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日銀短観で建設の中小17・大企業56|先行き悪化前に価格転嫁

日銀短観 建設業の業況判断DI 中小17・大企業56と、先行き悪化前の価格転嫁を示すアイキャッチ

日銀短観の9月調査で、建設業の業況判断DIは大企業が56、中小企業が17でした。同じ建設業でも、39ポイントの差があります。

そして3か月後の見通し(先行き)は、大企業・中堅・中小のどの大きさの会社でも下がっています。この記事では、日本銀行の原典の数字を読み、仕事があるうちに価格転嫁をすすめる手順をまとめます。

目次

日銀短観の9月の調べで、建設業はどうだったか

日本銀行の短観(2026年9月調査)は、10月1日の8時50分に出ました。回答期間は8月26日から9月30日で、9,104社のうち99.4%が答えています。

業況判断DIは、「良い」と答えた会社の割合から、「悪い」と答えた割合を引いた数です。日銀の短観のよくある質問によると、会社の大きさで重みはつけず、1社1票で数えます。

建設業 9月の業況 12月の見通し
大企業 56(6月52) 48
中堅企業 28(6月31) 24
中小企業 17(6月17) 14
出典:日本銀行「短観(概要)―2026年9月―」1.業況判断。「良い」−「悪い」、%ポイント。
日銀短観2026年9月調査の建設業の業況判断DIを規模別に並べた棒グラフ。大企業56から48、中堅企業28から24、中小企業17から14へ、どの大きさの会社も先行きが下がる
図1 建設業の業況判断DI(9月の業況と12月の見通し。日本銀行の短観から作成)

大企業は6月の52から4ポイント上がりました。中堅は3ポイント下がり、中小は横ばいです。

短観の「中小企業」は、資本金が2千万円から1億円より少ないところまでの会社です。それより小さい会社は、調べる先に入っていません(日銀のよくある質問1-4)。

大企業と中小の差は39ポイント。1年前は31

9月の建設業は、大企業56と中小17で、差は39ポイントです。日銀の調査全容(エクセル)で1年前の9月を見ると、大企業49・中小18で、差は31でした。

中小の数字はほとんど動かず、大企業だけが上がっています。そのため、1年で差が8ポイント開きました。

ただし、この差がなぜ開いたのかは、短観には書いてありません。日銀は、よくある質問6-7で「集計結果の解釈は、統計のユーザーが行うもの」としています。ここから先は、当社の読みです。

差のわけを、値段の数から読む(当社の読み方)

短観には、仕入の値段と売る値段の動きを聞く項目もあります。どちらも「上がった」から「下がった」を引いた数です。建設業の9月の数字をならべます。

建設業(9月) 仕入価格DI 販売価格DI
大企業 65 56
中堅企業 68 42
中小企業 73 36
出典:日本銀行「短観(2026年9月調査全容)」判断項目l.販売価格・m.仕入価格の建設業。「上昇」−「下落」、%ポイント。
日銀短観の建設業の仕入価格DIと販売価格DIの差を規模別に比べた図。大企業は65と56で差9、中堅企業は68と42で差26、中小企業は73と36で差37。DIは上がったと答えた会社の割合から下がったの割合を引いた数で、値上げ幅や転嫁率は測らない
図2 仕入の値上がりと、売値の値上がりの差(建設業・2026年9月。日本銀行の短観から作成)

仕入価格DIは、小さい会社ほど高めです。販売価格DIは、小さい会社ほど低くなります。

2つの差は、大企業が9、中堅が26、中小が37です。業況の差と同じ向きにならんでいます。

当社は、ここに「上がった仕入を、売値にのせきれているか」の差が出ていると見ています。ただし、これは推定です。短観は、2つの数字のつながりまではしめしていません。

仕入価格DIも販売価格DIも、「上がった」と答えた会社の割合から「下がった」の割合を引いた数です。日銀のよくある質問2-1・2-4に、算出のしかたがあります。値上げの幅や、どれだけ売値にのせたか(転嫁率)を測る数字ではありません。差の大きさは、転嫁がどこまで進んだかの物差しにはなりません。

先行きは、どの大きさの会社でも下がっている

日銀のよくある質問2-3によると、先行きは「3か月後」の見通しです。建設業の12月の見通しは、大企業が8ポイント、中堅が4ポイント、中小が3ポイント、9月より下がっています。

人の足りなさも、数字に出ています。雇用人員DI(「過剰」−「不足」)は、建設業の9月で大企業−73、中堅−67、中小−60です。どの大きさの会社も「足りない」が大きく上まわります。

