年末年始無災害運動は、令和7年度は12月1日から1月15日まででした。ただ、12月の現場が無事に終わるかどうかは、12月に入ってからではほとんど変えられません。
12月の工程も、人の手配も、残業できる時間の枠も、10月と11月の使い方でほぼ決まってしまうからです。この記事では、国の資料と法律を読み、建設会社の社長が10月中に決めておく5つをまとめます。
年末年始無災害運動とは
中央労働災害防止協会(中災防)の要領によると、この運動は昭和46年から続くもので、令和7年度で55回目でした。
- 期間(令和7年度):令和7年12月1日から令和8年1月15日まで
- よびかけ:中災防/後援:厚生労働省/実施:それぞれの職場
令和8年度の要領は、2026年10月2日の時点で、まだ中災防のページに出ていません。期間は、発表を待ってたしかめてください。
要領は、年末年始の危なさを「忙しさ」から見ている
令和7年度の要領は、この時期の特徴をこう書いています。
多忙による焦りや疲労からミスやエラーが起こりやすくなる。
そして、職場がやることの最初に「経営トップによる安全衛生方針の決意表明」を置いています。ほかに、年始に作業をはじめるときの安全確認や、過重労働をしない・させない職場づくりも並びます。
どれも、現場の注意だけでは片づきません。工程と人の配り方を決める、社長の判断にかかわることです。
12月は「事故が多い月」なのか — 数字でたしかめる
「年末は事故が多い」とよく言われます。厚生労働省の令和7年の統計(確定値)でたしかめます。
- 令和7年に建設業で亡くなった人は214人(全産業700人の約3割)
- そのうち「墜落・転落」が91人で、4割強をしめます
- 4日以上休むけがをした人と亡くなった人(死傷者)は、建設業で13,437人
月ごとに並べると、次のとおりです。
| 建設業(令和7年) | 死亡者数 | 休業4日以上の死傷者数 |
|---|---|---|
| 10月 | 12人 | 1,154人 |
| 11月 | 14人 | 1,051人 |
| 12月 | 16人 | 1,005人 |
| 1月 | 18人 | 1,057人 |
| 年間 | 214人 | 13,437人 |

この数字からは、12月がとびぬけて多いとは言えません。建設業で亡くなった人は年間214人、1か月にならすと約17.8人です。12月の16人は、それより少し少ない数です。死傷者は、12月の1,005人が12か月でいちばん少ない数でした。
それでも年末の段取りを10月に組むわけは、件数ではなく中身にあります。要領があげるのは、焦り、疲れ、いつもとちがう作業、年始の再開です。どれも工程の詰まり方で増えたり減ったりするもので、社長の側で手を打てます。
厚生労働省の発表によると、国の目標は、建設業で亡くなる人を令和9年までに令和4年より15%以上へらすことです。じっさいには、令和4年の281人が、令和7年は214人でした(当社の計算では約24%減)。
12月の残業の上限は、10月と11月の使い方で決まる
建設業にも、残業の上限がかかっています。労働基準法の猶予(附則139条2項)は、原則として令和6年3月31日まででした。
まず原則です。時間外労働の上限は、月45時間・年360時間です(36条4項)。
これをこえるには、特別条項付きの36協定がいります。使えるのは、ふだんは見こめない仕事のふえ方など、臨時的な特別の事情があるときだけです(36条5項)。
特別条項を使うときも、次の線はこえられません。
- 1か月の時間外労働と休日労働の合計は100時間未満(36条6項2号)
- 直前の1〜5か月を足した2〜6か月の平均が、どれも80時間以内(同じ項の3号。休日労働をふくむ)
- 時間外労働が月45時間をこえてよいのは1年に6か月まで、1年では720時間まで(36条5項。720時間は時間外労働だけで数える)
なお、災害のあとの復旧・復興の仕事は、附則139条1項で、6項の2号と3号が当てはまらない扱いです。
年末に効いてくるのは、2つめの「平均80時間」です。12月にどれだけ残業できるかは、12月だけを見ても分かりません。
架空の例で、12月の枠を逆算する
ある現場監督の、時間外と休日の労働の合計が次のとおりだったとします(協定の起算日は4月)。説明のためにつくった架空の数字です。
| 平均をとる期間 | 11月までの合計 | 12月に使える上限 |
|---|---|---|
| 2か月(11〜12月) | 95時間 | 65時間 |
| 3か月(10〜12月) | 160時間 | 80時間 |
| 4か月(9〜12月) | 220時間 | 100時間(ただし月100時間未満) |
| 5か月(8〜12月) | 280時間 | 120時間(同) |
| 6か月(7〜12月) | 340時間 | 140時間(同) |

