MENU
Newspicks認定エキスパートに就任いたしました。                              「DX認定事業者」に認定されました。

建設業の最低賃金|県ごとに違う発効日と、賃金表の直し方

建設業の最低賃金。県ごとに違う発効日と賃金表の直し方を示したアイキャッチ

最低賃金の改定が動いています。ただし「10月1日に、全国一斉に」ではありません。東京・大阪・愛知など15の都道府県は10月1日に発効する予定で、残りは12月2日まで順に効いていきます。発効日は都道府県ごとに違い、この記事の時点ではまだ来ていない県が大半です。ご自分の県の発効日は、各都道府県労働局の公示でお確かめください。

本社の県だけ見て「うちは済んだ」と思っていると、別の県にある事業場が抜けます。逆に、まだ先の県を早く直しても構いませんが、いつから義務になるのかは押さえておく必要があります。

この記事では、厚生労働省が公表した令和8年度 地域別最低賃金 答申状況から、いくらになるのか、いつから効くのか、どの県のものが自社に当たるのかを整理します。

目次

全国加重平均は1,177円。上げ幅は56円

まず全体の数字です。

  • 全国加重平均 1,177円(改定前 1,121円)
  • 引上げ額 56円

報道などで「1,176円・55円」という数字を見かけることがあります。これは令和8年7月28日の中央最低賃金審議会が示した目安どおりに改定された場合の試算です。実際に各県から答申された額を集計すると、1,177円・56円になりました。ただし答申は、そのまま法的に効く額ではありません。実際に給与計算で使う額は、都道府県労働局長が決定して公示した額です。答申はその手前の段階で、金額が変わることもあります。社内の準備は答申の数字で進めて構いませんが、賃金台帳に当てる額は公示で確かめてください。

県ごとに、1日から2か月ちがう

令和8年度の地域別最低賃金の発効日。東京は10月1日、沖縄は12月2日
同じ改定でも、東京と沖縄で2か月ひらきます。

ここが本題です。発効日は都道府県ごとに決まっていて、令和8年10月1日から12月2日まで、ばらばらです。

県 改定額 発効日(予定)
東京 1,280円 10月1日
大阪 1,231円 10月1日
静岡 1,154円 10月15日
京都 1,180円 11月16日
熊本 1,092円 12月1日
沖縄 1,086円 12月2日
答申状況より抜粋。47都道府県すべての額と発効日は、出典のPDFにあります。

東京は10月1日、沖縄は12月2日。同じ改定でも、2か月ひらきます。

金額の幅も小さくありません。いちばん高い東京が1,280円、いちばん低い宮崎が1,085円で、差は195円です。

答申状況には、「発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性有」と書きそえられています。日付は予定です。確定は各都道府県の労働局の公示でたしかめてください。

どの県の最低賃金が当たるのか

建設業でいちばん迷うのがここです。現場が県をまたぐとき、どちらの県の額を使うのか。

基準は事業場の所在地です。厚生労働省のテレワークQ&Aは、A県の事業場に所属する労働者がB県で働く場合について、こう答えています。

テレワークを行う場所の如何に関わらず、テレワークを行う労働者の属する事業場がある都道府県の最低賃金が適用されます。

働いた場所ではなく、その労働者が属する事業場がどこにあるかで決まる、という考え方です。

ただし建設業では、ここで終わりません。長期の現場や事務所を構える現場が、本社とは別の「事業場」としてみなされるときがあります。そうなると、当たる県が変わります。

この判断は個別の事情によります。本記事で一律の答えは出せません。現場を複数県に持っているときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。ここは確かめる価値があります。

協力会社から人を受けているとき

派遣で人を受けているときは、扱いがちがいます。厚生労働省は派遣労働者への適用について、派遣先の事業場に適用される最低賃金が使われると説明しています。

建設業務への労働者派遣は、労働者派遣法第4条第1項第2号で禁止されています。建設現場で人を受けるのは、請負か、建設業務労働者就業機会確保事業などの別の枠組みです。「派遣だから派遣先の額」と機械的に当てはめる前に、その契約が何なのかをたしかめてください。

