用や外注でうめることになります。ふだんの点検は、その5年の穴をあけないための手当てです。
よくある質問
Q1. 認定取消しは、どこで公表されますか。
入管庁の「公表情報」のページに、年度ごとの一覧が出ています。会社の名前や住所、わけが書かれています。
Q2. 取消しを受けると、何年受け入れられませんか。
取消しの日から5年がたつまで、新しい実習の認定を受けることはできません(技能実習法10条7号)。
Q3. 改善命令と取消しは、どうちがいますか。
改善命令(15条)は、期限を決めて直すよう命じるものです。これにも公示があります。命令に従わないと、16条1項6号で取消しの理由になります。
Q4. 育成就労になれば、今の取消しの話は関係なくなりますか。
なくなりません。今の実習生は、2027年4月のあとも今の認定計画で続けられます。新しい法律にも、取消しと5年のしくみがあります。技能実習で受けた取消しも、育成就労の5年に引き継がれます(改正法附則12条2項)。
まとめ
- 認定取消しは累計754社。調べた660社のうち建設業は214社(32.4%)で2番目です
- 取消しは公示され、一覧に社名が載ります。5年は新しい認定を受けられません(10条7号)
- 公表の理由でいちばん多いのは労働安全衛生法の違反による罰金です。賃金の不払いと、うその帳簿もくり返し出てきます
- 点検は賃金台帳 → 働いた時間 → 日誌 → 帳簿ののこし方 → 届け出の順に見ます
- 2027年4月に育成就労に変わっても、取消しと5年のしくみは残ります
受け入れを続けるために、賃金と記録の流れを一度つなぎ直したい。そうお考えでしたら、無料経営相談へどうぞ。人材育成・DX推進・収益改善をまとめて見ます。
この記事は、一般的なことをお伝えするものです。それぞれの会社のことは、監理団体や外国人技能実習機構、社会保険労務士、弁護士におたずねください。
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出典
- 外国人「技能実習制度」認定取消しは累計754社(東京商工リサーチ TSRデータインサイト・2026年10月1日)
- 公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の制度概要・関係法令(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度に係る施行日前申請(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度Q&A(出入国在留管理庁)
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(e-Gov法令検索)
- 同法施行規則(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)(出入国在留管理庁・PDF)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
出典はいずれも 2026年10月3日時点で公式サイトを確認しています。条文はe-Gov法令API(同日取得)の現行条文と、2027年4月1日施行の条文です。改正法の附則は、出入国在留管理庁が掲載する法律の本文(PDF)とe-Govの改正履歴で確かめました。一覧の件数は、出入国在留管理庁が公表したExcelファイルを当社が数えたものです。
監修

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。
保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。
経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180 へ。
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