人が足りないままなら、職人さんの手間代は上がるほうへ動きやすいと、当社は見ています(推定)。

じっさい、国の公共工事設計労務単価も、令和8年3月からは、全国・全職種の単純平均で4.5%上がりました。

当社は、見通しが悪くなってからより、仕事が手元にあるうちのほうが、値上げの話を切り出しやすいとかんがえています。だから、いますすめます。

価格転嫁の土台になる、建設業法のルール

値上げは「お願い」だけの話ではありません。建設業法には、労務費と資材の値上がりを契約に入れる決まりがあります。多くは、令和6年の改正(令和6年法律第49号)で加わりました。

  • 労務費の基準:国の審議会(中央建設業審議会)が、令和7年12月2日につくり、守るよう勧告しました(34条2項)
  • 見積書:材料費や労務費の内訳を書くよう努めます。その額は、ふつう必要な額をいちじるしく下回ってはいけません(20条1項・2項)
  • 原価割れの契約:注文する側は、自分の取引上の立場を不当に使って、安すぎる額で契約してはいけません。安すぎるとは、その工事にふつう必要と認められる原価に満たない額です(19条の3第1項)。受ける側も、ふつう必要と認められる原価に満たない額で契約してはいけません。安い手持ち資材を使えるなど、国土交通省令で定める正当な理由がある場合はのぞきます(同第2項)。ものさしは自社の実際の原価ではなく、その工事にふつう必要と認められる原価です
  • 契約書:物価が動いたときに、代金をどう変えるかを書きます(19条1項8号)
  • おそれ情報:資材の値上がりなどのおそれがあれば、契約の前に注文する側へ知らせます(20条の2第2項)

契約の前におそれ情報を知らせた会社は、知らせたその事象が契約のあとに実際に起きたとき、変更の話しあいを申し出られます(20条の2第3項)。話しあいは、契約書の変更の定め(19条1項7号・8号)にしたがい、工期や代金について行います。申し出を受けた側は、申し出に根拠がないなど正当な理由がなければ、誠実に応じるよう努めます(同第4項)。

取適法は、建設工事の下請にはあてはまらない

2026年1月から、下請法は取適法(中小受託取引適正化法)になりました。ただ、取適法の2条4項は、ある場合をのぞいています。建設会社がうけた工事を、ほかの建設会社にまかせる場合です。

工事の元請と下請のあいだは、取適法ではなく、建設業法の決まりでかんがえます。申し入れのよりどころも、建設業法の条文を使います。

公取委の指針は、話のすすめ方の手本になる

2023年11月29日、内閣官房と公正取引委員会が、ひとつの指針を出しました。「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」です(2026年1月1日に改正)。

たのむ側とうける側がとるとよい行動を、12にまとめています。

受注者の行動には、たとえば次のものがあります。

  • うらづけには、最低賃金の上がり方など、だれでも見られる資料を使う(受注者の行動2)
  • 相手が次の年の予算を組む前や、国の労務単価がかわったあとに申し出る(受注者の行動3)
  • 相手が値段を出すのを待たずに、自分からほしい値段を出す(受注者の行動4)

交渉の記録をつくり、おたがいに保管することも求めています(共通の行動2)。

先行きが悪くなる前にすすめる、5つの手順

日銀短観の先行き悪化を受けて建設会社が価格転嫁をすすめる5つの手順の図。手持ち工事の引き直し、だれでも見られる資料のうらづけ、おそれ情報と変更方法、契約の変更の定めにそった変更の申し出、記録の保管
図3 仕事があるうちにすすめる価格転嫁の5つの手順

1. 手持ちの工事を、いまの単価で引き直す

受けている工事と、見積中の工事をならべます。労務費と主な資材を、いまの単価で計算しなおします。差が大きい工事から手をつけます。

2. うらづけは、だれでも見られる資料でそろえる

国の労務単価や最低賃金、資材の値段の統計などを使います。指針も、うらづけには、だれでも見られる資料を使うよう書いています。

自社のコストの中身を見せると、かえって原価を細かく見られるおそれがある、とも書いています。

3. これからの契約に、おそれ情報と変更方法を入れる

見積書を出すときに、おそれ情報を知らせます。国土交通省は、通知の書面やメールをおたがいに保存しておくのが望ましいとしています。契約書には、物価が動いたときの変更の方法を書きます。スライド条項とはで、条項の型と期限をくわしくまとめています。

4. 進んでいる工事は、変更の話しあいを申し出る

契約書の変更の条項を読みなおします。値上がりが起きていれば、その条項にそって申し出ます。契約の前におそれ情報を知らせていて、その事象が実際に起きたのなら、建設業法20条の2第3項の申し出にもあたります。指針は、申し出によい時期のひとつに、相手が次の年度の予算を組む前をあげています。