請負として人に来てもらっているときは、その人が属するのは協力会社の事業場です。したがって当たるのは、協力会社の事業場がある県の最低賃金になります。自社の県ではありません。

効くのは、時給の人だけではない

最低賃金は時間額で決まりますが、月給の人にも当たります。月給を時間額に割り戻して、下回っていないかを見ます。

建設業で見おとしやすいのは、計算に入れられない手当です。最低賃金法第4条第3項と同法施行規則第1条、そして各都道府県の最低賃金の決定によって、次のものは算入しないとされています(厚生労働省「対象となる賃金は?」)。

  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
  • 時間外・休日・深夜の割増賃金
  • 臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

「手当を足せば足りている」は、通らないことがあります。基本給と、計算に入れられる手当だけで見ます。

下請の賃金にも、はね返ります

自社の賃金表を直して終わりではありません。協力会社も同じ改定を受けます。

建設業では、人件費が見積の大きな部分を占めます。最低賃金が上がれば、協力会社の見積も上がります。これを「値上げ要求」として受けると、話が合わなくなります。

価格への転嫁は建設業の価格転嫁に、下請代金の支払いの決まりは建設業の手形払いにまとめています。

自社と協力会社で、どの県がいつ上がるのかを並べたい。そうお考えでしたら、無料経営相談でご相談ください。賃金表の直し方から、ご一緒します。

なぜ、県ごとに日付がちがうのか

最低賃金は、国が一律に決めているわけではありません。都道府県ごとの審議会が、その県の事情をみて答申する形です。

流れは、おおまかにこうなっています。

  • 中央最低賃金審議会が、引上げの目安を示す(令和8年度は7月28日)
  • 各都道府県の審議会が、その目安をもとに答申する
  • 答申が公示され、異議の申出の期間を経て発効する

この審議と公示の進みかたが県ごとにちがうため、発効日もずれます。答申額が目安より高い県もあり、目安との差は県によって0円から9円まで開きました。

もう1つの最低賃金がある

混ぜやすいので、先に分けておきます。最低賃金には2種類あります。

  • 地域別最低賃金。産業や職種にかかわりなく、その都道府県内の事業場で働くすべての労働者に当たります。この記事で扱っているのはこちらです
  • 特定(産業別)最低賃金。特定の産業を対象に定められているものです

両方が当たるときは、高いほうが当たります(最低賃金法)。自社の業種に特定最低賃金が置かれているかは、所轄の労働局でたしかめてください。県によって、設定されている産業がちがいます。

よくある3つの失敗

1. 本社の県だけ見て終わる

いちばん多い形です。本社が東京だから10月1日、と決めてしまう。支店や現場事務所が別の県にあれば、そちらは日付も額もちがいます。

2. 手当を足して「足りている」と判断する

通勤手当や家族手当を足して時間額を計算し、下回っていないと見てしまう例です。これらは最低賃金の計算に入りません。入れずに計算し直すと、下回っていることがあります。

3. 協力会社の見積の上がりを、値上げ交渉だと受けとる

最低賃金が上がれば、最低賃金近くで働く人を抱える協力会社では労務費が上がります。ただし、すでに新しい最低賃金を上回って払っている会社まで、制度が賃上げを義務づけるわけではありません。また、最低賃金が請負代金や見積の上げ幅を決めるものでもありません。賃金の下限の話と、取引価格の話は分けてください。そのうえで、上がった分の求めが来たときに根拠なく押し返すと、次に人が来なくなります。ここを押し返すと、次に人が来なくなります。

賃金表を直すときの、順番

賃金表を直す順番。いちばん下の等級を置き、等級ごとの幅を決め、昇級の条件を書く
下から押し上げるだけだと、等級の意味がなくなります。

下から押し上げるだけだと、経験のある職人と、入ったばかりの人の差が縮みます。毎年これをくりかえすと、等級の意味がなくなります。

直す順番としては、こうなります。

  • まずいちばん下の等級を、最低賃金を上回る水準に置く
  • つぎに等級ごとの幅を決める。上の等級との差が、いくら開いていてほしいか
  • そのうえで昇級の条件を書く。資格か、経験年数か、できる工種か