この例は、どの月を終わりにしても、2〜6か月平均は80時間以内です。どの月も100時間未満です。いちばん高いのは、10〜11月の2か月平均で、ちょうど80時間です。
いちばんきびしいのは2か月平均で、12月は65時間までです。100時間未満の線より、ずっと手前で止まります。
11月に95時間使ったことが、12月の枠をけずっています。12月の枠は11月の使い方で決まります。だから、11月の計画は10月中に決めます。
ただし、65時間は平均の線だけから出した数字です。実際の12月の上限は、次のうちいちばん小さい数字です。
- 2〜6か月平均から出した枠(この例では65時間)
- 自社の36協定で決めた、1か月の時間
- 協定で決めた1年の時間から、すでに使った分を引いた残り
45時間をこえてよい月の数も見ます。7月から11月まで毎月、時間外労働だけで45時間をこえていたとします。それで5回です。
12月にこえれば6回目で、1年の上限に届きます。1月から3月は、どの月も45時間以内におさめるしかありません。年度末の追いこみに使う枠を、年末に先に使うことになります。
年720時間は、時間外労働だけで数えます。この例は休日労働を入れても、1〜3月を45時間ずつにして、1年で660時間です。
お金の面では、37条1項ただし書で、時間外労働が月60時間をこえた分は5割以上の割増賃金です。条文には、会社の大きさによる区別は書かれていません。
60時間に入らないのは、法定休日の労働だけです。法定外の休日(たとえば土曜)に働いた時間で、法定労働時間をこえる分は60時間に数えます。
上の例の12月65時間に、法定休日の労働がなかったとします。時給2,000円なら、60時間をこえた5時間分は、1時間3,000円以上です。
上限のしくみは建設業の2024年問題にまとめました。
年末年始の工期は、国の基準がすでに「長めに見る」と書いている
国の「工期に関する基準」(令和6年3月27日最終改定)は、年末年始のことを何度も書いています。年末の段取りに効くのは、次の2か所です。
第2章(3)イベント:年末年始や夏休みなど、休みで動かない日があるときについて、こう書いています。
通常に比して長い工期を設定する必要が生じる場合があることを考慮した工期を設定する
第3章(3)後片付け(i)完了検査:検査の日程について、こう書いています。
建物の規模や季節(年末年始等)により、第三者検査は、相当の期間を見込んでおかなければならない
12月に引き渡す工事は、工事そのものより先に、検査の日どりが詰まります。消防や確認検査機関などの検査日は、10月のうちにおさえておきます。おくれると、工事が終わっていても引き渡しが年をこすことがあります。
工期の長さには、法律の線もあります。建設業法19条の5は、ふつう必要な期間よりいちじるしく短い工期の契約を禁じています。注文する側にも、請け負う側にもです。くわしくは適正工期とはをご覧ください。
契約書に「休む日」と「変える手順」を書いておく
建設業法19条1項は、契約書に書くことをあげています。その4号が「工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容」です。工期や代金を変えるときの決め方(6号〜8号)も入ります。
- これから結ぶ契約:年末年始に工事をしない日を、工程表だけでなく契約書に書く
- 進んでいる工事:契約書の変更の条項を読みなおす。年内が苦しいなら、10月中に話し合いを申し入れる
元請は、協力会社に「年内に」をおしつけない
年末の追いこみは、元請だけの話ではありません。労働安全衛生法3条3項はこう決めています。
建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。
発注者から元請へ、元請から協力会社へ。「年内に終わらせて」を下へ流すたびに、この条文の場面になります。
自社の工程の詰まりを、協力会社の人数と残業でうめる形にしない。それが、年明けからも手を貸してもらえる条件になります。
10月中に決める5つ

1. 12月と1月に引き渡す工事を、検査から逆に引き直す
国の基準のとおり、年末年始は検査の日どりにゆとりを見ます。検査日、手直し、そうじ、引き渡しの順に、うしろから日付を入れます。
2. 社員ごとに、協定の起算日からの時間外・休日労働を並べる
上の例のように、12月と3月の残りの枠をひとりずつ出します。11月にだれが何時間使うかも、ここで決めます。枠が足りない人に、12月の山をせおわせません。
3. 足りない工事は、10月中に発注者と話し合いを始める
枠と工程をつき合わせて年内がむりなら、契約書の変更の決まりにそって話し合いを申し入れます。早く申し入れるほど、発注者の側も予定を組みなおす時間がとれます。
4. 年末の最終日と、年始の再開の朝にやることを決める
要領にある、年始に作業をはじめるときの安全確認を、現場ごとの段取りにします。だれが、何を、どの順で見てから作業を始めるか。年末のうちに紙1枚にしておきます。天候で止める基準は建設現場の作業中止基準にまとめています。