5. 交渉の記録を、おたがいに残す

いつ、だれと、なにを話し、どう決まったか。そのたびに書きとめ、相手にもたしかめてもらいます。担当がかわっても、次の交渉をそこからはじめられます。

手持ちの工事を、いまの単価で引き直したい。そうお考えでしたら、無料経営相談からお声がけください。台帳と見積から何が出せるかを、いっしょに見ます。

元請の側は、協力会社の値上げを止めない

元請も、協力会社から見れば発注者です。うける側から言われなくても、たのむ側から、決まった時期ごとに話しあいの場をつくる。指針は、そう求めています(発注者の行動2)。

値上げを求められたら、話しあいの席につきます。それを理由に取引をやめるなど、ふりなあつかいをしません(発注者の行動5)。

建設業法20条6項も、注文する側に禁じていることがあります。見積の材料費や労務費を、ふつう必要な額よりいちじるしく低くするよう求めることです。

自社の値上げと、協力会社の値上げは、同じ表で見ます。

統合最適化でみると、どう効くのか

株式会社アプリバンクは、人材育成・DX推進・収益改善をひとつにして見ます(統合最適化メソッド)。価格転嫁なら、工事ごとの原価を、いまの単価で並べる1つの作業が、3つにいっぺんに効きます。

人材育成 — 現場監督が、数字で交渉できるようになる

「きびしいので」ではなく、「労務単価がこれだけ上がった」で話せると、話が通りやすくなります。根拠の出し方を、社内の型にします。

DX推進 — 単価の表を、ひとつにまとめる

労務単価や資材の単価を、見積からも原価からも読める、ひとつの表にします。単価が変わったら、手持ち工事の差額がすぐ出る形にしておくと、申し出がはやくなります。

収益改善 — のせきれない分を、はやく見つける

上がった原価を代金にのせられないと、その分は、もうけから出ていきます。見積の作り方は建設業の見積書に、原価の見方は建設業の原価管理にまとめています。

よくある質問

Q1. 日銀短観の「中小企業」に、うちの会社は入りますか。

短観でいう中小は、資本金が2千万円から1億円より少ないところまでの会社です。それより小さい会社は、調べる先に入っていません。

Q2. 業況判断DIが17なら、中小の建設会社はもうかっていないのですか。

そうとは言えません。DIは「良い」と答えた割合から「悪い」の割合を引いた数で、利益の額ではありません。17は「良い」が「悪い」より17ポイント多いという意味です。

Q3. 下請の立場で、値上げを申し入れてよいのですか。

はい。建設業法は、物価が動いたときの代金の変え方を、契約書に書くよう決めています(19条1項8号)。

契約の前におそれ情報を知らせ、その事象が実際に起きたなら、変更の話しあいを申し出られます(20条の2第3項)。話しあいは、契約書の変更の定めにしたがって行います。うらづけは、だれでも見られる資料でそろえます。

Q4. 価格交渉の進め方を、もっとくわしく知りたいです。

建設業の価格転嫁に、交渉の5つのステップをまとめています。この記事は、短観の数字から「いつすすめるか」を見る役目です。

まとめ

  • 日銀短観9月調査で、建設業の業況は大企業56・中小17。差は39ポイントで、1年前の31から開きました
  • 差のわけは短観に書いてありません。仕入と売値の差が中小ほど大きいことから、当社は価格転嫁の差が出ていると見ています(推定)
  • 先行きはどの大きさの会社でも下がっています。見通しが悪くなる前に、建設業法の決まりにそって申し出ます

受けている工事の利益を、値上がりから守りたい。そうお考えでしたら、無料経営相談へどうぞ。人材育成・DX推進・収益改善をまとめて見ます。

この記事は一般的な内容をお伝えするものです。個別の契約や交渉は、弁護士などの専門家におたずねください。

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出典

出典はいずれも 2026年10月3日時点で公式サイトを確認しています。条文はe-Gov法令API(同日取得)の現行条文です。

監修

佐藤 望

監修:佐藤 望(株式会社アプリバンク 代表取締役)。建設業界30年。大手ゼネコンで国内の大規模プロジェクトを担当し、海外では子会社の立ち上げと経営再建に従事。

保有資格は認定ファシリティマネジャー/日商簿記1級/建設業経理士1級/第一種衛生管理者。日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員。

経済産業省「DX認定事業者」(DX-2026-06-0021-01)。建設業に特化し、人材育成・DX推進・収益改善を統合した支援(統合最適化)を提供。お問い合わせは無料経営相談または TEL 03-6826-0180 へ。


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