等級表の組み方は建設業の人事評価制度にまとめています。最低賃金の改定は、賃金表そのものを見直すきっかけとして使えます。毎年の押し上げで終わらせるか、等級を組みなおすかで、数年後の定着が変わります。

発効日までにやること

発効日までにやる4つ
本社の県だけ見て終わらないことです。

1. 自社に当たる県を確定する

本社・支店・現場事務所が、それぞれどこにあるか。事業場ごとに、当たる県を並べます。ここが決まらないと、額も日付も決まりません。

2. 県ごとの発効日をカレンダーに入れる

一斉ではないので、1つの日付では管理できません。県ごとに日付を入れます。新しい額がかかるのは、発効日以降に働いた分です。給与計算の締め期間の途中に発効日が入る年は、そこで区切って計算します。支給日で切り替えると、発効日から支給日までの分が旧額のままになります。

3. 時間額に割り戻して、下回る人を洗う

月給者を時間額にして、算入できる賃金だけで見ます。時間額は「月の所定労働時間で割る」のが基本です。月によって所定労働時間が変わる場合は、1年間の1か月平均所定労働時間で割ります。分母を取り違えると、足りているはずの人が下回って見えます。下回る人が出たら、基本給か算入できる手当で埋めます。

4. 協力会社の見積の上がり方を見込む

自社だけ直しても、工事は回りません。下期の実行予算に、人件費の上がるぶんを織り込みます。

統合最適化でみると、どう効くのか

株式会社アプリバンクは、人材育成・DX推進・収益改善を切りはなさずに見ます(統合最適化メソッド)。最低賃金の改定も同じです。

人材育成 — 賃金表が、育成の順番になる

最低賃金に合わせて下から押し上げるだけだと、経験を積んだ人との差が縮みます。等級ごとの幅を見直す機会にするほうが、定着に効きます。

DX推進 — 県ごとの管理は、手作業だと落ちます

事業場ごとに県がちがい、発効日もちがう。これを台帳で持っていない会社は、毎年この時期に同じ確認をやり直しています。1度作れば、翌年は日付と金額を入れ替えるだけです。事業場を新設・移転したら、当たる県も見なおします。

収益改善 — 労務費の上昇は、見積に入れれば利益を削らない

上がること自体は止められません。止められるのは、上がったぶんを自社で飲むかどうかです。下期の見積から織り込めば、利益は守れます。

この3つは、別々の話ではありません。事業場ごとの台帳を作る(DX)から、等級と幅を見直せるようになり(人材育成)、労務費の上昇を見積に反映できる(収益改善)。ひとつの作業が3つに効くところを選ぶ、というのが統合最適化の考え方です。

まとめ

  • 令和8年度の全国加重平均は1,177円、引上げ額は56円(改定前1,121円)。報道で見る1,176円・55円は7月の目安どおりに改定された場合の試算です
  • 発効日は10月1日から12月2日まで県ごとにばらばら。10月1日に発効したのは15都道府県で、沖縄は12月2日です
  • 金額の幅も東京1,280円と宮崎1,085円で195円あります
  • 当たる県は事業場の所在地で決まります。建設業は現場が別の事業場と扱われるときがあるので、所轄の労働基準監督署に確認してください
  • 通勤手当・家族手当・割増賃金・賞与は、最低賃金の計算に入りません

下期の賃金と労務費を、まとめて組み直したい。そうお考えでしたら、無料経営相談へどうぞ。建設業に特化して、人材育成・DX推進・収益改善をまとめて見ます。

本記事は制度の一般的な内容をお伝えするものです。個別の賃金や事業場の判断については、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

関連記事

出典

出典はいずれも 2026年9月27日時点で公式サイトを確認しています。

監修

佐藤 望

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。

保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。

経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180 へ。


建設業を支援する経営コンサル、株式会社アプリバンクをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

建設業の最低賃金。県ごとに違う発効日と賃金表の直し方を示したアイキャッチ

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次