5. 社長の安全の方針を、12月の前に出す
要領が、職場のやることの最初にあげるのが、トップの決意表明です。「工期より安全を先にする。工期が苦しい現場は社長に上げる」と書いて、現場へ出しておきます。そうすると、現場監督が話し合いを言いだしやすくなります。
12月の工程と残業の枠を、いまの台帳と勤怠から組みなおしたい。そうお考えでしたら、無料経営相談からお声がけください。手元のデータで何が出せるかを、いっしょに見ます。
統合最適化でみると、どう効くのか
株式会社アプリバンクは、人材育成・DX推進・収益改善をひとつにして見ます(統合最適化メソッド)。年末の段取りなら、勤怠と工程を同じ表に並べる1つの作業が、3つに同時に効きます。
人材育成 — 職長と現場監督が「枠」で話せるようになる
「がんばります」ではなく「あと何時間使えるか」で工程を話せると、むりな追いこみを自分で止められます。職長の役目は職長教育とはでもふれました。
DX推進 — 勤怠と工程を同じ表で見る
2〜6か月平均の計算は、手でやると、毎月どこかでぬけが出ます。勤怠の記録からひとりずつの残りの枠を自動で出し、工程表の山と並べるだけで、10月の判断がはやくなります。
収益改善 — 割増と手戻りを減らす
月60時間をこえる部分の5割増しは、10月の段取りで避けられる出費です。検査が年をこして、引き渡しと入金がおくれるのも同じです。下期の着地の読み方は建設業の下期計画にまとめています。
よくある質問
Q1. 年末年始無災害運動は、参加しないといけない義務ですか。
法律の義務ではありません。ただ、要領にある働きすぎの防止や点検は、法律の決まりと重なります。
Q2. 令和8年度の期間はいつからですか。
2026年10月2日の時点では、まだ発表されていません(令和7年度は12月1日から1月15日まで)。
Q3. 12月だけなら、月100時間近く残業させても大丈夫ですか。
いいえ。月100時間未満を守っていても、それだけではたりません。直前の月と合わせた2〜6か月の平均が、どれか1つでも80時間をこえれば、36条6項3号の違反です。
どちらも休日労働をふくみます。月45時間をこえてよいのも、1年に6か月までです。年の累計と回数は、自社の36協定の起算日からの実績で数えてください。
2〜6か月の平均は、起算日に関係なく、その月の直前の月から数えます。
Q4. 発注者が年内の完成をゆずらないときは、どうすればよいですか。
建設業法19条の5と国の工期の基準を見せて話し合い、その日付と中身を記録に残してください。個別の契約は、弁護士などにご確認ください。
まとめ
- 令和7年の建設業の月別の数字では、12月がとびぬけて多いわけではありません。危なさは、焦り・疲れ・年始の再開といった工程の詰まり方で変わります
- 12月に使える残業は、2〜6か月の平均80時間以内で決まります。例では、11月に95時間使うと12月は65時間までです。11月の計画は10月中に決めます
- だから、12月の安全と利益は10月に決まります。上の5つを、10月のうちに決めておきましょう
年末の追いこみを、事故と赤字を出さない形に組みなおしたい。そうお考えでしたら、無料経営相談へどうぞ。人材育成・DX推進・収益改善をまとめて見ます。
この記事は一般的な内容をお伝えするものです。個別のことは、社会保険労務士や弁護士、労働基準監督署におたずねください。
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出典
- 年末年始無災害運動実施要領(令和7年度)(中央労働災害防止協会)
- 年末年始無災害運動(中央労働災害防止協会)
- 令和7年の労働災害発生状況を公表(厚生労働省)
- 令和7年における労働災害発生状況(確定値)(厚生労働省・PDF)
- 工期に関する基準(国土交通省)
- 工期に関する基準 本文(令和6年3月27日最終改定)(国土交通省・PDF)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 建設業法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
出典はいずれも 2026年10月2日時点で公式サイトを確認しています。条文はe-Gov法令API(同日取得)の現行条文です。
監修

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。
保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。
経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180 へ。
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